第10話

「Zzzz・・・」


 最初は興奮していたレイラだったけれど、長い長い森の道はすぐに退屈になり気持ちよく寝ていた。この頃、3人がいないときは動物と遊び、十分遊んで日が傾いてくれば、遅めのお昼寝したりしていたから、夕方に起きているのはレイラには耐えられなかった。


 それに気づいたボロネーゼがデネブに肘打ちする。


「クスクスクスっ・・・」


 しーっ、と人差し指を立てるデネブ。それをワクワクしながら見るボロネーゼ。


「えいっ」


 ドンッ


「いたっ」


 デネブが勢いをつけてレイラのスネを蹴ると、レイラがハッと目を覚まして、辺りを見渡す。それを見て、異母妹の二人はクスクス笑った。


「あれっ、もう着いた?」


 レイラは身体を乗り出して、外を見る。


 家の附近の森しか見たことがない彼女にとって、そこには見たことも無い絶景があった。


「なにこれ・・・」


「ははっ、おのぼりさんに絶景過ぎたかしら?」


 驚くレイラにデネブが嬉しそうに冷やかす。




 絶景。



 

 しかし、レイナにはここで言う「絶景」は壮大な美しい景色に到底思えなかった。

 

 



 霞がかかった景色。

 レイラが目を凝らしてみると、荒廃した街やゾンビのような生気のない人々がダラダラ歩いている。そして、腐っているのか病気にかかったような野菜などの食べ物が売られている。

 

「ほら、愛と平和の象徴、ハトが飛んでるわよ、おのぼりさん」

 

 デネブがレイラを冷やかしたようにボロネーゼも身体を乗り出して飛んでいる生物を指さして偉そうに語る。けれど、その指先をレイラが見ると、その生物は白いふわっと柔らかそうな羽が生えているわけではなく、黒く鋭く無駄をそり落とした翼。


 黄昏時。


 そんな時間になると、ハトは夜を恐れて家に帰る準備を始めるが、その生物は夜を待ち望んで飛んでいるようだった。


『これからは、俺の時間だ』


 そう言わんばかりに楽しそうに飛んでいる。

 森にもよく現れる夜の生物の名前をレイラは知っていた。


「コウモリ・・・?」


 レイラは呟いた。


「ははっ、何言ってんのよ、こいつは」


「本当に、ふふっ」


 デネブとボロネーゼは馬鹿にしたようにレイラを笑う。

 レイラはどういうことかわからずに呆然としていたが、馬車はどんどん進んでいき、何か嫌なものを気配が一番強いお城へと進んでいった。


「なんで・・・?」


 楽しいことが待っていると、はしゃいでるデネブとボロネーゼ。

 レイラはそんな自分と異母妹では認識が180度違うことに戸惑う。


 レイラは気づかなかったが、レイラの母から授かったペンダントがそっと光っていた。

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