彼女の泣き顔、彼女の笑顔
第23話 何となくデート?
「その映画観たいのか?」
俺は帰りの電車の中で吊り革につかまりながら季三月のスマホを覗き込んで言った。
彼女は身体をビクッとさせて俺を睨んだ。
「勝手に見ないでよヘンタイ!」
「何ならこれから行かね? 奢るから」
「このアニメ、TVシリーズ見て無いと分からない話だよ?」
「10話が泣けるんだよな」
「えっ? 知ってるの? 大神」
「絵が綺麗だし、主人公の女、超美人じゃね? 季三月、今度コイツのコスプレしたら」
「こんな所でコスプレの話しないで!」
俺を睨んだ季三月は声を殺して言った。
別に秘密にしなくても……すっげー可愛いのに勿体ない。
「彼女のコスプレなんて恐れ多いよ、それより大神がこのアニメ観てたのが意外……」
「俺のいとこがアニメ好きでさ、スゲー勧められたんだ」
俺は直ぐに乗り換えの三笠新城駅周辺の映画館の上映時間をスマホで調べた、後20分後、完璧じゃねえか。
「20分後に上映がある、待たずに観れるから行こうぜ」
季三月は俺の顔を見て考えているようだ、フリーズしかけてる、口をパクパクさせて声を出そうと頑張っている。
「いいよ……」
よっしゃー! 俺は電車の天井を突き抜けるくらいジャンプしたくなった、ありがとう、俺のいとこ。
◆ ◇ ◆
「私、自分で払うから」
季三月は映画館の券売機のタッチパネルを操作しながら言った。
前から5列目のど真ん中、その背後は通路の席を季三月は選んだ、俺はその隣だと思って画面を見ていたが彼女は俺の席を二つ離した。
「え? 何で、隣じゃ無いのか?」
「集中したいから離れて」
それじゃ一緒に見る意味ねえって! 俺は席のボタンを横から手を出して隣に変えた。
ムッとした季三月は「ちょっと!」と言って、また二つ席を離して速攻決定ボタンを押した。
チケットが機械からペロッと二枚出て来た、それを季三月は一枚取って俺に手渡した。
何でこうなるんだよ……仕方が無い、一緒の時間を共有出来るだけ良しとするか……。俺は余り納得していなかったが、これでもデートな筈だと自分に言い聞かす。
「何か食わねえか? 奢るし」
俺は軽食コーナーに並んだ。
「じゃあ、ウーロン茶とチュロス……イチゴ味で」
俺は何食うかな? 腹も減ったしホットドックでも食うか。
「スクリーン5、ここだ」
二人は中に入り、指定したシートに腰かけた。やっぱり遠いじゃねえか、話も出来ねえぞ。
俺は季三月に入口でモギリから貰った入場特典を手を伸ばして渡した、ランダムのカードが銀の袋に入っているやつだ。
「ありがと……」
彼女は早速袋を開けた。
「やった! 少佐だ!」満面の笑みで俺を見る季三月は自分が貰ったカードのヒロインとのカップル成立に喜んでいる。
「ありがとう、大神!」
無邪気な笑顔を俺に向けた季三月、その顔を見れただけで俺は心がほっこりとした。
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