第19話
「・・・きれいっ」
レイナはその聖剣、カーテナルに見惚れた。
純度の高いその剣は一片の曇りもなく、光り輝いていた。
地上にいるどんな名匠も、どんな鉱物、どんな鉄火場でも決して創り出すことのできない剣。
そんな剣を神は言葉にするだけで創り出し、そして、その男が現れるのを待っていた。
「気に食わんな・・・」
キュラドは冷たい目でその男を見る。
どうやら、レイラよりも先にその男をどうにかしなければ、自分の求めるものは手に入らないと悟ったキュラド。
「まぁ・・・聖剣には魔剣を」
異空間からキュラドも剣を取り出す。
禍々しい剣、レヴァンジル。
黒色。
カテゴリーとすればそうなのかもしれないが、その濁りきったその剣は様々な色が合わさってできた漆黒の色。
表情が豊かな男は無表情に等しい剣を扱おうとし、表情が乏しいキュラドは表情豊かに等しい剣を使う。
どこまでいっても、真逆の二人。
二人が剣を構える。
「はああああああっ」
先に仕掛けたのはキュラド。
その初撃をかわす男は、カウンターで一太刀をキュラドへ振るう。
「ちっ」
キュラドもかわそうとするが、力んだ一振りは避けるには予備動作が必要となり、頬をかすめる。
レイラにはその一瞬がほとんど見えなかったけれど、キュラドの頬から鮮血が出たので、魔族も血は赤いのだと、そんな余計なことを考えていた。
しかし、人間ならば鮮血が出た場合、深手の場合が多いけれど、そこは魔族。距離を取ったキュラドは平気な顔で、再び男に切りかかっていく。聖剣での傷であるがゆえにさきほどの折れた腕や指のようにすぐに治るわけではないが、キュラドには余裕があった。
キュラドの年齢は千をゆうに超える。
そんなキュラドにとって、男がいくら神に祝福を受けた男であろうと、魔王の子である自分に勝てるはずがない。
そう考えていた。
「ぬるいっ」
キュラドが押し返していく。
魔王の子とは言え、裏切り、嫉妬、悪意が満ちている魔界で何体もの魔物を倒してきたキュラド。
次第に男の剣のくせを把握し、男の剣はまったくキュラドに届かなくなってしまった。
とはいえ、その男。神に選ばれ、祝福されるにたる男であり、圧倒的な経験不足はあったものの、その類まれなる才により、こちらもキュラドの剣を必死に防いでいた。
「降伏するなら、眷属にしてやってもいいぞ?お前」
歯向かわれるのなんて、当たり前。力でねじ伏せて来たキュラドは、最初は頭に来ていたけれど、次第にその男の剣技に才を見出し、興味を持ち始めた。
「レディーたちを食い物にしている君とは相いれないっ、よっ!!」
「そうか残念だ。ならば、殺してから従えるか」
黒い剣が初めて光った。
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