第30話 人員確保

「頼む山根!」


「プール? 別にいいけど……逆に大神は季三月ちゃんと二人きりじゃ無くていいの?」


 バイトが終わり俺は山根をプールに誘っていた。あの時、病室でプールに行くのを嫌がる季三月は条件を一つ提示していた、それが二人きりでは行かないという条件だった。コミュ症の季三月が言うとは思えない条件に俺は少し戸惑ったが、彼女は俺と二人きりになる事への拒絶感を示していた。何でだ? 俺が季三月を襲うとでも思っているのだろうか……。俺は別に皆でワイワイと楽しむ事には抵抗は無いから、それはそれで期待値が膨らむ、もしかして季三月は俺と二人きりだとドキドキし過ぎてしまうからなのだろうか? 知りたいぞ! 彼女の気持ちを。


 山根の約束を取り付けた俺は、中倉にSNSでメッセージを送った。中倉は俺の構想では来る事が確定していた、アイツが女子が二人も来るプールに誘ってこない筈が無い。


 スマホが速攻振動して中倉から返信が来た、結果は見るまでも無かったが、予想以上にがっついている。


 条件は揃った。俺は季三月にスマホでメッセージを送り、ポケットに仕舞った。どうせ季三月からの返信は明日だ、レスポンスが悪すぎるからな。そう思ったのも束の間、スマホが振動した。


 俺は焦ってSNSを確認する、来てる! 季三月から来てる! 速攻俺は彼女の名前を指で押してメッセージを読みに行く。


『今水着売り場にいるけどウエットスーツ売って無い』


 え? 季三月、行く気あんじゃねえか! もう水着選んでるとか、しかも何でウエットスーツ? 肌を見せないつもりなのか? ビキニだろビキニ! マジでウエットスーツ買うつもりかよ、頼む! これは季三月ジョークだと言ってくれ。


 俺は返信する。


『スク水でもいいんだぞ』


 メッセージは既読に変わり、『キモ』『ヘンタイ』『最低』と立て続けに彼女からお褒めのメッセージが返信されて来た。


 ある意味気になる、季三月がどんな水着を選ぶのかを。 


 やべぇ、楽しみ過ぎるぞ、今週末が待ちきれねえ。こんなにウキウキするのは久しぶりだ。

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