第3話 スクール1

 Aさんの催眠術が忘れられなかった。

 気になったら止まらない。


 Aさんは飲み会の余興的に催眠術をしていたしみんな楽しめた。

 もしかしたらモテ要素になるかな?っても思った。


 自分で色々調べ始めたが、簡単に説明してくれるところは、あったのだろうが私の目に止まることがなかった。

 当時はネットで検索しても今ほどの情報は出ていなかった。

 情報の真贋も分からず、思い切ってどうやったら催眠術を身につけることができるのか、Aさんに聞いてみた。


 「被験者さえ用意してもらえれば私が教えますよ」

 

 今思えば太っ腹です。


 「被験者ってなんですか?」


 「催眠術にかかる人の事です」


 「あぁ、そうなんですか。それじゃ無理そうですね」


 人を集めるどころか人付き合いが苦手だった私は、Aさんに教えてもらうのはあっさり諦めた。

 が、Aさんから本を頂いた。

 

 「催眠術に理屈があることは学べるんですが、ここから身につけるには難しいんです。でも何でも聞いてください」


  現代書林 (発行)

  林 貞年 (著)

  催眠術のかけ方 初心者からプロまで今日から使える


 読んだが、専門的にまとめられており、用語からイメージできるものがない。

 なにより、Aさんが眼の前で行った事が何も書かれていない。

 正直良くわからないってのが感想だった。


 ・・・

 

 それでも気になる。

 

 社会に出てからそんなに日の経っていない一人暮らし。

 できるだけお金をかけたくなかった。


 ネットで検索を続けてみた。

 この時はまだ観念運動など簡単な用語すらも知らなかったので、大した情報も集まらなかった。

 

 催眠術を学ぶ方法はネットにはない。

 頂いた本も、聞いていた通り実用的ではない。

 立ち読みをしたけれど似たような本ばかり。

 

 自力の勉強は諦めた。

 Aさんに師事しても被験者なんか集められない。

 でも、催眠術を知りたい!

 そんなときネットでとある催眠術教室を見つける。


 この教室では初級・中級・上級とコースが分かれている。


 1年間通いっぱなしで初級6万・中級10万・上級20万。

 (中級以降はおぼろげながらの値段)


 月5千円の月謝と思えば高くはないけれど、一括のインパクトは大きかった。

 そして自分に催眠術ができるかも半信半疑で不安。


 モヤモヤが募る。


 1人で悩んでも仕方がない。

 Aさんに聞いてみることにした。

 

 「あの。催眠術で教えて頂きたいことがありまして・・・」

 

 「はい何でしょうか」


 「もっと学びたくて調べてみたんです。でもいい情報がなくて。Aさんの時間をいただくのもなんか違う気がするので、スクールに通うかと思ったのですが、ご存知でしたらスクールについて教えていただきたくて・・・」


 「おお!こっちに来てくれるのは嬉しいです!でどんなスクールですか?」


 信じられないくらい優しいです。


 「〇〇さんの初級コースが気になっています。ご存知ありませんか?」


 「えっ〇〇さんですか?私も通った事があるのでいい所ですよ」


 Aさんと会って話を聞いた。

 そして初級コースに通うことを決めたのだ。


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