10 作戦

「それでこれからどうするの?」

鈴が冷静に今後の段取りについてレンヤに聞いた。

「とりあえず、あの施設から出ない事には始まらないが。問題はどうやって気付かれずに出るかだな」

だが、レンヤは案の定何も考えていないようだ。いつもレンヤはいきあたりばったりで作戦とか考える事をしないからね。いつもはソラか咲夜が考えてくれてあとは適当に臨機応変に対応するって感じだから。

「ってまだなんにも考えてなかったのかよ。てっきりすでに考えがあっての発言だと思ったぜ。そんなんでよくあんな事言えたな」

レンヤのその発言に彼方は怒っているそうな呆れたような態度だ。

「まあなんとかなんだろ。とりあえず、もう施設に着いちまうから明日また来る」

そう言うとレンヤはどこかに消えていってしまった。


「ねぇ、鈴。本当に良かったのかな。あの人に任せて」

「うーん。まあ大丈夫じゃないかな。なんか私すごくワクワクしているのよね。人生で一番楽しいかも」

鈴は今にもスキップしそうなほど楽しそうにしていた。鼻歌までも聞こえてきそうなほどだ。

「鈴がそこまで楽しそうなのって確かに初めて見たかもな。まあ、鈴がそんなに楽しそうにワクワクしているなら大丈夫かもな」

「そうだね」

そう言って遥と彼方は走って行った鈴の後ろ姿を眺めて笑いあった。


そして、次の日。約束通りレンヤは鈴の通学路に現れた。

「それで、誰に施設に閉じ込められているんだ?」

今度は端的に事情を聞き、作戦を立てるようだ。

「多分、叔父さんだと思うけど。でも、詳しくは分からないんだよね。その叔父さんにも会った事ないし。だけど、もう私の家族はその人しかいないし黒狐の事を知っているのもその人だけだと思うの」

「どうやって閉じ込めているんだ?」

「結界が張ってあるんだと思う」

「それはその叔父さんがやってるのか?だとしたら、その叔父さんも神憑きか何かなのか?」

「さぁ?でも、実際に私の事を監視しているのは施設の人達よ。多分、洗脳みたいな事してやらせているんだと思う」

「なるほど。まあ、それならなんとかなるだろうが。でも、すぐにバレそうだな。直接でないなら、しばらくはごまかせる可能性はあるか。だが、いずれはその叔父さんと直接対決が必要になってくるかもな。どうする?」

レンヤはアバウトに作戦を立て、そう聞いた。

「いずれ、叔父さんとの決着をつける必要があるのは分かってたわ。だから、その方法でいいわ」

「分かった。なら、そうしよう。決行は明日でいいか?明日はソラも連れてくる」

「えぇ。いいわ。それじゃあ、よろしくね」

そう言って、笑うと鈴は施設に入っていった。


「俺からもよろしく頼むよ。これが最初で最後のチャンスだろう」

彼方がレンヤの元にやってきてそう真剣な顔で言った。

「僕からもお願い。絶対に鈴を施設から出してあげて」

次は遥もレンヤのところに来てそう頭を下げた。

「あぁ。もちろんだ。俺に任せておけ」


「あっそういえば、鈴の叔父さんって誰なんだ?」

レンヤはずっと疑問だったことを聞いてみることにした。直接、鈴に聞くのはなんとなく出来なかったから遥と彼方に聞くことにしたのだ。

「あぁ。それはね。確か、桜田真三郎っていう人だったと思うよ」

「それって次期総理大臣だとか言われてるあの政治家か?」

レンヤが珍しく驚いたように目を見開いた。

「うーん。多分」

「もしそれが本当なら大変な事だぞ。今回の事件は予想以上にめんどうな事になるかもしれないな」



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