第18話

 ムカッ


 いちゃつく、レイラと謎の男。

 それを面白く思わないのがキュラド。

 自分が先に手をつけようとしていた女、レイラを取られそうになって苛立ちを隠せない。


 シュッ


「なっ」


 驚く男。

 それもそのはず、人間の目には留まらぬ速さで、一瞬で二人に近づいたキュラドはレイラを優しく奪い取ったのだ。


「ふんっ、人間風情が加護を受けたからと言って調子に・・・乗るな・・・っと!!」


 男の腹を軽く蹴とばす。

 軽くと言っても魔王の息子。


「ぐはああ・・・っ」


 男は吐血して、扉の向こう側に吹き飛ばされる。

 

「ああああっ」


 レイラは名も知らぬ男を助けに行きたいと、キュラドから逃れようとする。


「だめだぞ、レイラ。貴様は俺のモノだ。誰にも渡さん。その代わりに、俺が貴様に永遠の命と永遠の美をやろう・・・どうだ嬉しいだろう?」


「そんなのいらないっ!!だから、放してっ!!」


「なっ・・・」


 キュラドが唖然として力が緩む。それを逃さなかったレイラはキュラドの腕を掻い潜り、その男の元へと走っていく。


「ならば、宝石をやろう!!金銀財宝は女の求めるすべてであろう!!」


「いらない、それも」


「なっ・・・なんだと・・・っ」


 レイラは扉に着くが、再び扉は固くなっていてびくともしない。どうやら、外からは簡単に入れるようだが、中からは出られないようだ。


「ふっ・・・ならば、欲しい物を言え。我がなんでも叶えてやろう」


「欲しいものなら、さっきの人に貰ったからっ、貴方からはいらないっ!!」


 レイラの眼中にはキュラドはいなかった。

 一生懸命扉を叩くレイラ。それを見て、数百年ぶりに失恋という感情を思い出すキュラド。


「ふっ・・・」


 こめかみを抑えて、ニヤッとするキュラド。


「まぁ、いいさ。もうその扉も向こう側からは・・・」


 ギイィ


「ふぅ、こんにちは」


 再びさっきの男によって簡単に扉が開かれる。


「大丈夫?」


 アワアワするレイラ。


「ん、大丈夫さ。これくらい」


 男は動じない笑顔が、


「でも、血っ、血っ。口から、血っ!!」


「大丈夫だよ、心配してくれてありがとうね・・・とっ」


 レイラの頭を優しく撫でる男。

 マルガリータがデネブやボロネーゼの頭を撫でているのを指をくわえて遠くで見ていたレイラ。

 とても嬉しい気分になり、再び赤面するレイラ。


 そして、当然のようにそれを邪魔するキュラドと、今度は避ける男。


「くっ・・・」


 不意打ちにも関わらず、攻撃を当てられなかったキュラドが悔しがる。


「さてさて・・・そろそろ・・・魔物狩りと参りますか―――」


 男は剣を抜いた。

 世界でも数少ない神から与えられし聖剣。

 

 カーテナルを。



 



 

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