護衛
第67話 安否
「山根、お疲れ!」
俺はバイト先の店を出て山根に別れを告げる。
「もう真っ暗だ、秋だねぇ」
山根は笑って自転車に跨った。流石に短パンはもう辞めたらしい、最近、夜は気温が低い。
「暗いから送ってくか?」
「大丈夫だよ、自転車だし。それより季三ちゃんの送り迎え頼んだよ?」
「分かってる。金曜の帰りだけは無理だけど、それ以外は欠かさずやってるよ」
「んじゃ、アデュー」
山根は立ち漕ぎで自転車を加速させ手を振った。
俺も帰るか、自転車に跨った時、上着の胸のポケットに入れていたスマホのLEDが点滅しているのが一瞬見えた。
スマホを取り出し、俺は画面を確認した。季三月からの着信履歴? 何かあったのか? 季三月は絶対に電話で話さない人間、四時間前の履歴……下校時? 心拍数が一気に上がった俺は、彼女に速攻電話を掛けた。
出ない、どうして? 嫌な予感が頭をよぎる、頼む出てくれ!
クソッ! 落ち着かない、不安で不安でしょうがない。
俺はSNSにメッセージを書き込んで季三月に送信した。
『電話くれたみたいだけど何かあったのか? 連絡欲しい』と。
暫くスマホを眺めていたがメッセージは既読にならない、俺は大きく深呼吸をして自分に言い聞かせる。
「落ち着け」
気持ちを声に出すと、不思議と冷静な気分になれた。自転車のサドルに腰かけ又一呼吸置く、電話を掛ける余裕があったんだ、大丈夫だよ。
ペダルに足を乗せ、力を籠め、俺は自宅に帰った。
◆ ◆ ◇
晩飯を食って、風呂に入ってだいぶ気分が落ち着いた。俺は歯を磨きながらスマホを確認したが、彼女からのメッセージは無い。
もう夜も遅い、電話は辞めておこう。自室でベッドに寝転んだ俺は意味もなくスマホを眺めて時間を潰す、そろそろ日付も変わるけど返信は無い。アイツもう寝たかな?
俺はリモコンで照明を消して布団に潜り込んだ。その時、メッセージ受信の音がスマホから聞こえ、俺は焦って画面を確認した。
季三月からだ!
『ごめん、疲れて一回寝ちゃった』
『今日の帰り神木町駅でアイツに話し掛けられて怖くて泣いちゃったよ』
『でも、もう大丈夫』
『お母さんが学校に相談してくれたし』
立て続けにメッセージが続き、俺は安堵と同時に怒りが込み上げて来た。
俺はメッセージを送る。
『それってもう警察案件じゃないのか?』
『お母さんも学校に電話した時言ってたよ、でも通報は止められたみたい』
止められた? 警察沙汰にしたくないだけだろ! そうやって今まで何人ストーカー犯罪で殺されたか分かってるのか?
学校はあてにならない、穏便に済ませようとする筈だ。
奴らは学校の評判しか考えていない、こうなれば俺が実力行使するしか無いかもな。
その後も暫く季三月とのメッセージ交換は続き、俺は事の顛末を把握した。
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