第9話 まー君のいない生活

私は割と環境適応能力は高いほうだと思っている。

海外旅行に行っても、まー君はホテルのトイレにしか入れなかったり、現地の食べ物が全然食べられなかったり、乗り物に酔いやすい。

対して私は、割とどこでも寝られるし食べものの好き嫌いは多くないし、乗り物だって通勤電車がFUJIYAMAだったらいいのに、と思うくらい三半規管が強い。


でも、まー君がいないまー君の地元は、毎日やることがなくてつまらなかった。運転は苦手だし、運転出来たところで一人で遠出しても寂しい。

それに冬だったから空はいつも暗くて出かける気にもならず、起きてから同じ姿勢のまま気づけば夜だったこともある。

アパレルの販売の仕事は続けていたので、人と関わっていてのは救いだった。


そんな中で、まー君は私よりももっと慣れない環境で頑張っているのだから、と応答のないスカイプを鳴らし続け、少しでもまー君が元気になればいいと励ますつもりで毎日変顔の動画を送りつけるのが日課だった。


まー君は私が何か言わなくても十分頑張れる人だったから、無理しないでね、肩の力を抜いてね、そんな気持ちを込めていたのだけど、まー君からはこれといったリアクションなく華麗にスルーされていた。





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