第25話 一番最後にゴールしなければ優勝できないレース

1コマ目

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とある家。家族が団らんしている。

テレビ「25年前にスタートしたウラシマ・レースがついに終了します。一番最初に地球のゴール地点に到着したのはイギリス代表、五年前にゴールしています。二番目はフランス代表、三番目はドイツ代表でした。この度、明日の昼までに最後の走者アメリカ代表がゴールするということがわかりました」

父「やっぱり優勝はアメリカか」

娘「なんでアメリカ代表が優勝なの? 一番速かったのはイギリスでしょ」

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2コマ目

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父「ウラシマ・レースというのは宇宙船を使ってどれだけ光速に近付けるかを競うレースなんだよ。光速に近付けば、宇宙船の中は相対性理論によって時間の進みが遅くなるんだ。宇宙船の中では48時間のレースに過ぎないが、地球に帰ってきたときは何十年も経っている。このレースは一番最後にゴールしないと優勝できないんだ」

娘「何それ。おもしろそう。私もウラシマ・レースに出たい!」

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3コマ目

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数年後。ウラシマ・レースのスタート地点。

娘「パパ今までありがとう。私がウラシマ・レースに出れたのはパパのおかげだよ」

父「いいや、俺はお前の背中を押しただけだよ。お前の操縦技術とJAXAの高い技術力があってのものだ。彼らを信じて、飛んできなさい」

娘「うん!」

父(目算ではJAXAの機体は光速度の98%に到達する……。これが最後か)

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4コマ目

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百数十年後。ウラシマ・レースのゴール地点。

アナウンサー「さあ、帰ってきました。ウラシマ・レース優勝の機体です。乗っているのは若干16歳の少女。彼女がなんと光速度の99.9%に到達しました! JAXAの研究員も詰めかけています。ゴール! ゴールしました。……ですがまだ着陸しません。空中に舞い上がりアクロバット飛行を始めました。あっ、飛行機雲で何かメッセージを描いています」

『パパ、ありがとう』と空に描く。

「旧日本語です! これを見るのはいつぶりのことでしょう!」

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                                  おわり

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