第5話 レクリエーション

 翌日。いつもの日課をこなし、朝食を作って食べ、制服に着替えて2人と一緒に登校する。やはり昨日と同じで遠巻きに見られながらひそひそと話されている。こればっかりは仕方ないし、昨日より気にならなくなったとは言え、やはり気持ちのいいものではない。そんなことを考えていると、学校に着いたので、上履きに履き替えて教室へと向かう。

 教室に入り、色々と準備を済ませて、後から入ってきた亮太と雑談をしているとチャイムが鳴り、沢尻先生が入ってきた。


「よーし全員いるなー。今日はみんなも知っている通りレクリエーションを行う」


 そう言って沢尻先生によるレクリエーションの内容が説明された。


「まず、体育館に行ってもらう。そこで4人1組になってもらって学校を回ってもらいながら、各所にある文字を探して並び替え、この学校のどこかにある鍵を見つけて体育館に持ってくればクリアだ。早くもってくれば、それだけ豪華な賞品がもらえる。気合いいれろよ~」


 なるほど。校舎の中身を知ってもらいながら交友関係の幅を広められる一番オーソドックスなタイプだな。だが少し気になったことがあるので手を挙げた。


「先生、質問していいですか」


「いいぞ。なんだ?」


「他のクラスの人と組むのはありですか?」


 俺が気になったのはそこだ。もしありなのであれば、面識のある詞音と一緒に回りたい。流石に俺達3人の輪の中に入るのは面識がない人には難しいだろう。


「全然ありだぞ~。他に誰か聞きたいことがあるやつはいるか~?いないな。よし、じゃあ早速体育館に行くから廊下に番号順に並べ~」


 先生がそう言ったのを皮切りに続々と廊下に並び、そのまま体育館へと向かう。

 体育館に着くと、そこには十数人の教師たちが壇上に並んでいた。どうやら俺達が最初だったようで、その後から続々と他のクラス――336人の計8クラス――が入ってくる。最後のクラスが整列し終えた後、学年主任の先生が話し始めた。


「皆さんこんにちは。今日はこの学校のことを知ってもらうため、そして交友関係の幅を広めてもらうためにレクリエーションを企画しました。内容は各クラスの先生から聞いていると思うので早速始めていきたいと思います。では皆さん、頑張ってください」


 学年主任がそう言うと、皆が一斉に動き出した。すごい気合いの入りようだなと思いながら俺も二人の所へ向かった。

 

「お、やっと来た~」


「遅いわよ。さっさと他の人に声をかけましょ」


「分かってる。そのことなんだが、あと一人は詞音でいいと思っている。お前らはどう思う?」


「いいんじゃない~?」


「そうね。いいと思うわ」


「決まりだな。なら早速詞音の所に行くぞ」


 そう言って詞音の所に行くと、積極的に声をかけるも断られてしまって落ち込んでいる詞音の姿があった。


「随分と難航しているようだな」


「あ、怜さん!それに蓮さんと美月姫さんも!」


「昨日ぶり~」


「その様子だとどこにも入っていないようね」


「そうなんですよ。私が声をかける人は皆、既に四人一組になってしまっているのです」


「そうか。なら俺達と組まないか?」


「え、いいんですか?」


「そのためにきたんだよ~」


「こちらも三人しかいないからあなたが入ってくれると助かるのよ。それで?入ってくれるの?」


「もちろんです!よろしくお願いします!」


「決まりだな。なら早く行くぞ。俺達以外全員もうとっくに始めてるからな」


 見渡してみると、そこには教師陣と俺達しかいなかった。


「まあ大丈夫でしょ。俺らがいれば余裕だし」


「それはそうだけど、油断は禁物よ。早いに越したことはないわ」


「そうですね。ではどこから行きましょうか?」


「そうだな…」


 可能性があるのは、美術室・科学室・音楽室・調理室・特別講義室のどれかだ。ベタなとこだと科学室とか音楽室だろうが、意外と選択肢に上がらない教室の可能性もある。ベタか意外、どっちをとるか…。まあそんなことを考えているよりは虱潰しに探した方が速い。ここはベタな科学室に行くにしよう。


「まずはベタな科学室に行くとしよう。それから……うん?なんだ、あれ?」


「うん?どれ?」


「いや、あれ」


 俺がそう言いながらふと周りを見渡していると、体育館の端にある黒い箱が置いてあった。なんだろうこの圧倒的なまでの「貴方の探しているものはこれですよ」感。怪しいな。


「あの黒い箱、どう見ても怪しいんだが」


「ほんとだ~。全然気付かなかったわ~」


「本当ね。とんでもなく怪しいわね」


「取り敢えずいってみましょう」


 そう言われ、黒い箱の側に行ってみると、ほんの少しだけ間があいていた。まさかと思い、上の方を動かしてみると開けられるようになっている。少しずつ開けてみると、中に入っていたのは……


「「「「え?」」」」


 全員がハモるのも無理はない。なぜなら中に入っていたのは、大量の鍵だったのだから。


 





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