第20話 迷走期突入

 テロリストの世界滅亡計画を阻止するという映画を観たあとで、

「みんな死ねば良かったのに。」と言った私に、妹が言った。

「巻き添えすんな。勝手に一人で死ね。そしたら世界は平和。」


 ユウイチとの関係が終わり、私はテロリストに感情移入してしまうほどダークモードに入っていた。

 一人でブリジットジョーンズを観に行ったその足で中華街に行き、占いを2件ハシゴし、そこで白とグレーがラッキーカラーと言われて毎日グレーの服を着てしまうほどに迷走していた私を見かねて妹が誘ってくれた。


 「エスティローダーのファンデ買いたい。」と妹が言うので新宿の伊勢丹に行った。エスティローダーでタッチアップしてもらっている妹のおまけとして隣に座る。女として化粧品売り場というものは本来テンションが上がるはずなのだが、私の心情は妹の買い物欲求とは裏腹だ。

 お目当てのファンデが買えて帰ろうとした時、歓声が上がった。エスティローダーの売り場はメイン通路に面しているのだが、右手置奥から警備員らしき人に囲まれた人物が歩いてくる。目の前を通り過ぎようとした時、

「お姉、ゆーみんだよ!ゆーみん!!」妹が興奮気味に話しかけてきた。どうやらイベントブースでトークショーをやっていたらしい。

「へえ…ゆーみんね…」

「ゆーみん見てもテンションあがらないなんておかしいんじゃない?!」

そう言われても、今は落ち込みモードなのだから仕方がない。

「せっかく気分転換に誘ったのに」

さっき死ねって言ってきたのにツンデレか。


「それにしても、ゆーみんはお姉と違って浮気してもお金とらないから優しいよね。ここで婚活リップ買えば?」

「ルージュで伝言するには高いわ。やるならキャンメイクにする。」

「いいじゃん、慰謝料貰ったんでしょ」


そんな話をしながらの帰り道。妹なりに心配してくれたんだな、と、ウジウジしていた自分を反省する。

「いろいろ心配かけたお詫びに慰謝料で叙々苑おごるよ。」

「まじ?やったー」

「お姉の職場の斎藤さんも一緒でいい?」


離婚後にした初めての恋愛がこんな仕打ちで、男性不信に陥るほどのトラウマとなるのだけれど、それでも新しい恋をしようと思えるのは、愚痴を聞いてくれたり相談乗ってくれたり心配してくれる周りの人のおかげだ。現在進行形で迷惑かけてしまっているけど、いつか笑い話にするから楽しみにしていて。



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