第29話 虎の子の資金
彩子自室
【ポイントを換金しますか?】
ノートパソコンの液晶画面に表示されたメッセージに私は【はい】のボタンをクリックした。
小説投稿サイトで自分の執筆したラブコメの閲覧数に応じたポイントが貰える。それを電子マネーに換金し、スマホで使えるようにする。
「はぁーっ、全部ポイント換金しちゃったよ……」
これだけ貯めるのに、どれだけ執筆に時間使ったと思ってるのよ! 時給換算はしたらダメだ、きっと百円以下だから。
割に合わない労働の対価とはいえ、虎の子の貴重な収入源。
何、気合入れてるんだろう。私……。
でもスク水なんかじゃ恥ずかしくてプールに行けないし……って、スク水じゃなくても十分恥ずかしいよ。
形はどうしよう、私はパソコンで水着のトレンドを検索する。大量に出て来る画像、へー、最近は肌成分控え目なんだ。コスプレの方がエロいかも……知らなかった。
何やってんだ、私? 水着検索なんかして、山のような情報に眩暈がする。そもそも体型大丈夫かな……。私は立ち上がって部屋着を脱ぎ捨てて下着姿で姿見鏡の前に立つ。ブラの上から胸を掴み腰を捻ってウエスト周りを確認する。少し締まったかな、最近運動してたから。
クルクルと鏡の前で回転している自分の姿。あれ? 少し下着が肌に食い込んで段が出来ている。
太ってるって思われるかな、大神に……。
「あーっ!」
私は頭がクラクラして叫んでベッドに飛び込んだ、何であんな奴の為に体型気にしてるのよ! 大神だって運動部でも無いんだから大した体じゃない筈だし!
私は大神の水着姿を想像して顔が熱くなるのを自覚した。
「あーっ、ダメ!」
枕で自分の頭を連打する。ステイクールだよ、私。
その時、一階の階段からお母さんの声が聞こえた。
「彩子、どうしたの? 大きな声出して」
私は部屋の中から叫んだ。
「うるさい、放っといてよ!」
言っちゃった。どうしよう、またお母さんを悲しませたかも知れない。
晩御飯が気まずい……まだ夕方だし、水着見に行くかな? 一点集中なら時間は十分だから。
私は直ぐに服を着て家を飛び出し、自転車に飛び乗るとペダルを勢いよく漕いで新木町駅に向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます