第6話 つかみたい未来

 2人が付き合い始めて1か月もすると、すぐに夏休みがやってきた。三希は夏休みがいやだった。

 三希の部活と佐々木のバスケ部では、登校時間が全く違うからである。そして、三希の部活は、この夏休みが文化祭の準備で一番忙しくなるのだった。

 加えて、高校生活最後の野球部の県大会の応援もあった。今年こそ甲子園に行けるといいけど・・・

2学期にクラスでは、野球部の為に千羽鶴を甲子園出場に願いを込めてみんなで折り続けた。

野球部は県大会を順調に勝ち進めていた。三希は全試合、応援に全校生徒と共に参加した。佐々木たちのような運動部の生徒は自分たちの部活があるので、応援には行けない。

三希は佐々木に

「佐々木君の分も、ちゃんと応援してくるからね」

と言っては、試合内容を事細かに報告して佐々木を楽しませた。三希は、野球に詳しい上に三希のクラスに主要メンバーがいるので、佐々木は三希の話を聞くことが楽しみだった。三希のその時の気持ちも織り交ぜながら、真剣に延々と話し続けるので、聞いていて飽きなかったのだ。


 そんなことを繰り返しているうちに野球部は県大会を優勝した。高校生活最後の夏、ついに!「甲子園出場」となった。

三希のクラスには野球部のレギュラーの半数がいる。佐々木のクラスにも控えであるが選手がいる。

三希は、佐々木の応援に行きたい気持ちを背負って、甲子園球場まで応援に向かった。県大会の時に何度か三希はテレビに応援している姿が映っていた。甲子園でも映るかもしれないから、と言って、県大会の間、腕に佐々木の名前の頭文字が日焼けで残るように「T」というシールを自分で作って腕に貼った。

「これで佐々木君も甲子園に一緒に行った気分になれるね?」

と見せた。佐々木は夏休み中、合宿漬けなので、三希が羨ましかったが、楽しそうにそれでいてとてもリアルに話してくれるから、本当に自分も甲子園に参加している気分だった。


結果は、甲子園でベスト8まで勝ち進むことが出来た。

三希達にとって最高の思い出が出来た夏だった。

 でも、三希は佐々木と2人の「夏の思い出」がほしかった。なぜなら、三希にとって、学生の夏休みは最後であり、学生でいる佐々木と三希にとって最初で最後の夏休みなのだ。女子たちにとって「思い出」は大切なイベントなのだ。

そんな三希の想いと不安は佐々木には届くわけもなかったが、勇気を振り絞って

「私、海が見たいな」

と言ってみた。

佐々木が中学まで住んでいたところは、海が目の前の所だったからだ。海の見える地区だったら、佐々木の方が詳しいので、そう言ってみたのだ。三希からしたら、海でも山でも川でもどこでもいいのだ。佐々木と二人きりで、夏休みを1時間でもいいから過ごしたかっただけなのだから。だが、佐々木は、

「部活があるから遊べない」

と言って聞き届けなかった。

ただ、街中のデートだけは、夏休みに1度だけ誘った。それは、佐々木のバスケ用の靴下を買う為だった。バスケの専門店がソコにある事は全く知らなかった三希だが、中学時代の自身の卓球部の専門店を思い返しても、こんな路地にあったよな、と思い返していた。

三希は、佐々木がバスケショップに行くとは知らず、

「どこに行くの?」と聞いたが、

「内緒。ついてこれば分かるよ」とだけ言われていた。


大通りを曲がってすぐ右手にある、そのバスケショップは、大人が4人入れば満員状態だ。店の前まで来て、バスケショップであることを知った三希は、目をキラキラさせて

「わぁ!バスケショップだ。初めて入るよ。ドキドキしちゃう。何買うの?」

「試合用の靴下を買いたいんだ」

店内に入ると、店長らしき男性が

「いらっしゃい」と声をかけて、黙々と商品を陳列させていた。三希は、大人しく佐々木の買物の様子を見ていた。そして、バスケショップに売られている数々の商品に見惚れていた。そもそも三希は佐々木に惚れる前に、「バスケに恋」をしていたので、三希の五感を初めて見る商品たちは、気持ちいいほどくすぐった。


 佐々木は、散々悩んで、1足を決めて購入した。三希が店内を楽しそうに見ているので、それに安心をして、自分もゆっくり商品を見ていた。普段は1人でしか買物なんて来ないけど、自分以外の人と買物するのも楽しいものだな、と密かに思っていた。それは、三希があまりにも楽しそうにしていたからかもしれない。店を出ると、

「気に入ったものは買えたの?私は初めてだったから、ドキドキしちゃった。楽しかったぁ。店長さんもバスケをやっていた人なのかな~?」

「実は母校の先輩だよ。ユニフォームやボールとかも学校の方へ販売に来てくれているんだ」

「え?そうなの?私が行っても大丈夫だった?」

「え?何で?悪い事してないし、楽しかったんでしょ?じゃあいいじゃん」

「そうだね。すごく楽しかった。いつもあの大通りは通っているのに、路地までは見ていないもんね~ 全く知らなかったよ」


 三希は、佐々木にとって自分が不釣り合いな女ではないか?という自信の無さが出てしまい、佐々木を知る人に自分が顔を出してはいけない、と思っていたのだった。

佐々木が自信をもって、「俺の彼女」と言ってくれる日まで、なるべく目立ちたくなかった。


佐々木は、三希の話を聞きながら、今日買った靴下は、次の三希が来る試合で履いて絶対に勝つ、と心に誓っていた。その為にもこの合宿で履き慣れておきたかったのである。

街中デートは楽しい1日だったが、夏の思い出は、このデートとたまに偶然会えた時の野球の試合の報告と様々な会話だけで終わってしまった。


 三希のどこか寂しい気持ちと不安は、佐々木への想いが圧倒的に大きかったが、秋に控えている文化祭の成功と就職試験に向けての就職先を絞り込まなくてはならない焦りもあった。


 三希の部活の文化祭の例年の催しは、自分達の作品を展示することだったが、それらは毎年同じで、中身の作品が違うだけで三希にとってはつまらないものだった。

誰かに大きな模造紙に絵を書いてもらってその絵をタイピングで塗潰していく、という技法の作品だ。

勿論、見応えのあるものだから例年の作品もやらなければならない。が!自分達の技術はそれだけではないはず、と三希は思っていた。

後輩たちに和文タイプ以外での得意な事を発表させた。絵が好きな人、工作や裁縫が好きな人、読書が趣味の人、音楽が好きな人、ピアノを習っている人、三希のように書道が得意な人。。。

みんなの得意なことや好きな事を和文タイプという技術に載せて表現しようよ、というのが三希の提案だった。

すると不思議な事に部活では普段、目立たない後輩から、次々にアイデアが出てくるのである。その後輩を普段部活で力を発揮している後輩がサポートするのだ。

三希は総合プロデュースを進んでやった。

まず、絵の得意な子に女子が二つの手で何かを差し出す絵を書かせた。出来たら自分たちの高校の制服を着た女の子が良くて、顔から下だけでいい、と注文した。

彼女はサーっと書き始めた。そこに陰影だけつけさせて、ある程度完成形にさせた。タイピング部隊にその絵と陰影をもとに絵を完成させてもらった。タイピングの文字にもこだわった。「夢」「想い」「届け」など・・・自分たちの部活動の「想い」を来場者に届けたい、という気持ちを込めてもらいたかったのだ。


 読書の好きな後輩には簡単だけど、自分達世代の誰の心にもスーッと入る詩を探してもらった。出来れば歌手が唄う歌詞のように、流行りすたりのものではなく、図書館にあるような本の中から選んでほしい、とお願いした。そして、春夏秋冬、それぞれ数編ずつ選ぶことを注文した。

三希は、このように一見すると、具体的なようで実はざっくりした指示をすることが多かった。何故ならば、彼女の頭の中は、ビジョンが描けてしまっているので、それらを細かく指示してしまうと三希の作品展になってしまうことが彼女は面白くないのである。いつも刺激的なことを求めている彼女は、ざっくりした指示の方が受け手の感性で三希の想像を超えるような作品の「出会い」がある気がしてならないことを知っているのである。そして、それこそがみんなで作り上げる文化祭という名の「作品」だと思っているのだ。千差万別の人間が集まってできる化学反応を見たいのである。それが、別の機会の三希にとっての財産となる。無意識に彼女はこのスタイルを子供のころから持ち合わせていた。

 後輩たちは「みつはしちかこ」の詩集を持ってきた。そして、季節に合ったものを1編ずつ見せてくれた。

自分達のタイピングでこの詩に作品性を持たせよう、と投げかけてみた。

それぞれの季節に合った絵を切り絵や塗り絵や水彩画、または質の高い趣のある紙に打ち込むことで表現したりした。

細かい作業が好きな後輩には、来場者に栞をプレゼントしたいから、その栞が取り合いになるくらい素敵なものにしよう!と伝えた。四葉のクローバーや押し花とその花言葉。マンガ同好会に描いてもらうマンガと決め台詞。3年生の進路を願う「書」と願い。春夏秋冬のような1編の言葉とそれを飾る何か。何かしらの言葉やメッセージは必ずタイプで打つこと、とルールも設けた。


 それから、名刺の注文を受け付けるコーナーも取り入れた。注文数が殺到しても、校内の生徒であれば、後日、届けることもできるので、当日の注文の受け付け方に工夫するよう指示した。三希の学生時代には、今のようなパソコンというものがなかったので、「名刺」と言えば、印刷会社に発注するものだったのだ。


 出来上がった作品の配置も、今までは、四角い教室の周りの壁にペタペタと貼りつけていくだけだった。

でも、三希は机を積み上げて、カーテンで机を覆いながら壁を作り、展示室のように、入り口から入って、順路に従って出口に向かうシステムを作り出した。

例年の大作も最初と最後に持ってきた。最後の大作は野球部の甲子園出場があったので、野球部の絵にした。

制作が楽しくなった後輩たちは次々に作品を生み出し、立派な美術館のようになった。佳子は部長として、自分の右腕として働き続けた三希が誇らしかった。


 三希は、妄想して考えている過程に一番、興味と感心が集中するので、文化祭当日にはどちらかというと興味が無かった。むしろ、絶対に成功するのは分かっているので、来年の為にも後輩たちに任せよう、くらいの気持ちでいた。


 得意の「妄想」のおかげで、夏休みの間、イメージを膨らませ続けて成功しない訳が無い事を悟っていた。

 部活の顧問は、いつもの大きな作品が圧倒的に少ない事をとても心配していたが、部員全員が顧問の心配をよそに制作に没頭している姿を見て、見届けることにした。

皆が皆、得意分野で大いに力を発揮できたので、部活のチームワークも俄然アップしていた。


 それから、この夏休みに三希にもう一人の彼氏が出来た。3歳の「タカちゃん」という男の子である。偶然にも佐々木と同じ名前のその子は、高校のバス停の横の家の子供で、この夏休みにバス停で待っている間に仲良しになってしまった。三希は、中学までは「教師」か「幼稚園の先生」になる事が夢だったので、子供が大好きなのである。子供という生き物は、自分が好きな人に寄っていくので、子供好きに群がる習性がある。このタカちゃんも、5歳のお兄ちゃんと一緒に三希のことが大好きだったのである。

バスが来て、バスに乗ると

「おねぇちゃ~~~ん、ばいば~~い」

といつまでも手を振ってくれるカワイイ彼氏なのだ。


一度、夏休み中に佐々木と帰りのバスが偶然、一緒になった時にタカちゃんが三希にまとわりついてきたときに、

「え?誰?この子?」

と、戸惑っていた。

「私の彼氏。タカちゃんっていうの。ねぇ、タカちゃん!」

三希がひょいっと手慣れた様子でタカちゃんを抱っこして、佐々木に

「タカちゃん、ごめんね。お姉ちゃんは、タカちゃんよりもこちらのタカちゃんの方が大好きなんです~」

と言って、タカちゃんを下ろしたら

「やだぁ!」

と怒ったので、もう一度抱き上げて佐々木に問いかけた。

「大きいタカちゃん、どうしましょ?」

「お兄ちゃんが負けました。。。」

と言ったので、三希は大笑いをした。小さなタカちゃんも三希があまりにも笑うので、訳も分からず笑い出した。

そして、佐々木は三希にとって思いもよらなかった言葉をその子に囁いた。

「タカちゃん、お兄ちゃんの大切な人、取るなよぉ、コイツぅ!」

三希は会えない毎日が続いていたので素直に嬉しかった。


三希の夏休みは本当に大忙しだった。

野球部の応援、文化祭の準備・・・そして、就職活動。


 毎日のように学校の進路室に行き、膨大な就職先の中から自分の「なりたいもの」を見つけることは容易ではなかった。佐々木とも来年の為に情報を共有していた。

 三希は、幼少のころから、部屋の中の家具を動かしたり、家具にペンキを塗ったり、布でカーテンや小物を作ることが好きだったので、一番はインテリアデザイナーのような仕事がしたかった。でも、その為には専門学校などに行って専門的な知識を学ばなくてはいけないことを知り、両親に相談したが、却下だった。残念ながら三希の両親には娘の夢を叶えさせたい、という強い熱心な親心はなかった。

その当時の三希は、圧倒的に情報が少なかった。ガツガツさも収集能力もなかった。奨学金の情報も一切知らなかった。

知識が無くてもそれに近い仕事が無いか探し続けたが、なかった。毎日毎日来る求人情報を見逃したくなくて足しげく通ったが現れなかった。


次に興味があった職業は旅行代理店である。旅のプランニングをするような仕事にも興味があった。

それは、小学生の頃、クラスの仲の良い男子が「旅行倶楽部」というクラブで時刻表を見ながらプランニングする姿を見ていて、とても興味をそそられていたからである。知らない土地への旅をどのように計画を立てるのかを社会科の地図帳を使って彼らは熱く三希に語った。妄想の出来る三希にとって、彼らの話はイメージするのに容易かった。おかげで小学生の頃の三希の社会科の地図帳はボロボロだった。全国のどんな路線の時刻表も拾い出すのは、小学校4年生でお手の物だった。

子供の頃の三希は、本州の中部地方に住んでいたが、三希の父方の親戚は皆、東北の仙台に住んでいた。当時は、まだ東北新幹線が開通していなかったため、上野から出発する東北本線に何時間も揺られながら行かなければならなかった。

しかし、三希は小学校4年生の時から3年間、夏休みは1人で自宅から夜行列車に乗って、乗り換えながら東北本線まで乗り継ぎ、親戚の家へ遊びに出かけるような子供だった。6年生の夏休みには、仙台からの帰りは、両親からブルートレインに乗って帰ってきてよい、と許しをもらい、一睡も出来ずに堪能したことは忘れられない。

さらに中学生の時には、その興味が高じて深夜特急ブルートレインの追っかけにはまり、妄想熱が加速した。この列車に乗って見知らぬ土地に行くと、どんな風景が待っているのだろう?と考えると、旅のプランを勝手に考える事が楽しくて仕方なかったのだ。


その類の求人は1件あった。1つはそこにしよう、と決めていた。校内選考があるから、もし、三希より成績の優秀な人と希望がかぶってしまったら、三希は第2希望に進まなくてはいけなくなる。佐々木と違って、三希は自分の成績に全く自信がなかった。


 その次に就きたい職業は、事務員だった。しかもバリバリに仕事をこなす、会社の従業員を一手に支えるような事務員だ。中学生の時に生徒会役員であった三希は、度々、市役所に行く事があった。一度は広報誌に掲載されたこともあった。そこで見た市役所の職員の仕事ぶりを見た事が、初めての事務員の仕事風景であった。デスクに向かってカツカツ仕事を進めて、客が来所するとその対応に追われる。素直にその時はカッコイイと思った。しかし、高校生になって少し情報を集めることが出来た三希に市役所の職員は、絶対になれない職業であることも悟った。だから、市役所で見たあの光景のような事務員になりたかったのである。つまり、それが三希にとってのキャリアウーマンである。漠然とし過ぎて、それがどんな職業なのか、求人票の中からは見つけられなかった。完全に三希の知識不足であった。


 夏休みの間、「働きたい」と思える仕事が旅行代理店以外に見つからなかった。仕方がないので旅行会社1本で行く事に決めた。内心焦る気持ちは隠せなかった。


佐々木に就職の悩みを打ち明けた。

「佐々木君は好きな事や、やりたい事がしっかりしていて羨ましいよ。私はやりたいことも好きな事もあるのに、どうしてよいのか分からないの。求人の中にコレ!っていう企業が何もないのよ・・・見つけられないの。焦るよね~。最終的にはカッコイイOLでいられたらいいんだけどね・・・あるかなぁ?」


 三希の気持ちを受けて、佐々木は思い切って自分の考えている事をぶつけてみた。

「俺はさ、男としてはどうなのか分からないけど、本職が何かにこだわりは無くて、きちんと毎月給料がもらえたらそれでいいんだ。但し、それが本職になれれば本望なんだけど、バスケには絶対に何かしら関わっていく人生ではありたいんだ。例えば、ショップ店員。選手の身体をケアする人。バスケの指導者。審判でもいい。ずっと関わっていきたい。それが趣味やサイドビジネスで成り立つなら、本職は何でもいい。将来はそんな風に考えているよ」

目をキラキラさせて、自分の想いをぶつける佐々木が羨ましかった。誇らしかった。眩しかった。

実に佐々木らしい言葉に三希は心地よさと安心感を持っていた。こういう人と結婚したいな・・・と素直に思った。キラキラしている佐々木にまた、恋をしていた。


佐々木も初めて自分の想いを自分以外の人に話せたことが不思議で、胸のつかえのようなものが取れた感覚があった。彼女に伝えられたことが素直に嬉しかった。


 その佐々木の言葉が後押しになって、三希は旅行会社1本で行く事に決めた。同時に公務員試験も受けることにした。それは、公務員試験の内容が就職の試験にも大いに役立つからだった。「試験を受ける」ことをすれば、自ずと勉強をするから、三希は自分の怠け者の部分を知っているので、あえて課題を自分に与えた。

 公務員を受けても、籍の「空き」が無い事は情報の少ない三希にも入っていた。当時の公務員は、「他人」を入れない事で有名だった。「コネ」なんてない三希は、キッカケになればいいから、と試験だけでも受けることにしていた。公務員の試験は商業高校の勉強しかしていなかった三希には小説を読むように難しかった。

 それを佐々木にも伝えたら、静かに笑っていた。後に佐々木が就職試験を受ける時、この三希のアドバイスが大いに役立つこととなるのだった。

間違いなく三希は今、壁にぶち当たっていた。彼女はこうしてありのままをさらけ出して、来年の佐々木の為に気持ちを準備させている。でも、今の佐々木はバスケしか考えられなかった。これが今の佐々木にとっての全てなのだ。周りの恋人たちがするようなデートにも連れて行ってあげられない事も分かっていた。佐々木は、器用に出来ない自分が情けなかった。

 でも、ひとつ言える事は、三希の暗い顔は見たくないから、彼女が悩まない為にも早く彼女の就職先が決まってほしい。それだけは誰よりも佐々木が願っている事は間違いなかった。






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