第8話 夫の様子がおかしい
まー君は真面目な人だった。
お酒もタバコもやらないし、人付き合いもしないタイプで、みつきがいればそれでいいと恥ずかしげもなく言う。
そんなまー君が“中国語の先生”の話をよくするようになったのは中国に行ってから2ヶ月もしなかったように思う。
“中国語の先生”はまー君の話だと面倒見のよいおばちゃんのようだった。
中国に来たばかりのまー君にいろいろと世話を焼いてくれている存在としてよく私たちの話題にのぼった。
まー君は真面目でありながらもちょっと不器用なところもあり、これまでも環境が変わってもその度に可愛がってくれる目上の人が現れていたので、私も違和感を持つことはなかった。
最初の違和感は、いつものようにスカイプで話してるときにまー君が食べていたオレンジだった。
オレンジのカットの仕方が違うのだ。
オレンジは頭とお尻をカットしたうえでくし切りにされていた。
私の切り方じゃない。
まー君が台所に立つことはほとんどなくオレンジ切ったところを見たことがない。
だからまー君のやり方なのかもしれないが、私は彼のことを彼以上に知ってるからこそ、そんなオレンジの切り方をする性格に思えないのだ。
まー君ならばオレンジといえど自分で食べるなら手でむくタイプだ。
さらにおかしなことは続いた。
スカイプが夜20時以降繋がらなくなった。
中国との時差は1時間ほどなので、寝るにはまだ早い時間だ。
それなのに何度通話しようと出てくれず、しまいには20時前になると、これからランニング行ってくるとか、先輩とご飯行ってくるとか、スカイプ出来ない言い訳をしてくるようになった。
あまりにも変なので、私はまー君との共通の友人である大学時代に同級生だった男の子に相談した。
「いやいや、あいつは浮気とかそういうことするタイプの男じゃないって!仮にやってたとして、下手すぎるでしょ!」と大笑いして言ってくれたので、私もそっか、だよねー!こんなわかりやすくやるわけないもんね!なんて笑って不安を吹き飛ばした。
で、結局まー君は下手くそな男だったわけなんだけど。
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