第12話
「ボロネーゼ、今日は香水変えて見たんだけど・・・どう?」
「くんくん、良いと思うわ。デネブ」
レイラを挟んで会話をする姉妹。
レイラはちらっと、後ろを見るけれど、継母であるマルガリータが目を光らせている。帰りたい、なんて言わなければ、ここまでマークされることもなかったかもしれないと思うと、レイラはやってしまった、と後悔する。
(あんな変な夢さえ見なければ・・・今頃お昼寝から起きてすっきりしている時間なのに・・・)
森での暮らしが数刻前だったのに、物凄く昔のことに感じるレイラ。
廊下は確かに昔は綺麗な朱色だったろう絨毯が敷かれているけれど、今ではホコリが被ってくすんでいるし、上を見上げれば蜘蛛の巣ばかり目に付いてしまう。
「さっ、あれがお待ちかねの扉よっ」
デネブが目の前にある扉を指さす。確かにその扉だけはよく使われているのもあってから、ホコリもほとんどなく、綺麗に掃除されていた。しかし、レイラにはその扉がまるで食虫植物の花の部分にしか感じられなくて、胸のあたりが熱く感じた。
(んっ?熱く・・・?)
胸のあたりを見ると、実の母の形見のペンダントが光っており熱を帯びてそうだった。
(これは・・・やっぱり、私の気のせいじゃない。この3人にとっては平気な場所だったとしても・・・私には危険な場所だわ)
「ねぇ、ボロネーゼ、デネブ。ちょっと私・・・トイレに行きたいの」
「いいわよ、漏らせば」
鼻水を漏らしているボロネーゼには漏らすことへの抵抗感があまりないらしい。レイラは焦りながら、デネブを見る。
「それもそれでいいように利用してあげるから、お姉ちゃん」
デネブがレイラと腕を組むと、ボロネーゼも真似して腕を組む。
家ではまったくそんなことをしないくせに腕を組んでにこにこする二人と焦るレイラ。
ギイイイイィィィッ
ゆっくりと大きな扉が開いた。
「うわ・・・っ」
ひっそりとした空間が広がる。
立派なシャンデリアはあるけれど、ろうそくはわずかにしか乗っておらず、ただ紫がかった煙が床に立ち込めている。
(あぁ・・・良かったぁ)
ただ、レイラが少し安心したのは、パラパラと豪華な衣装をした女性たちがいることだ。
とはいえ、目が移ろ・・・ここにいる人たちが一番目が移ろだ。
そして、他の人の服装を見て、改めて自分の服だけがみすぼらしいことが切なくなった。
(私もいつか着たいな・・・っ。お母様に頼んでみようかなっ?)
「マルガリー・・・タ?」
振り返ってマルガリータを見ると、さっきまでの怖い顔はなく、ぼーっとした顔をしている。
そして、異母妹たちも見ても、虚ろな目をしていて、さきほどまでの元気はどこかにいってしまっていた。
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