第5話

「はあっ?ダメに決まっているじゃない」


 レイラの継母にあたるマルガリータは当たり前のように言う。


「でっ・・・でも・・・」


 今から僅か前。

 お城へ向かうために呼び寄せた馬車にボロネーゼとデネブが乗り込み、最後にマルガリータが馬車に乗り込もうとする背中にレイラが、


「マッマルガリータ様・・・私も・・・連れて行ってください!!」


 と、情緒不安定気味に勇気を出して伝えると、二つ返事でマルガリータは拒否した。

 一大決心をあっさり拒否されてレイラはショックな顔をしており、そんなレイラを先に馬車に乗った二人の異母妹がにやにや嘲笑していた。


(頑張れ、私っ)


 レイラも3人の考えなんて重々承知で、散々マルガリータ中心に3人からレイラ自身なんかが考えるのはおこがましいと刷り込まれてきていた。ただ、今日のレイラは違った。拳を震わせ、自分を奮い立たせる。


「お願いしますっ!!!」


 深々と頭を下げるレイラ。


「ダメです」


 馬車を降りて、マルガリータがレイラに詰め寄る。顔を下げていたレイラは視界にマルガリータの足が見えたので、顔をあげる。


 スッ


 いつもなら、ここで殺意を込めたビンタが飛んできてもおかしくないことをレイラが言ったのだけれど、マルガリータは指でレイラのあごをそっと支える。


「ごめんなさいね、レイラ。醜いあんたなんかがいたら、うちの娘の品位だって下がるのよ。これは真剣勝負。お荷物を乗せる余裕はここにはないわ」


 謝る気なんてさらさらないマルガリータ。謝るように見せかけてただただ、侮辱したいだけだった。いいセリフが浮かんだから、今日はレイラを殴らなかったようだ。


「そうよそうよ、ここにはあんたが乗れるような場所はないのっ」


 デネブが笑いながら馬車の中から言う。

 しかし、馬車はデネブ達の向かい側に2人乗れる席が空いていた。

 1つは今馬車を降りたマルガリータの分。

 そして、もう1つは・・・。


「だから、ちゃーんと、綺麗に掃除しておくのよ?レイラ」


「痛っ」


 マルガリータはレイラの両肩を万力のように強く締め付けた。


「じゃっ、あとはよろしくね」


「「ねっ」」


 母の真似をするボロネーゼたち。

 馬車の運転手は少し困った顔をしていたけれど、マルガリータがギロっと睨むと、帽子を深く被ってレイラを見捨てた。レイラはやっぱり自分は卑しく誰からも愛されない人間なんだとショックを受けた。


「ハッ」


 カタコトカタコトッ


 馬車はゆっくりと、城へ向かっていった。

 夢の国へと・・・。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る