第4話 女子高生と土鬼
「ちょっと、君!! ここは関係者以外立ち入り禁止だよ?」
俺の声に少女はビクリと身体を震わせる。
Mのように癖着いた前髪と青いカチューシャが特徴的な少女。いきなり声を掛けられたことにキョトンとする。
「あれ、そうだったんですか? いやー、知らなかったです」
「知らなかったって。じゃあ、なんでこの中に入ろうとしたの? ここは【
「知ってるよー! 【
「知ってるじゃん!!」
【
それは、世界でも二桁しか観測されていない特殊なダンジョンに付けられた名前だ。
通常の【
俺が昨日倒した【
だが、【
進行を防いでもボスを倒しても、開いた扉が閉じることはない。
だからこそ、こうして【壁】で囲い【
また、【
そんな場所に入ろうとしたら、どんな罪に問われるか。
しかし、少女は若さゆえか自分が犯そうとした危険に気付いておらず、
「はっ。しまった。私としたことが人の良さしか取柄がなさそうな男に図られるとは!!」
「いきなり君失礼だね」
人の良さしか取柄がないと出会ったばかりの少女に言われるとは。
声を掛けなければ良かったと後悔する俺に、服の中に隠れたガイが笑う。
「ちげぇねぇな」
「うん? 今、誰かの声がしなかった?」
ガイの声が聞こえたのだろうか。
少女は周囲に人がいないか探す。
流石に失礼な少女でも、声の主がハリネズミの人形だとは思っていないだろうな。
「俺には聞こえなかったけど? そんなことより、君はなんでこの場所にいるんだい?」
「それは勿論、私がダンジョンを攻略するためよ!!」
「攻略って一般の人が出来るわけないじゃないか」
「やってみなきゃ分からないでしょ!!」
少女が一歩前に出て俺に詰め寄った時――【壁】の一部が崩れると共に、一匹の【
◇
「も、【
少女は目を輝かせて【
俺は少女がまた暴走しないように注意しつつ、【
大きさは小学生程度で瘦せ型。鼻が異様にでかく肌が岩のように突起している。そして何よりも特徴的なのは、手に付いた黒い鉱石のような爪だった。
「【
「なんだ、リキ! こいつ知ってんのかよ? 俺は初めて見るぜ!」
「ああ。タイプとしては【
この【
なんでそんな場所に【
「いや、今はそれはどうでもいいか。とにかく、こいつを早く倒さないと侵略される。そうなったら、被害はもっと酷くなる。けど――」
俺の隣には少女がいた。
カバンから裁縫ハサミを取り出して構える。
銃弾すら効かない【
無くてもいい位の武装である
というか、俺としては、何も持たずに早く逃げてくれと思うのだが。
しかし、少女は「いやあああ!!」と気合の声と共に飛び出していった。
【
「ヤバい……! ガイ!!」
「あん?」
「あん? じゃないよ! あの子がやられるぞ!」
俺はそう言って少女たちに向かって飛び出す。
「でもよぉ。ここ、【ダンジョン防衛隊】の近くだぜ? 俺の力使っていいのかよ。それに、あいつと出会ってまだ3分だ」
ここで俺達が【鎧】を発動すれば、もしかしたら【ダンジョン防衛隊】にバレるかもしれない。
出会って3分の少女のために危険は犯せないとガイは俺の頭の上で胡座をかいだ。
ガイの言うことは正しい。
自分たちの身を守るために俺は【ダンジョン防衛隊】を追い出されたんだ。
でも――、
「俺は世界を守りたいんだよ。だから、力を貸してくれ!!」
俺の叫びにガイが応える。
「まったく、しゃーねーな!! 正体バレること恐れて追放されたのに、今度は力を使わないと怒るとか――理不尽極まりないぜ?」
不満を口にするが、乗り気なのは態度で分かる。
こういう展開ーー嫌いじゃないだろう?
一緒に戦うようになって3ヶ月。ようやく好きな物が分かり始めた。
「行くぜぇ!」
ガイは服から飛び出すと光り輝き粒子となる。そして、宙に散った粒子は俺に集まり身体を覆う鎧となった。
少女が腹部を貫いてくださいと言わんばかりに、腹部を晒して裁縫ハサミを振り上げる。
【
「う、うわあああ! や、やられた!!こいつ強いよ!!」
抱えられた衝撃が敵からの攻撃だと思ったのか、腕の中で手足をバタつかせて騒ぐ。
「て、あれ……? え! 今度は鎧の【
『なあ、こいつちょっと黙らせた方がいいんじゃないか?』
鎧となったガイが呆れたように言う。
俺は無言で同意するが、だからと言って少女に手を上げる訳にはいかない。優しく地面に下ろすと、すぐに距離を取って【
「ガァアアア!!」
【
「やっぱり習性は同じだね」
【
『喰らえ! 【勇者の鎧――
攻撃に合わせてガイが叫んだ。
相手の力を利用し何倍にも威力を高める。それは数多の格闘技や競技で用いられる人間の技術。
当然、カウンターなど受けたことなど無いのだろう。自身の攻撃の勢いをそのまま身に受けた【
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