第69話 早坂
図書室を出て階段を降り教室に戻る途中、生活指導室から出て来た早坂に俺と季三月は偶然出会った。
この部屋から出て来たという事は、ストーカーの件で何かを聞かれた可能性が高い。学校は早坂に対してどのような措置を取るのか興味深い、いきなり停学って事は無いだろうけど、今後も同様にしつこく付き纏うようならそれなりの処分が下るだろう。
早坂は俺達を睨み付けると、季三月に歩み寄り「君の事を思って見守っているのに! 何でなんだ!」と声を荒げた。
季三月は顔を引きつらせ後ずさりし、俺は彼女の前に出て早坂を近づけさせないように邪魔をする。
早坂は俺に言った。
「お前こそストーカーじゃないか!」
「季三月が怖がってるのも分からねー奴が何言ってやがる」
早坂は口元を震わせて叫んだ。
「どけよ!」
俺はため息を付いて言った。
「お前、ホントバカだな」
早坂は俺の胸ぐらを掴み引き寄せる。
「あ? やんのか?」
苛ついた俺はそう言って早坂を挑発して敢えて笑顔を見せる。
「止めてよ、二人とも!」
季三月が二人の間に割って入り引き離そうと力を籠めると、早坂が彼女の手首を掴んで乱暴に捻り上げた。
「痛いっ! 止めて!」
顔を歪めて泣きそうな季三月の姿。俺は怒りのスイッチが入り季三月の腕を掴む早坂の顔面をぶん殴った。
早坂は廊下の床に吹っ飛び、周りで見ていた女生徒達の悲鳴が辺りに響く。
生活指導室のドアがガラっと開き、「何事だ!」と響く大声。
強面の科学の中年男性教師がひっくり返っている早坂を確認すると俺を睨み付けた。
俺は事情を説明しようと口を開いた。
「先生、早坂が――」
「大神! 何をした?」
目を吊り上げてデカい声で俺に近づく教師。大人のくせに沸点低いんだよ、教師もバカか?
「だから、コイツが掴みかかって来て」
早坂が寝ころんだまま言った。
「いきなり大神君が殴りかかって来たんです、先生!」
「はぁ? いきなりって、お前が先に手ぇ出したんだろうが!」
俺も声が大きくなる。
季三月はフリーズしかけ、口をパクパクさせて発言しようと頑張っている。
教師は近くに居た女生徒に事情を聞いた。
「大神君が早坂君を殴ってました」
「いや、だから……」俺に聞けって!
◇ ◆ ◇
少し落ち着いた季三月が教師に一部始終を説明した、だけど俺が手を出したのは間違いない。
目撃者も多数、俺に反論の余地は無く校内暴力と認定され、処分が下る。
一週間の停学処分、早坂にお咎めは無し、何とも理不尽な結果だ。
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