第4話 送り届け
高城詞音を送り届けると決め、歩き始めておよそ5分が経過したが、とてつもなく気まずい雰囲気になっている。なぜかというと、道の確認以外の会話がないからだ。
(はぁ…。なんであいつらは一言も喋らないんだ。いつもだったら蓮か美月姫が話し始めて、そのあとから俺が会話に参加するっていう流れだろ…)
そう思いながら俺の左側にいる蓮をチラッと見てみると、ニヤニヤしながら横目で成り行きを見ていた。こいつには期待できそうにないなと思い、右側にいる美月姫の方を見てみると、早く話しかけなさいよオーラをひしひしと感じる。はぁ、仕方ない。話しかけてみるか。
「そういえば高城は何年なんだ?」
「へ!?え…っと、1年です」
「高校?中学?どっち?」
「高校です」
「へぇ~、じゃあ俺らと一緒だね」
「え!?皆さん、私と同じ1年なんですか?」
「そうよ。それとも何?中等部の生徒だと思ってたの?」
そう揶揄うように美月姫が言った。すると、顔をブンブン横に振りながら高城詞音が否定した。
「い、いえ!そんなことは思っていません。ただ、皆さんがあまりにもスマートに対応するものですから、年上の人だろうと勘違いしてしまいました。なので…その…」
そう言いながらあわあわする高城詞音。それを見た美月姫は…
「ふふっ。少し揶揄いすぎたわね。ごめんなさい、高城さん。あなたの反応が面白くてつい、やり過ぎてしまったわ」
反省する様子を1mmも見せずに、一切心のこもっていない謝罪をした。だが、それに気付かない程に純粋な高城詞音は
「いえ、それほど気にしてないので大丈夫です。それよりも、先程から気になっていたのですが、どうして皆さん私のことを苗字で呼ぶのですか?それもさん付けで。同年代なのですから名前で読んでください。さん付けもいりません」
という風に、何も知らずに謝罪を受けとった。それどころか、自分のことを名前で、しかも敬称無しで読んでほしいと言ってきた。
「そうなの?なら、そうさせてもらうわ」
「じゃあ、俺も~」
「そういうことなら俺も」
「はい!っと、着きました。ここが私のお家です。」
そう言って詞音が立ち止まった。そこは、白い壁で覆われた豪邸だった。白い壁は手入れが行き届いていて、汚れ一つなく綺麗だ。その壁に等間隔で埋め込まれた鉄格子からは色とりどりの花が見える。壁の少し奥には、洋風の城にあるような門が構えられている。予想はしていたが、やはり詞音の家は金持ちだったか。
「では、私はここで。今日は助けていただき、有難うございました」
そう言って詞音は俺達に頭を下げた。
「別に大したことはしていない。それよりも、まずは自分の身の安全を確保しろ。今日のことを詞音の両親に伝えて、何らかの策を講じてもらえ。いいな?」
「はい」
「ならいい。じゃ、俺らはもう帰る。また明日な、詞音」
「じゃあね~」
「また明日」
「はい!また明日です!」
別れの挨拶をし終えると、俺達は帰路に着いた。そして軽く雑談しながら、自分の家に帰った。「ただいま」と言いながら入ると、父さんと母さんが一緒に夕飯を作っていた。
「おかえりなさい。怜」
「おかえり。怜」
「ただいま。父さん、母さん」
「もうご飯できるから先に着替えてきなさい」
「分かった」
そう言って自分の部屋に行き、着替えて一階に降りると、もうテーブルの上に料理が皿に盛り付けられていた。
「あら、着替えるの早いわね。こっちも今終わったとこよ」
「よし。じゃあ食べようか」
「「「いただきます」」」
そうして食べ始めると、父さんが俺に質問してきた。
「そう言えば、何で怜は帰るのが遅くなったんだ?」
「あぁ。それはね…」
そう言って俺は、放課後にあった出来事を話した。
「なるほどな。流石俺の息子だ。よくやった」
「ほんとね~。私も鼻が高いわ」
「別に、何も特別なことはしてないよ。ただ人として、当たり前のことをしただけだから」
そんな感じで、色々話しながら夕食を終えた。その後は、明日必要な物を確認して登校用の鞄に入れて、夜の日課をこなし、風呂に入って汗を流し、中1のころからやっている株式投資のための株の変動を見て、読みかけの小説を読んで、ベットに入ってねる。
はぁ、明日は何もないといいな。
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