11 脱出

そして、決行日である次の日。土曜日で鈴は学校が休みでずっと施設にいる。

レンヤはソラと共にそらり児童養護施設の前に来ていた。

結界に小さな穴があることを鈴から聞いていたレンヤはそこからソラを通して先に中に入ってから穴を慎重に気づかれないように広げてもらい、レンヤも中に入った。

それから、鈴の叔父さん、桜田真三郎の洗脳を受け鈴の監視をしている人物の元に行った。

「あなた、誰ですか?」

「そんな事より、俺の目を見ろ」

そう言うとレンヤの黒い瞳が、ソラと同じ青くなりその青い瞳が星のように光り輝いた。そして、その女の人はその瞳に吸い込まれるように瞳を一心に見つめていた。

そうなったら、もうレンヤの虜。彼の命令には逆らえなくなる。逆らうという発想が出来なくなるのだ。

「今後は俺の命令に従ってもらう。いいな」

「はい」

「これからも鈴の行動を監視するフリをしていろ。そして、今まで通り鈴の叔父さんに報告をしろ。分かったか」

「はい。レンヤ様の仰る通りにいたします」

「よし。なら、もう行け」

「はい」


「あと、何人いる?」

「あと、ざっと5人ぐらいかな」

「マジか。意外と多いな。めんどくさすぎるな。どうにかならないのか?ソラ」

「この作戦考えたのレンヤでしょ。やるしかないと思うけど」

「はぁー仕方ねぇな。やるしかねぇかー」

今と同じ事を5回繰り返したあと、鈴の元に急いだ。


「鈴。迎えに来たぞ」

「大丈夫なの?」

「あぁ、多分な」

「多分なんだ。まあいっか」

「あぁ。じゃあ、行くか」

そう言うとレンヤは鈴に向かって手を差し出した。

「うん!」

今までにない子供らしい無邪気な笑顔でそう答えてレンヤの手を取った。


そして、施設を出てレンヤの事務所に向かった。

「ここがレンヤの事務所?」

鈴は少しがっかりしたような顔で事務所のビルを見上げた。

「一体何を想像してたんだ?探偵の事務所なんてこんなもんだろ?むしろ、上等な方だと思うが。それより、早く入るぞ」

「まあ、確かにこんなもんかもね。でも、そんな事知らないし。もう少し綺麗なところだと思ったの。悪い?」

007とかのイメージだったのだろうか。いや、鈴がそれを知っているわけないか。鈴が小学生だからではなく鈴に娯楽は一切与えられていなかっただろうから。

「まあ、なんでもいいが。いい加減早く入れ。外はまだ危険だろうが」

そう言うとレンヤは鈴の頭を掴んで無理やり中に入れた。

「もう、分かったから。自分で歩けるし」

「そうか」

「それで、私。これからどうするの?ここで暮らすの?」

事務所に入り、ソファに座った鈴が足がつかないから足をブラブラさせて、向かいのソファに座ったレンヤに向かって少し不安そうに聞いた。

「まあ、しばらくはそうなるだろうな。そのあとの事は俺にも分からん。組織の上の人間が決めることだろうかなら。それが決まってからだな」

「ふぅーん。そっか」

鈴はどこか残念そうに俯いて足をブラブラさせていた。

「まあでも、しばらくはここにいてレンヤや僕と一緒に仕事を手伝ってもらう事になると思うけど、大丈夫?」

鈴の向かいのソファのレンヤの隣に座っているソラが鈴の事を心配そうに覗き込んでそう聞いた。

「うん。それは大丈夫。でも、ソラちゃんがモフモフさせてくれたらもっと元気になるかも」

そう言って鈴は反応を探るようにチラッとソラのことを見た。

そして、手をモフモフする仕草で広げてソラのもとに飛んでいった。

「僕、まだいいだなんて言ってないんだけど」

飛んできた鈴はソラを膝の上に乗せてモフモフしまくっていた。ソラが逃げられないようにしっかりとホールドしつつモフモフしていた。なかなかの手練だ。

「モフモフ〜。あー可愛すぎる。はぁー幸せ」

終いにはソラのお腹に顔をうずめて息を吸って、恍惚な笑みを浮かべた。麻薬じゃないんだからね。でも、同じく中毒性がありそうだね。

「少しぐらい我慢してやれ。ソラ」

隣で繰り広げられる攻防戦を微笑ましく見守っているレンヤがそうソラに向かって楽しそうに笑いながら言った。完全に面白がってるようだ。

「鈴が楽しそうで良かったー」

「あぁ。そうだな。すげぇ、楽しそうだ」

それを見ていた遥と彼方も嬉しそうに笑ってそう言った。



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