第5話 陸の水着女

 写真を消す替わりに質問をする事にした俺だったが、実際この写真を消すの惜しい、消すふりをして個人的に楽しみたい。


「何でお前、学校に来ないんだ?」


「えっ? えっと、こないだ大神くんに視姦されてから、貴方が私をオカズに使ったかと思ったら犯されそうで怖くなって家に居たんだ」


「視姦? してないだろ!」


「だって物凄くいやらしい顔してたし」


 口を尖らせた彼女は俺に視線を合わせずにブツブツと小声で言った。


 季三月をオカズに使ったのは事実だが、いやいや、そんな事言えるか!


「私をどんなオカズにしたの?」


 上目づかいで恥ずかし気に聞いて来た季三月は頬をピンク色に染めた。


「ブルマ姿で……いや、違う、してない」


「怖い、ブルマなんて上級性癖じゃない!」


 季三月は車の影に身を隠し、汚物でも見るように顔をしかめる。


「部屋着がスク水の奴に言われたくねえ! だいたいお前何でそんな格好してるんだよ! 家ん中にプールでもあるのか? おい、どうなんだ?」


 季三月のスク水姿を偶然拝めたのは嬉しい誤算だが、一体なんの為に……まさかエッチな動画でも作ってるっていうのか、それは観たいぞ。


「それは……えっと……その……」


 目が泳いでいる彼女は一分以上俯いたまま沈黙している。


「あーっ、分かった分かった、聞かないでおいてやる」


「もう怒ってない? 大神くん」


 車の陰から出て来た季三月、相変わらず声が小せえ。


「怒ってねえって、だから明日から学校来いよ? それじゃあな」


 俺はそう彼女に告げて歩き始めた。


「待って、あなた私の小説読んだでしょ? そのことだけは誰にも言わないで欲しいの」


「ああ、あれか。別に秘密にしなくてもいいじゃないか、上手く書けてたし。ちょっと男への妄想が過ぎるし、微エロだったけど」


 季三月はどよーんとうなだれて動かない。何かヤバいぞ、この絵面。眼鏡を掛けたスク水美少女を俺が脅してるみたいじゃねえか? 近所の住人が怪訝な顔で俺を見ながら通り過ぎる、通報されかねない、性犯罪者と誤認されて。


「誰にも言わねえって」


 おい、固まるなよ、落ち込むのは自室に戻ってからにしてくれ。面倒くさい女だな、まったく。


「俺、帰るわ。家、新地谷しんちだにだから此処から遠いし」


 俺はそう言って、周りの視線に居心地の悪さを感じて、そこから急いで退散した。

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