第2話 流王学園

 私立『流王学園』。勉強はもちろんあらゆる分野で才能を発揮し、好成績を収める生徒が多く在籍し、卒業後は各界でトップレベルの地位に就く、誰しもが一度は入りたいと思う超エリート校だ。

 この学校は珍しく人間性を最重要視していて、普段から善い行いをしていれば、そこそこの頭であっても入れる。逆に言えば、どんなに頭が良くても性格や普段の行いが悪ければ落とされてしまう。

 そんな学校に俺達3人は通うことになった。そして、俺は今絶賛不機嫌中だ。なぜかというと


「ねぇ、みてみてあの人!!」

「なにあの人!?めっちゃイケメンじゃん!!!」

「後ろの人も超イケメンじゃん!」

「女の子も超絶美人だし!」

「すげぇな・・・どこのモデルだよ・・・・・・」

「いや、あんな美男美女のモデル見たことないぞ」


とまぁこんな感じで遠巻きに見られながらひそひそと小声で話されている。


「はぁ・・・。なんでこうなるんだよ」


「わかってたことでしょう?いくら私達が気配を消しながら歩いていてもほかの人達からすればオーラみたいなのが滲み出ているように見えているから、景色の1部にはなれないのよ。こればかりはどうしようもないわ」


「美月姫の言う通りだよ。こういう反応されるのはいつものことだから、割り切って行かないと身が持たないよ」


 確かに。気にしすぎても自分の神経が削られるだけだしな。


「それもそうだな。っと、昇降口に着いたな」


 昇降口に着いた俺達は、昇降口前に掲示されている張り紙でクラスを確認した。


「あ、見つけた。1組だ」


「お、俺も見つけた。お~、俺も1組だ」


「私も1組よ」


「お~。これでまた全員同じクラスだな」


 実は俺達、なぜかは知らんが、小学1年生から中学3年生まですべてクラスが一緒だったのだ。


「このまま3年になるまでずっと同じクラスだったりするかも知れないわね」


「それはあるかもね~」


「そうだな。さて、そろそろ教室に行くか」


 そう言って俺達は教室へ向かった。道中、遠巻きに見られたり、ひそひそ話はされたが、極力気にせずに教室に向かった。

 教室のドアを開けると、今まで談笑していた人達が一斉にこちらを向いて呆然としている。まぁ、こういう反応はよくされるので大して気にせずに黒板に張り出された座席表を確認する。

 座席は縦に7席、横に6席の計42席だ。確認すると、俺の席は窓際の一番後ろ、蓮は3列目の3番目、美月姫は4列目の1番目となった。早速席に着くと、前の人に声をかけられた。


「よう。俺は葛城亮太かつらぎりょうた。亮太でいいぞ。よろしくな」


そう言ってニカっと笑ったこの男は爽やかみたいな言葉が似合うイケメンだった。髪の毛を茶色に染めているが、チャラいといった印象はなく、それどころか爽やかなスポーツマンという印象をこの男からは見受けられる。


「俺は神崎怜。怜でいいよ。よろしく、亮太」


「おう。よろしくな。つかお前すごいな。教室入ってきた時オーラが滲み出てたぞ」


「あぁ、それね。消そうしているんだが、なかなか上手くいかなくてな」


「なんで消そうとするんだ?」


「中学の時、これのせいでよく面倒事に巻き込まれていてからな。今のうちになんとかしておきたいんだよ」


「あぁ~。なるほどねぇ・・・」


そんな軽い雑談をしているとチャイムが鳴り、先生が教室に入ってきた。


「よーし全員いるなー。じゃっ、今から入学式の説明をするぞー」


 そう言って説明し始めたこの女性の先生は、だらしなく白衣をはおり、ぼさぼさの長髪をしていて、気怠げな印象を受ける。ちなみに胸は母さんより少し小さい位だ。後でわかるのだがこの先生の名は沢尻京子さわじりきょうこ先生という名前で、科学の権威で生徒に慕われているらしい。とてもそうは見えないがな。

 説明が終わり、その後入学式を終えて、軽く自己紹介やオリエンテーションをした後、配布物をもらって今日は下校となった。


「じゃあな、怜。また明日」


「ああ。また明日」


 亮太と挨拶を交わした後、俺は2人のもとに向かった。


「じゃ、帰るか」


「うん」


「そうね」


 そうして『流王学園』を後にした。


「しかし意外だったね。まさかあの怜が初対面の人とあんなに仲良さそうにするなんてね」


 帰り道、蓮がいきなりそんなことを言い出した。


「確かにそうだな」


「そうね。あの光景は確かに珍しいものだったわね」


「でしょ~」


 そんな風に雑談しながら帰っていると、目の端に1つの光景が見えた。


「ねえ、あれ・・・」


「ん?」


「どうしたの?」


「あれってさ・・・、ナンパだよね?」


「あ、本当だ」


「そうね。ナンパね」


 そう。男が女をナンパしている場面に遭遇したのだ。しかも、それを認識したので、会話まで聞こえてきた。


「なぁ、いいだろう?ちょっと遊ぶだけだからさ」


「ですから何度もお断りしているじゃないですか!いい加減帰らせてください!」


「そう言わずにさぁ~」


 とまぁこんな感じでしつこいナンパにあっている。ああいうのをみると心底苛立つ。しかも男の方はどちらもどう見ても不良だ。対して女の方は、制服で、不良とは真逆だ。


「しかもあの子、俺らと同じ学校の人だよ」


「まじか・・・」


 確かに、よく見ると『流王学園』の流星と王冠の入った校章が左胸につけられている。


「で?どうするの怜。助けるの?」


「当たり前だろ。困っている人を見かけて、手の届く範囲にいるのに見てみぬふりするのはちがうだろ。同じ高校の人間だったら尚更だ」


「言うと思ったわ」


「それでこそ怜だよね」


「手分けしてやるぞ。俺があの男どもの相手をするから、美月姫はあの女の子を保護して少し遠ざけて。その間に蓮は、警察に連絡して、終わったら美月姫のヘルプに回って。でも近づぎ過ぎないようにな。」


「了解」


「分かったわ」







 

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