第96話 行方不明
三時間目が終わった時、俺は教室に戻った。
苗咲が俺を見つけると直ぐに椅子を鳴らして立ち上がって駆け寄って言った。
「どうだったの? 大神」
悲壮感漂う表情の苗咲、感情が高ぶって今にも泣きそうだ。
「季三月ん家は売りに出されてたよ……家はもぬけの殻だった」
「嘘っ…………連絡も取れないし……何で? 何でよっ!」
苗咲の瞳が涙でいっぱいになる。
中倉も近づいて来て聞いて来た。
「大神、季三月は?」
「自宅に行ってみたが、家は売りに出されていて連絡はつかない、多分季三月は俺達からの通信を遮断しているんだろう」
「何でだよ……」
「何か事情があると俺は思いたい、季三月が俺達に何も告げずに居なくなるとは思えない。俺は、季三月と皆の間に友情があったと信じたいんだ、それでも言えない訳がある……。季三月も俺達と話したかったと悲しんでいる筈だ」
「だよね…………私も季三月さんを信じたい」
「だな?」
中倉も頷く。
俺は二人に言った。
「取り敢えず情報収集に努めよう」
◇ ◆ ◇
「大神、気持ちは分からんでもないが教室を飛び出したりして先生はびっくりしたぞ」
昼休み、職員室で俺は担任の先生に季三月について尋ねていた。話によると今朝、季三月のお母さんからいきなり電話があり、先生は転校することを一方的に告げられ、何処に転校するかも告げずに電話は切られたという。
高校は季三月について情報は一切把握出来ていない。これで確信した、季三月のお母さんは姿を消す事を主眼としているに違いない。
先生は椅子に座ってボールペンをトントンと机に叩き、俺に言った。
「大神、お前は入院していたから出席日数がギリギリなんだぞ。あと少しで留年だって事を忘れるなよ」
「はい、気を付けます……」
そうだった、季三月の居所を探すのも授業をサボってって訳にはいきそうに無い。
職員室を出た俺は何となく校舎の屋上に向かった、階段を昇り屋上へ出る扉を開けると冷たい空気が流れ込んで来た。
「寒っ」
もう冬も間近、屋上には誰もいない。
季三月がフェンスを越えて座っていた場所の近くに俺は近づき、フェンスを掴む。
脳裏に季三月の泣き顔が再生され、俺は胸が痛くなる。
情報収集って言ったって無理だよな……プロにでも頼まない限り。
俺はスマホで私立探偵を検索し、行方不明人の捜索費用を調べた。
その金額に俺は絶句した、安くても数十万円、高い所では百万越えだからだ。
「無理だろ、こんなの……」
俺は途方に暮れて曇り空を見上げた。
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