第6話 徘徊少女
はぁーっ、何だよこの可愛さ。
昨日スマホで撮った季三月のスク水メガネの写真を拡大し、俺は暫しそれを堪能する。
何なんだアイツ、コスプレ趣味でもあるのか? 俺にはその手の趣味は分からないけど結構人気あったりするのかな、案外コスプレ界では有名人物だったりして。
俺はスマホを制服のポケットに仕舞い二階の教室に向かった。
季三月、ちゃんと登校したかな? 流石に今日も来ていなかったらヤバいな、確実に俺のせいだろ……。
いや違う、アイツの自業自得ではあるのだが俺がその件に絡んでいるのが何とも気に入らない。
二年四組、俺のクラスの入り口をのぞき見している不審人物が目に入る、灰色のショートヘアーの小柄な女生徒、季三月彩子だ。
「何やってんだ? 季三月」
ビクッと飛び跳ね、まるで猫でも驚かせたかのような反応の季三月はコマ送りの動画の如く振り向いた。
「あわわわ」
「よう、季三月。やっと学校に来てくれたんだな、安心したぜ」
俺は彼女の頭をガシガシと雑に撫でた。
「や、辞めろっ」
季三月は小さな声で俺の手を払う。
オドオドしながら自分の席に向かう季三月は立ち止まった、彼女の席に座り他のクラスメイトと話をしている女生徒が居たからだ。季三月は踵を返し廊下に向かう、コミュ障で友達が一人もいない彼女はきっと自分の席が空く迄待つのだろう。
俺は季三月の席を占拠している女生徒に言った。
「ちょっとどいてくれ、俺この机に忘れ物したみたいだ」
「あ? う、うん」
その生徒は立ち上がり席を開けた。
俺は季三月の席に座り、机の中に手を突っ込み物を探す素振りをする。
此処で季三月が座れないだろとでも言ったら彼女に危害が及ぶ恐れがある、季三月と視線を交わした俺は立ち上がり、彼女を席に着かせる。
少しホッとした表情の季三月はいきなり机の上に突っ伏して寝たふりを始めた、外界からの干渉を完全に排除しにかかるその姿に、俺は物凄く彼女の味方になってやりたいと感じた。
季三月の事が気になってしょうがない、休み時間になると彼女は決まって席を立ち、10分後の授業開始ギリギリに席に戻ってくる。俺は彼女が休み時間に何をしているのか気になり後を
季三月は校舎内を時間つぶしに歩いているだけだった、まず一階に下り廊下を延々と進み逆側の階段を四階まで昇った、そしてまた突き当りまで廊下を歩き階段を下る、一周5分を二回繰り返す、10分休みは何時もそうだった。まるで病院内を自らリハビリして歩く入院患者のように。
これはヤバいものを見てしまった、友達がいないから教室に居られないんだ。
昼休み彼女はどうしているのだろう、気にしたことも無かったが、まさか時間つぶしに校内を徘徊しているのか?
俺は昼休み季三月の行動を監視した、今日はパンにして良かった、尾行中も食べられるからな。
彼女は授業が終わると四階に向かい図書室のドアを開けた、誰もいない図書室で大きな机に陣取って弁当を広げ、ノートを開いて箸とペンを握る。
アイツ両利きか? 左手に箸を持ち、右手でペンをノートに走らせる、何とも器用な手つき。
俺は図書室のドアの隙間から彼女を見ていたが、ドアを勢いよく開け中に足を踏み入れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます