第14話 厄年でもないのに

あれ?今年って厄年だっけ?

まだ29歳だから前厄にしても早いよね?


背中の方で花火が打ち上がる大きな音がする。

その閃光が私の影を浮かび上がらせる。

真夏にスーツを着てキャリーバックを転がしながら、仮住まいにしているシェアハウスに帰る途中、自分の影を見てたらなんだか泣けてきた。


離婚すると決めてから、なんで私がこんな目にあわなきゃいけないのって彼を責め続ける言葉ばかり浮かぶ。

実際、彼にも言われてしまった。「このまま結婚生活を続けて一生みつきに責め続けられるより慰謝料払って別れたほうがマシ。」と。酷いと思ったけれど、彼も私と10年過ごして来ただけあって、私の性格を良くわかっている。


結局、彼は自主退職扱いの実質クビになった。彼の職場の社宅に住んでいたので私は住む場所を失うことになった。彼は早々に実家に戻ったが、私のほうは離婚するとなっては彼の実家に身を寄せることも出来なかったため、職場の近くでシェアハウスの一室を借りた。

彼の地元とあって、離婚することになれば住み続ける理由もなく、東京に戻ることにした。そのために夏休みを利用して転職活動をすることにしたのだ。


幸いにも夏休みの1週間のうちに内定を貰うことが出来た。

体重は2キロ減って、いいダイエットにもなった。


離婚することになって引っ越しして、転職することになって引っ越しして、目まぐるしい4か月だった。

桜木花道がバスケを初めてIHに行くのと同じくらいの期間の出来事だ。



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