第5話 スクール3

 ペンと書かれた携帯を見てとても驚いた。


 「知りませんでしたか?」


 「はい。すごいですね」


 「マジシャンズチョイスっていうネタなんです」


 「マジシャンズ・・?」


 「チョイスです。魔法使いの選択っていうとカッコいいでしょ?」


 「マジシャンズチョイスですかぁ」


 「じゃあネタバラシしましょう」


 3つ選べるものを用意する。これは何でもいい。

 答えを準備する。

 選んでもらう。

 答えと同じものを選んだら、答えを見せて「選ぶのが分かってました」

 違うものを選んだら、残りの2つからまた選んでもらう。

 答えと同じもの選んだら、答えを見せて「選ぶのが分かってました」

 さらに違うものを選んだら、答えを見せて「残すのが分かっていました」

 となる。

 言うセリフも「どう?」くらいでいいらしい。

 相手の脳内で答えを作ってもらうのだ。


 ゴールは『最初』か『最後』を選択させること。

 2つ目を選ばれるとネタバレしやすいから、携帯とメモ帳など2つ答えを準備しておくのもいいそうだ。


 合間合間に思わせぶりで焦らすような会話や行動を入れると効果が増す。

 心理テクニックを入れる。

 相手に驚いてもらうのに何が必要か?

 

 検索して出てくるのとはちょっと違うけど、マジシャンズチョイスはかなり有名らしいのでご存じの方も多いのではないか?

 小ネタとしては面白いので、やってみて下さい。


 この日は結局、マジシャンズチョイスを学んで終わったのだった。


 ☆ ☆


 現在でもマジックなどを掴みとしてよく使います。

 被験者の方を惹きつけるのはもちろんのことですが、重要なことがあります。


 マジックを被暗示性のテストに使うのです。

 

 数秒以上見つめ合えたか。

 どこを見ているか。

 集中しているか。

 どんな反応をしたか。


 マジックで見れる反応は、ラポールの構築~カタレプシーの誘発とほぼ同じなのです。


 ☆ ☆


 週末にスクールに通うようになった。

 何回か通ったけれど、テキストを読んだ人は見たことが無い。

 テキストは使わないらしい。


 結局、教えてもらったのは手が固まるやつだけだった。

 中級以降を選ぶようにとの差別化なのだろう。

 すぐに飽きた。

 私は初級なので主に被験者となった。


 ある日、私がいじられる様子を見て先生が誘導をしてくれた。

 部屋を暗くし、シングルソファーの背もたれを倒してブランケットをかけられる。

 先生の誘導で退行催眠をすることになった。


 が、まったく入る感じがしない。

 「おかしいな」って先生が言っている。

 そりゃそうだ。

 先生に少しの権威性はあったが、学んだこと体験のほとんどは中上級コースの受講生からだった。

 先生に対してのラポールが無かったのだ。


 結局、誘導は失敗に終わった。


 これがきっかけでスクールに足を運ばなくなった。

 自分の成長するイメージが見えなくなったのだ。

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