第3話

「はいっ、できたわよっ!!」


 レイラは縫い終わった黄色のワンピースを掲げて、目の前にいたボロネーゼやデネブ、そしてその奥でだるそうに髪をいじって、椅子に座っているマルガリータに見せる。黄色のワンピースは白い糸で細く一直線に綺麗に縫われており、ほとんど目立たないように縫われていた。


「どうかしら?」


 レイラは自信作を異母妹のデネブとボロネーゼへ見せる。


「・・・ださい」


「はいっ」


 レイラは黄色のワンピースをボロネーゼへ渡そうとする。


「はぁ!?」


 バシンッ


 それに怒ったボロネーゼが黄色のワンピースを叩き落とす。


「えっ?」


 レイラはびっくりして固まってしまった。


「ふざけないでよ、喧嘩売ってんの!?レイラっ!!私は『ダサイ』って言ったでしょっ!!それを渡そうなんてどんなつもりよっ!!!!」


 ボロネーゼの鼻水と唾がレイラに飛ぶけれど、心が寛大なレイラは気にせず申し訳なさそうな顔をする。


「えっ、あっ、ごめんなさい・・・。くださいって聞こえちゃって・・・」


「がはははっ、バ・カ・かっ?こんなダサイ服誰も着ねーよ」


 頭を人差し指でリズムよく小突くデネブ。


「そうよね、さすが#本物__・__#のお姉ちゃん。どっかの汚らわしい奴とは大違い」


 ボロネーゼとデネブは頷き合いながら嬉しそうに共感を確かめ合う。


「だって・・・えっ?ボロネーゼ、あなたのお気に入りじゃないの、この服?」


 レイラは先ほど破けてしまった時の悲しそうなボロネーゼの顔を思い出す。


「はぁ?こんな下手糞な縫い目あるのも嫌だし、あんたが触ったと思うだけで鳥肌物よっ!!」


 ボロネーゼは怒ったような笑ったような顔をしながら、足で黄色のワンピースを踏みつける。綺麗な服がさっきまで走り回っていたボロネーゼに踏まれては簡単に汚れていく。


「そんな・・・洗濯だって私がしているんだからデネブが着ている服もお母様の着ている服も私は触っているわよ?ボロネーゼ」


 正論を言うレイラ。

 とても屈辱的な顔をするボロネーゼが歯ぎしりしていると、


「ダマレッバーカッ、バーカッ」


 デネブが妹を庇うようにレイラを罵倒する。

 それを喜んだボロネーゼも、


「バーカッ、バーカッ」


 二人は大合唱を始めた。

 困った顔をしながら、二人を交互に見るレイラ。

 そんな三人の前にマルガリータがゆっくりと近づいてきた。レイラはようやく理解できる大人が来たことにホッとした顔をする。


「お母さ・・・」



 バチイイイイイイインッ


 ドテンッ


 レイラはマルガリータに手加減なく左の頬をビンタされて、倒れ込む。

 その威力は親が娘に向けるもののレベルを超えていた。


「何うちの娘に歯向かってんだよ・・・この娼婦の娘が・・・」


 憎しみを込めてマルガリータはそう言って、蹴りもおまけでレイラにした。

 それを見た、娘二人も嬉しそうにいたずら顔でレイラに蹴りをお見舞いした。


「・・・ごめんなさい。みなさん。レイラが悪かったです・・・」


 さっきまで元気に洗濯を頑張っていたレイラ。

 だけど、死んだ魚の目のようになり、心ここにあらずになってしまった。



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