第33話 絶叫系は苦手
全員髪の毛までびしょ濡れになり、いきなりはしゃぎ過ぎた俺たちはその場で爆笑した。
「もう、びしゃびしゃだよ」
季三月は灰色の髪の毛からポタポタと水を垂らしながら笑って言った。何時もは見る事の出来ない濡れた髪がなんか可愛くて俺は彼女の姿にに見蕩れて思考が停止する。
「大神、季三ちゃん見すぎ!」
山根は大きな声で俺をビシッと指差してからかった。
「そんなにジロジロ見ないでよね!」
季三月はしゃがんで肩まで水に浸かり、眉をひそめて言った。
「ねえ、早くあれ行こうよ!」
山根がウォータースライダーを指差して何度もジャンプして俺たちを誘う。
「私はいいかな、皆で行って来なよ」
季三月の乗り気で無いその言葉に山根は言った。
「季三ちゃん、ああいうの嫌い?」
「何か怖い……」
えっ? あいつ絶叫系苦手なんだ……。とは言うものの、ここに季三月を一人にしたら絶対ナンパされまくる。ナンパされた所でついて行く事は無いだろうけど。彼女に嫌な思いはさせたく無い。だから俺は言った。
「季三月、取り敢えず近くまで行ってみないか? 乗らなくてもいいから。あっち側にも面白い物があるかも知れないし」
中倉は頷き、季三月に言った。
「そうだな。あそこまで結構距離あるし、ここに戻って来ても何もない。季三月、移動するぞ」
プールの波打ち際をパシャパシャと歩いてウォータースライダーへ向かう途中、中倉は俺に耳打ちした。
「季三月って思ったよりあるよな?」
「何がだよ」
「おっぱいに決まってんだろ!」
にやけて嬉しそうな中倉の顔ときたら……少しは自嘲しろっての!
「お前、視姦するなよ」
「大神に俺を咎める資格があるのか? まだ彼氏でも無いんだろ?」
「う、うるせーな! あんまエロい目で見てると直ぐにバレるぞ」
◇ ◇ ◇
ウォータースライダーの下にたどり着いた俺達は階段に向かい、最後に俺は季三月に聞いた。
「本当に行かないのか?」
「うん、下で待ってるよ」
その時、中倉が看板を指差して声を上げた。
「二人乗り出来るらしいぞ」
その看板にはカップルがいちゃ付きながら大きな浮き輪に乗っている絵がかいてあった。これだ! 俺は季三月に「二人で乗れば怖くないだろ? チャレンジしようぜ」と言ってウォータースライダーにダメ元で誘ってみる。
「二人か……」
若干、興味を持った様子の季三月は片手を頬に当て、黙って思案中。
「やってみるかな?」
季三月はボソッと呟いた。
うおっしゃーっ! 俺は心の中でガッツポーズをしながら平静を装って季三月に手を差し伸べる。
季三月は手を伸ばし、山根の手を掴んだ。
「山根さん、一緒に乗ってくれる?」
だよな、それは分かってた。
「大神、ごめん。季三ちゃん貰うから」
山根が俺の心を見透かしたかの様に、いたずらっぽくウインクをして茶化して来た。
それを見ていた中倉が、苦笑いしながら肘で俺をつついて慰める。
「大神、俺と一緒に乗るか?」
「断る!」
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