第32話 水着姿の彼女
駅からプールまで5分、無料送迎バスを降りた俺たちは派手な波が立体的に形どられたゲートを潜った。
俺は女子二人に入場チケットを手渡し駅の改札のような機械に通して中に入り、チケットを買っている中倉を待った。
中倉も中に入って来たのでいよいよ水着に着替える時を迎える、俺たちは男女に別れロッカールームに入り着替え始めた。
「あの二人、どんな水着着るんだろうな? 楽しみだな、大神!」
「そ、そうか? 俺は別に暑いからプールに誘っただけだよ」
中倉はニヤニヤしながら俺の背中を連打して言った。
「お前、トボケてんじゃねーよ! 季三月の水着姿見て興奮して、ココ膨らませないようにな」
「バ、バカだろお前! 中倉こそ気を付けろよ」
水着に着替えた俺たちはプールサイドに出た。塩素の独特の匂いが僅かに漂う、まだ開園して間もないのか客の姿はまばらだ。
「すっげー!」
中倉が巨大プールの迫力に大きな声を上げて飛び上がり、振り返って俺をキラキラとした目で眺めた。
全く、女子かよ、テンションたけえな。
「二人はまだかよ」
早くプールに入りたい中倉は焦らされて落ち着きが無い。
「女は準備に時間がかかんだよ」
俺は中倉を落ち着かせようと近くのベンチに座らせ、二人を待った。
「ゴメン、お待たせ」
山根の声が聞こえ、俺たちはその声の方角にベンチをガタつかせて立ち上がった。
「ヤバっ、天使だ……」
俺は誰にも聞こえないくらいの小さな声を発してしまった。
アスリートのような引き締まった体の山根は黄色いスポーツビキニを綺麗に着こなしている、腹筋がうっすらと割れ無駄肉が一つもない、足も長くてモデルみたいだ。
その背後でオドオドとしている不信人物のような季三月、白地に赤いチェック柄のフリルの可愛いビキニを着ている。うわっ! これはヤバい! 胸が思ったより大きい、その胸の割にひ弱そうな筋肉の無い白過ぎる肌、引き篭もり過ぎだから白いのか? 下はスカートのような物が巻かれていて見たい所が殆ど見えない! いや、見えないからいいのかも知れない。
「季三ちゃん、なに隠れてるの?」
腕を不自然に動かし、微妙に胸を隠す季三月の恥じらう姿。俺は目のやり場に困り、彼女の瞳だけを見つめて平常心を保つ。
「大きいよね、季三ちゃん。Eカップだって! 大神どうする?」
「うわあああっ! なに言ってるの山根さん!」
胸のサイズをバラされた季三月の表情はみるみる赤くなって、両腕で胸を隠した。
何とか彼女の胸を見ないようにしていた俺だが、山根の一言で季三月の胸をガン見してしまった。
「やっぱり牛乳いっぱい飲んでたりするの?」
山根は興味深く季三月を眺めて言った。
「もういいでしょ? その話は!」
季三月は怒ったネコのような動きで山根を威嚇した。
「は、早くプールに入ろうよ」
逃げ出すように駆け足で浅瀬に入った季三月は「えーいっ!」と言って俺たちに水を掛け始めた。
「負けるか!」
山根も駆け出して季三月に水を激しくぶっ掛ける。
「キャーッ」と子供のように盛り上がる二人に触発され、俺たちも駆け出した。
これだよ、俺がイメージしてたのは。可愛い女の子とキャッキャッとプールで水を掛け合う一大イベント。
だが、その水の掛け合いはキャッキャッでは無く本気の水の掛け合いだった…… 目を開けていられないほどに。
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