第11話 カード明細
まー君はいろんな本を読んでいた。
仕事柄、経済学とか金融とかそのへんの難しいやつを。
私が苦手なジャンルだったが、まー君がいつもかいつまんでわかりやすく教えてくれたので、なんだか私まで賢くなれたような気分だった。
まー君は自分と同じように私にもたくさん勉強して欲しそうだった。
何かの本でそういう知識を仕入れたのだろう。
まー君の金銭感覚は私には理解しがたい部分があった。
まー君は20代のうちは自分に投資することに専念して貯金は30代からと決めていて、積み立てや投資信託もしていたが、ある程度の額になると解約して資格取得資金や被服費に使っていた。
資格取得資金に関しては納得出来た。理解しがたい部分というのは被服費の方だ。
プレジデントの特集か何かに影響されたのか、一流になるには一流の物を身に着けるという思想に取りつかれ始めたのだ。
私は身の丈にあった生活をして欲しいと何度も言ったが、変な柄の高いセーターを買ってきてはご満悦そうにしているまー君を見て、「まぁ結局まー君のお金だしまー君が何に使おうと別にいいか…」と深刻に捉えてなかった。
まー君の金銭感覚を正さなかったことを後悔したのは、まー君が中国に行って数か月経ったあと、郵便受けに届いたカード利用明細を見た時だった。
明らかに収入よりも多い月額利用金額だった上、リボ払いの文字に目がくらんだ。
旅行会社に支払った記録や、中国の都市部のホテルでの支払い記録もあった。
すぐさま私はネットでホテル名を検索した。1泊1万程の割とリーズナブルな宿泊料のホテルだったが、支払い金額は2万程。2名分だ。しかも、日付は私の誕生日で、彼がゴルフと言って電話になかなか出てくれなかった日だ。
私は彼を問い詰めた。彼は「ホテルの支払いは出張で建て替えた。旅行はみつきに内緒でベトナムに一人旅に行った。前に休暇中のベトナム旅行の相談した時、みつきが"初めて行く国は二人で一緒に行きたいから、私と一緒じゃないなら行ってほしくない"って言ってたから、内緒で行って怒られると思った。」と答えた。
私はまたしても、もやもやとした気持ちのまま信じることにした。
でも今思えば、10年一緒に過ごして彼の性格や人柄をわかりきったと思っている自分自身を、信じたのかもしれない。
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