第18話 ダメージ
翌日、季三月は登校しなかった。
俺は昨日、弱り切った季三月を家まで送り届けると、彼女のお母さんに丁寧に礼を言われ、俺の家に電話をかけて母親にも事の次第を伝えて礼を言っていた。
季三月のお母さんは気を使ってくれたのか帰りにタクシーを呼んでくれると言ったが、俺はそれを何とか断って帰路に着いた。
俺が季三月を本屋に誘ったばっかりに、あんな事になってしまうなんて。交通事故がトリガーになってアイツは怖い事を思い出してしまったのか。
ごめんな季三月、今度会ったら俺は何て彼女に言ったらいいのか分からなくなる。
教室の窓からぼんやりと外を眺めていた俺に中倉が声をかけてきた。
「何だよ大神、暗い顔して。どうせ季三月絡みだろうけど?」
昨日の彼女の事を言っていいのか俺は少し迷ったが、俺は口を開いた。
「昨日の帰り、強引に季三月を本屋に誘ったらその後倒れたんだ」
「倒れたって? 何だよそれ!」
中倉は驚きつつも周りを気にしてか、小声で聞いて来た。
「多分フラッシュバックだと思う、交通事故の音で過呼吸起こして動けなくなったんだ」
「それってまさか、アイツの知り合いが事故で死んだからなのか?」
俺は伏し目がちになって答えた。
「多分……でもそんな事は聞けなかった」
「まあ、深入りして欲しくない事もあるだろうし、本人が話す迄は触れない事だな」
中倉は俺の肩を励ますように軽く叩いて笑顔を見せた。
俺は携帯を取り出し、SNSで季三月宛に『体調よくなった?』と入力して指を止めた、送信ボタンを押す勇気が出ない、俺はその文を消去した。
その操作と同時に携帯のバイブレーションが作動して季三月からメッセージが届いた。
『昨日はありがとうございます、助かりました、もう大丈夫です』
何ともよそよそしい文章、でも実際に会っても弱っている季三月なら言いそうだ、それもとても小さな声で。
俺は気の利いた文を幾つか書いては消し、『昨日は無理に誘ってゴメン。今日はゆっくり休んで、また元気な顔見せて』とメッセージを送り返した。
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