第2話

「よし、宝石はこっち、絵画の類はこっちだ。あぁ、そうだ」


 テキパキとエドワードは私のお屋敷にある高価な物を仕分けてエントランスに分けていく。


「大分まとまって来たな、それでは、ここの類は宝物庫へ運べ。これは・・・僕の部屋に運んでおけ」


 宝石の入った箱から、家宝のレッドサファイアを個別に取り出し、兵士に投げつける。


「ハッ、かしこまりましたっ!!」


(いや、かしこまりましたじゃないわよ)


 あれはお母様が大事に身に着けていた思い出の品。

 エドワードと結婚式でお母様から私に贈られるはずだった品。

 それをあんなに存在に扱われた・・・


「それは・・・っ、お母様の・・・っ!!私・・・のっ!!!」


 私は悔しくて、私はその兵士に掴みかかるが、私の非力な腕では奪い返すことができない。

 そんな私を兵士からひっぺ返すエドワード。


 バシーーーンッ!!


 左の頬に強烈な痛みが走り、脳も震えたのか頭がくらくらする。


「黙れ、お前の物などここにはない。出て行けっ!!!」


(ここは・・・私の家だ・・・っ)


 私は痛みなどで屈したりしない。

 そんなことで屈していたら、亡くなったお父様やお母様に会わせる顔がない。


「親が親なら、子も子だ・・・大人しく聞いていれば死なずにすんだものを・・・っ」


「えっ・・・どういう意味・・・?」


 私は予想もしない言葉に睨んでいたのを止めてしまう。


(まさか・・・)


「ちっ」


 ばつが悪そうな顔になったエドワードは舌打ちをして私に詰め寄る。


「お前は鬱陶しいんだよっ!!」


 人差し指でおでこを小突かれる。


「お前たち、こいつを連れていけっ!!」


 その言葉に二人の兵士が私の両腕を掴む。


「やだ、やめてよっ、離してっ」


 私が腕や足をばたばたさせるけれど、屈強な兵士たちに持ち上げられてしまえば、私は無力だった。


 ドンッ


「いたっ」


 私は玄関の外に放り出される。


 キーーーーッ


 バタンッ


 ガチャッ


 外は雨が降っていた。きっと、私のスカートは泥だらけかもしれない。

 でも、今はそんなことはどうでもいい。私は立ち上がり、扉のノブを回す。


 ガガガガッ、ガガガッ


 鍵をかけられてしまったらしい。


「開けてよっ」


 ドンドンドンッ


「ねぇ、明けてよ、エドッ」


 ガガガッ、ガガガッ


 ドンドンドンドンッ!


「ねぇ、明けなさいってばっ!!」


 ドンドンドンッ!!!


「開けろーーーーーーーーっ!!!!!!」


 私は扉に寄りかかりながら滑り落ちるようにしゃがみ込む。


「開けてよ・・・・・・お父様、お母様・・・」


 手はズキンズキンッと痛みが走るし、喉だって痛い。

 でも一番痛いのは心で、悔しくて、空しくて、切なかった・・・


 こんなに降っている土砂降りの雨でも、この嫌な気持ちは洗い流すことはできなかった。







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