第61話 結果発表
きなこの甲高い声が響いた。
「審査員特別賞は、エミールクラナカさん」
横で見ていた山根が叫び声を上げて喜んだ、まさか中倉が受賞するとは……きなこに気に入られたな?
中倉はステージに上がり、温泉宿泊券と米10キロをきなこから贈られた。
米? どうすんだよ、まさか持って帰らせる訳じゃ無いだろうな。
「続いて三位の発表です!」
司会がきなこに封筒を手渡した。
「三位は、ストパンのさいこさん!」
俯いていた季三月はビクッとしてステージを見上げ、階段を駆け上がってステージに上がった。
「おめでとう、可愛かったもんね」
きなこが季三月に賞金3万円と温泉宿泊券を渡した。
山根が俺のシャツを掴んでガクガクと揺さぶり、歓声を上げて飛び跳ねた。
「やったよ大神! 季三ちゃん凄いよ!」
まさか入賞するとはな、可愛いからかなり上位に食い込むとは思っていたけど。
その後、上位二名はコンテストの常連が受賞して、大会は幕を閉じた。
◇ ◇ ◇
「惜しかったな、季三月! よくやったじゃないか!」
俺は参加者控室がら着替えて出て来た季三月に言った。
山根は少し不満げに言った。
「上の二人はセミプロらしいよ、だからホントは季三ちゃんが大賞だよ」
上位の二人は自分のファンに告知していたらしく、多くの組織票が入っていたみたいで初参戦の季三月は大差をつけられていた。
「温泉宿泊券か、誰と行こうかな?」
季三月は俺の顔を覗き込んで言った。
俺は焦って言った。
「えっ? それはダメだろ? 男女がそんな……」
「大神なんかと行くわけ無いでしょ? 目付きがいつもいやらしんだから」
山根は季三月に急に飛びついて叫んだ。
「じゃ、私と行こ!」
中倉は俺の肩を組みながら言った。
「俺と温泉に行くか? 背中流してやるから」
俺は苦笑いして言った。
「いや、遠慮しとく……」
中倉はハッとした表情で言った。
「そうだ、皆で行かね? 丁度四人分宿泊券あるんだから!」
「え? えーっ⁉」
季三月は柄にもなく大きな声を出して驚いている。
山根は季三月に皆に聞こえるように耳打ちした。
「これは貞操の危機ですな」
俺は焦って言った。
「ばっ、
ヤバ、声が裏返っちまった。山根は表現がストレート過ぎんだよ、まったく。
「大神の焦りっぷり見た? 季三ちゃん襲われちゃうかも?」
山根は俺をからかってニヤニヤしている。
汚物を眺めるように季三月は俺を見て不貞腐れるように言った。
「私、絶対に大神と行かないから!」
何だこれ? いつもの山根からのフリで俺が無罪なのに季三月に軽蔑される展開。
中倉と山根は笑い、季三月は怒る。そう、これは俺達のお約束だ。
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