第13話 催眠誘導と深化1 トランス状態の学習

 催眠誘導

 内容は前に書いたことと重複する部分があります。


 1回目の催眠誘導はカタレプシーの誘発(以降カタレプと書きます)に含まれます。

 これから説明する催眠誘導は1度トランス状態になった後、2回目以降の催眠誘導を指します。


 催眠誘導では、トランス状態(催眠状態)を学習してもらいながら軽トランスから中トランスそして深トランスへと深化させることを目指します。


 トランス状態は『起きてる』と『寝ている』の中間の状態のことで、日常生活の中ではただ通過するだけです。

 この領域に留まり、維持し、意図的にコントロールすることを経験した方は少ないでしょう。

 メンサと呼ばれる方々の中にこれらができる方がいるとテレヴィで見たことがあります。

 羨ましい限りです。


 人間は恒常性という機能(体温調整が有名だと思います)によって日常活動に必要な状態を維持しようとします。

 カタレプシーの誘発でトランス状態のαアルファ波になっても、すぐにβベータ波へ戻るのは恒常性という機能があるからです。

 βベータ波が活動をするのに最適な状態と本能が認識しているのでしょう。


 トランス状態というのは、通常自分でコントロールして到達・維持できる状態ではありません。

 スポーツでは『ゾーン』、仏教では『悟りの境地・涅槃』と呼ばれます。

 『ゾーン』なら中トランス、『悟りの境地・涅槃』なら深トランスが該当するかと。

 スポーツ選手なら厳しいトレーニングの末に、仏僧なら厳しい修行と瞑想の末に辿り着く境地です。

 狙って到達することも、到達しても状態を維持することは難しい。


 ですから、トランス状態はという前提で誘導をします。

 催眠術師はトランス状態へ導き、誘導しながら、体験してもらって、学んでもらうのです。



 テレビで手を固めて、イジりながら腕を固めて、全身を固めてという進行をご覧になった方はいませんか?

 このイジりには理由があります。


 人の感覚は1点から拡張される傾向があります。

 例えば、かゆみや気持ち良い刺激などは1点から始まり、1点の周囲へそこからさらに広範囲へと広がります。


 これを利用して催眠術も同じような拡張を行います。

 手が固まるから腕が固まる、そして全身が固まるへと影響を広げていきます。

 イジりとして見せるのはエンタメとして行うことで被験者にも楽しんでもらえるからです。



 トランス状態にあるから手が固まります。

 エンタメのイジりでなくてもいいのですが、繰り返し暗示を入れることでトランス状態の維持を学習してもらい、さらに影響を広げていきます。

 何度も言いますが、人はトランス状態にいる状況を知りません。

 催眠術は実技ですから、トランス状態はその場で学んでもらうしかありません。


 何回も繰り返す事で

 ・トランス状態を維持すること

 ・トランス状態で影響が広がること

 ・トランス状態になれる環境

 ・トランス状態に誘導した存在

 を学んでもらいます。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る