第24話 世間て狭い ダイスケの話
私見であり、偏見であるが、マッチングアプリでバーベキューやってる写真を載せてる筋肉質の男の人はだいたい消防士だ。
私がアプリでノー!にする写真
タバコ吸ってる(いきってる?厨二?)
DJしてる(チャラそう)
昔の画質荒い画像(今どうなのか知りたい)
スノウ加工(メンヘラ)
イケメン過ぎる(本人じゃない可能性有り)
旅館浴衣のトリミング写真(隣、彼女よな?)
本人画像なし(既婚者の可能性有り)
とまぁ、最低限これだけのチェックをし、そこから条件面やルックスが好みだった人をいいね!していく。
私は割りと初対面の人と話すのが好きなほうで、この人面白そうだなと思えばいいねの対象だ。
それゆえ、普段の生活圏であまり出会わなそうな職業の人だとむくむくと興味が湧いてきてしまう。
そんな中で知り合ったのはダイスケだ。
ダイスケは撮影技術者で、芸能界の裏方の仕事をしており、衣裳レンタル会社で働く私とも間接的に接点のある仕事だ。
そんな感じだったので、初めて会った時も仕事の話で盛り上がり、度々食事に誘われていたし、LINEの頻度からもダイスケの好意を感じ取れた。
しかしながら、私のダイスケへの気持ちはあくまで友人としての好意に留まっていた。
ある日、私の家の最寄り駅で飲むことになったのだが、ダイスケは車で来た。これは私の家へ雪崩れ込むための確信犯とわかったが、私はそうはさせない。
私はダイスケとは仕事の話ができる友人でいたかった。
案の定、終電近くなっても帰る気配のないダイスケ。
私はお店の閉店時間まで粘ったあとで、次の作戦に出る。
「私カラオケ行きたーい!」
「え、俺歌苦手なんだけど」
「そしたら別に1人で行くしー」
しぶしぶ付いてくるダイスケ。ごめんね、朝まで歌い倒すから!
正直、密室になってしまうカラオケは回避措置としてはおすすめではないが、私のように歌いまくってムードを作らないようにすればなんとか出来ることもある。ポイントは途切れることなく曲を入れて会話をする隙を与えないこと。気付けば相手は先に疲れて寝てしまう。お酒が入ってるのなら尚更だ。
結局、早朝になり、「車で寝てから帰るわ…」とダイスケは帰っていった。
ぶっちゃけ言うと、ダイスケの攻撃のターンもあった。並んで座ってるダイスケの距離がだんだん近くなってくる。ダイスケの腕が、背もたれに回ってる…。
私はなるべく背筋をピンと伸ばして、歌うことに集中する。キスしやすい体勢になってはいけない。
痺れを切らしたのか、ダイスケが口を開く。耳元で、「こっち向いて。」と。
「やだ、今歌ってんの。」ダイスケの顔が近い。振り向いたら危ない。
「いいから。ちょっとだけ。」
「なんで?」
「キスしたい。」
ここで、私が編み出した魔法の言葉がある。
「どういうつもり?」声のトーンによっては拒絶も意味するし、ちょっと可愛く言えば相手の本音を引き出すことも出来る。流されて曖昧な関係に進まないように。ここで、ダイスケが、好きだからだよ、って言ってくれたら友人じゃない見方が出来たかもしれない。
「なんか、したいなって思って。」
百歩譲って照れ隠しだとしても、この回答では性欲かよって思ってしまう。残念。
「私は歌いたーい!」カラオケ続投。諦めて寝るモードに入るダイスケ。
※後日、斎藤さんには中学生じゃあるまいしキスくらいしといてもいいじゃん。何回もご飯行ってるんでしょ?と言われましたが…
そんなことがあったせいか、ダイスケからの連絡は次第に無くなっていった。彼は友人は求めてなかったんだろう、しょうがない。
そんなこんなで、月日が経ったある日。
たまたま、病欠の人の代打でアシスタントとして撮影現場に行ったら、ダイスケがいた。
一応、確認のためLINEもした。
私 “いる?”
ダイスケ “いるね!”
間違いなさそうだ。世間て狭い。現場なんてこの会社で8年働いていて3回くらいしか入ったことないのに。
だからと言って、ダイスケとどうにかなったわけでもない。今でもたまに連絡する友人ではあるけれど。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます