不意打ち
第74話 黒歴史との再会
昨日のバイト先の山根、スゲーよそよそしかったな。
何なんだよ。でも、あいつはたまにそう言うところあるんだよな、急に苛ついたようになってキャラに似合わずに無口になるから周りはどうしたんだろうって思ってるのに。
でもきっと今度会ったらケロっとして何時もの楽しいテンションで来るのは分かっている。
女心というか山根心は分からない。
今日も暇だ、朝から時間を持て余してしまう。反省文は停学初日に全部書いたし、でもあれって最早ファンタジーだよな。反省してないし、未来の日付で書いた空想だ。
まるで小説だよ……。暇だから、また書いてみるかな? 俺の爺ちゃんがしがない小説家だったと中二の春に聞いた時のように。
あの時は結局最後まで小説を書ききれなかった、滅茶苦茶な文章で辻褄も合っていない勢いだけで書いた駄作。
書いてる途中で自分でも意味が分からなくなって修正できずに投げたんだっけ?
でも、俺の人生であれだけ集中して何かに打ち込んだ事は無かったな。
俺は久々に机に向かい、ノートPCを開くと画面がパッと点いてOSが即座に起動した。俺のアカウントはまだ生きてるのか? 小説執筆サイトを検索してログイン画面を開いた。メルアドとパスワード……メルアドは変わってないからコレか、パスワードは多分……。
キーボードを叩くと自分のワークスペースが開いた。
懐かしいな、この画面。数年前とはだいぶ変わっているが。
俺は過去の自分が書いた小説を開けて読んでみた。恥ずかしいぞコレ、黒歴史じゃねえか! 見たくねえ、消そ消そ!
俺は削除ボタンを押した、【本当に削除しますか?】と警告が現れる。
「消すに決まってんだろ!」
声に出てしまうほど酷い文、絶対に誰にも見せられない。
まっさらになったワークスペースに新規で小説を書き始める。
ええと、カテゴリーか? 季三月は恋愛を描いてるからな、俺は……。
恋愛にすっか? 取り敢えず書いてみよ。
学園ドラマを空想して勢いでキーボードを叩く。
PCに向かい自分の高校生活からヒントを得て気がつけば二時間ほどが経過していた。文字数は二千字を超えている、ゾーンに入っていたみたいだ。
俺はそれを頭から読み始めた、男子がコミュ症女子と付き合うストーリー。コレって俺が季三月としたい妄想じゃねえか! 出来たら季三月に見せようと思っていたが絶対に見せられない、結構エロいし、読めば主人公とヒロインは俺と季三月だとバレる!
PCをスリープにした俺はもう昼だったこともあり、居間に下りて食い物を物色した。
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