25話 隊員証
「なに!? 【
扉が閉まったことを確認して、川津 海未が小声で俺に話しかける。
「なにか、大変なことになったみたいだね」
「ああ。【井上班】が全滅って」
井上さんは身長が高く髪を丸めた
だが、見た目とは裏腹に優しく常に部下のことを一番に考える。
その結果、部下たちも
部下と上司が互いに考え行動するために、そのチームワークは【ダンジョン防衛隊】でも随一だ。
【
【ダンジョン防衛隊】が開催する疑似戦闘訓練でも一位常連の班だ。
そんな班が全滅など考えられないな。
強敵であれば無理をせずに撤退を迷わず指示するだろうし……。
となると、考えられるのは逃げることも不能なほど強い【
「そうなると強さは【
どんな【
既に仕事モードにへと気持ちを切り替えているのか、素早い動作で身支度を終えていく。
下着を脱ぎっぱなしにしていた女性とは思えない速さだった。
「悪いな。話はあとだ。私は直ぐに本部に向かう。君たちはゆっくりしてくれ」
「あ、ちょっと待ってください!」
俺は部屋から出ようとする
表情を見せない
それほどまでに緊急事態なのだろう。
「なんだ? 私は急いでいるのだが?」
「分かってます。その、できるなら――俺達にそこ向かわせてくれませんか?」
俺の申し出に
「言いたくはないが、君は現在一般人だ。ならば、私は君を巻き込むわけにはいかない。
「……それは、勿論分かってます。でも、知ってしまった以上は助けに行きたいんです。俺がそういう性格だってことも知ってますよね?」
「……」
俺に何を言っても無駄なことは知っているはず。
「
「いや、駄目だ」
「そんな!」
「当然だ。私は一般人を守るのが役目だからな」
それなのに――今回は分かってくれないのか。
こうなったら、1人でもその場所を突き止めてやる。
俺は
「だが――」
と、
四角いカードのような形状。
目を凝らしてみると顔写真が張ってあった。
目つきの悪い指名手配犯のような写真。
その人物は――俺だった。
「たまたま、私が没収した隊員証を落としてしまったら――その人物はまだ隊員だな」
「
やはり、
少しでも疑った自分を恥じる。
そうだよな。
俺と
俺は隊員証を拾おうと屈む。
手を伸ばして掴もうとした時、「バン!」と隊員証が踏みつけられた。
顔を上げると踏んだ人物が口角を持ち上げ笑っていた。
川津 海未だった。
「分かりました! 私が隊員となって【
敬礼を決める川津 海未に困ったように
「……いや、君はさっき私の誘いを格好良く断ってたじゃないか」
「はい。なんかリキ先輩が格好良くキメそうだったので、邪魔たかっただけです」
ケロっとした表情で言ってのける川津 海未。
どんな理由で行動しているんだよ。
そう思いながらも俺は隊員証を拾って頷いた。
「取り敢えず、頼んだぞ――リキ隊員!」
「はい!」
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