第68話 中央大陸の宇宙間ゲート
【358日目 中央大陸 竜の盆地カルデラ湖対岸 午後4時頃】
竜たちが巣くっている岩山に近づく。竜2体は図体が大きいせいで遠くから見てもその形はハッキリと分かる。火竜はティラノサウルス型体長15mほど。
闇竜は恐竜でいうと竜脚類。巨大な草食恐竜型。体長は25m〜30mはありそうだ。
丸々とした巨大な胴体にゾウのようながっしりとした巨大な四本足。尾と首は同じくらい長く伸びて長い首の先には小さな頭が付いている。
体表は全体が薄い灰色で地球のゾウに近い色だ。見た目はあまり強そうではない。火竜のが10倍は強そうに見える。
……竜通信『やあ。火竜アエロステオンくん。久しぶりだね。元気にしてたかい?』
『皇女姉か。我はなんも変わらぬ』
『そっちが闇竜か?』
巨大な草食恐竜型の竜に視線を向ける。
『左様。儂が竜亜神タタウイネアである。貴様が皇女姉か。火竜を殺さないでいてくれたこと。御礼を言わせてもらおう』
ふむふむ。いちおう常識的で人間的な対応は出来るようですね。ではこちらもそのように。
『いえいえ。火竜君は調教しましたからね。御礼を言われるような事ではないと思いますよ。
それであなた方。そのゲートを通って元の世界のお戻りになってはいかがですか。出来るお手伝いはしますよ?』
『境界面の向こうが岩石で埋められておる。向こうに行けないのだ』
『そうなんですか。因みにどうやって岩石で埋められていることを知ったのですか?』
『儂のこの長い首。境界面に頭を突っ込めば向こうの境界面に触ることができる。こうやって目を押しつければ僅かの隙間から岩石で埋められておる事明らかである』
『なるほど。では境界面に向かって闇弾を撃ってください。そうすれば向こうの岩石は消滅しますので。闇弾9から10を20も撃ち込めば竜の身体が収まるほどの空間は出来るでしょう』
『その事は聞いた。本当なのか。ゲートが破壊されたり傷ついたりするのではないか』
『大丈夫です。仮にも時空神が作った究極の神器である宇宙間ゲート。闇弾はおろか時空神の神の力をを用いても破壊はできません。神器が破壊できないこと証明してみましょうか? まずは適当に神器を作りましょう』
ーー光あれーー
明るい日中にも関わらず、周囲は強くて柔らかな光の波動に包まれる。私の差し出した掌の上に光が凝縮していき直径10センチメルトほどの光る球体が出現した。いつものヤツである。
『永久に光り続け、破壊することもできない神器です』
光の神器を足元に置く。闇弾5を起動して光の神器に命中させる。大気を切り裂く破裂音が一瞬鳴り響き直径32cmの球状空間を亜空間に弾き飛ばし消滅させる。
光の神器上部を中心として球状に神器を置いていた岩盤が削り取られた! しかし光の神器はびくともせず。半球状に抉られた岩盤の底に落下して揺れている。
『とまあこのように神の力を用いて作られた神器は魔法や物理攻撃では一切破壊することも傷つけることもできません』
『なるほど。理解した。では儂が宇宙間ゲート境界面に闇弾9を撃ち込んでみよう』
闇竜が宇宙間ゲートに向いて闇弾を撃つ間に一応ステータスを確認しておこう。
鑑定ーー闇竜のステータス!
名前 タタウイネア
種族 真竜(男性)
年齢 8555(身体年齢1555)
体力B 魔力B
魔法 水弾7闇弾9回復5睡眠4
ステータス5暗視4隠密2
探知2魔法防御6念話5飛行8
魔獣調教1竜通信5
身体強化 筋力6持久力6衝撃耐性6
睡眠耐性7麻痺耐性7毒耐性6
反応速度3防御7老化緩和6
神技 時空間操作Kエネルギー操作P
ベクトル操作Q物質創造R
生命体干渉M精神構造干渉K
神域干渉K
称号 竜亜神セイタード(時空)の第1使徒
竜亜神 魔獣調教師
なるほど。火竜アエロステオンとほぼ同じステータス。これならば攻撃されてもなんとかなるだろう。火竜アエロステオンは調教してあるから一応こちらサイドだし。
闇竜タタウイネアは闇弾9を宇宙間ゲート境界面に向けて概ね1秒間隔で撃っている。流石は魔力B。魔力が尽きる気配もない。
宇宙間ゲートを観察する。大きい。というか巨大である。何かの巨大建築物の様な迫力と存在感を感じる。
一番目につくのが直径30mはあろうかという円形のゲート境界面。キラキラと光輝く波打つ水面の様だ。神秘的な美しさがあると言える。見ているとその存在感に吸い込まれそうになる。
その境界面を囲むように漆黒の枠。幅は1mくらいか。
この宇宙間ゲートが岩山の中腹に嵌め込まれるようにして鎮座している。ほぼ垂直に切り立っている岩山の中腹から奥行き10mほどの洞窟というよりも窪みの奥にゲートがあるんだけど、北向き斜面なので日の光は当たらずに日陰となっている。にもかかわらずゲートの境界面は明るい水色に淡く光り輝いて煌めいている。
闇弾9を20発ばかり撃ち込み終わったようだ。
『闇弾の射撃を中止してくれるかい? では次にこれを』
亜空間ホーム開口部を展開。中に手を突っ込んであらかじめ作っておいた「光の神器」を3個と「神器イース大気」を2個取り出す。
まず光の神器を一個づつ順に宇宙間ゲート境界面に向けて投げ込む。ゲート向こうの照明である。入った先が暗いと不便だからね。勿論後で回収するけど。
引き続き神器イース大気を2個。同じように宇宙間ゲート境界面に向けて投げ込む。万が一呼吸出来ない大気だと困るから保険みたいな気休めである。息を止めて向かった方がいいだろう。7000年前がこの竜たちが生存できる環境だった訳だから問題ないとは思うけどね。
一応、神器イース大気が効果を発揮するするであろう時間として20分間ほど待つ。あんまり意味はないかもしれないけれどね。
♢
20分間待機している間。火竜アエロステオンと闇竜タタウイネアは微動だにせず彫像のようにじっとしていた。この辺が人類と精神構造が異なると感じるところだよね。何考えているかわかんないよ。
『さて。超強化カラスたち。冒険者として未知の世界に挑もうとする勇者は居ませんか?』
強化カラスたちに声をかけるも返事はない。調教しているとはいえ自由意思はあるから希望を募ったりするとこういうことになる。今回はせっかく異世界への旅なんだから自発的に行って欲しいので更に説得してみる。
『ーー普段は文字通り烏合の衆の中のただの一羽。個性など何も無く言われたことをただただ機械的にこなす日々』
『しかしこのミッションは違う! このイース世界初の。イース世界の歴史始まって以来最初におこなわれる異世界旅行である! こんなチャンスは二度とない。永久に巡ってこない。今だけだよ?』
周囲を見回して反応を確認する。強化カラスたちは微動だにしない。ダメかーーしかし司祭長が反応していた! 強化カラスへのプレゼンテーションだったのに。司祭長の目がギラギラと妖しく輝いている。
『アリス様。儂に行かせて欲しいのじゃ。老い先短いこの司祭長に行かせてくだされ。火竜アエロステオン殿。向こうの世界の名前はなんと申す? 教えてくだされ』
『向こうの世界は「クレティーシャ」と呼ばれていた。我々真竜の間でな。人類が何と呼んでいたかは知らぬ。脆弱な。何の影響力もない者どもだからな』
『分かり申した。クレティーシャですな。では儂がイース世界初の異世界旅行者。クレティーシャへの旅に向かいますぞ!』
いうが早いか、カルロネ司祭長は「飛行」を発動するやすぐさま宇宙間ゲート境界面に飛び込んだ! 全く躊躇のない、迷いのない動きだ!
皆が境界面の波紋を凝視している。
カルロネ司祭長は30秒後にゲート境界面から姿を現わして戻ってきた。
『ゲートの向こうは上下左右前後が滑らかな岩石で囲まれたトンネル状の広い空間となっておりますぞ! ちゃんと深呼吸もできたのじゃ!』
カルロネ司祭長は世界初の冒険を終えた興奮で目がなお一層、妖しくキラキラと輝いていた。異世界へと突入していきなり深呼吸するとは命知らずな。
「カチャリ」
んん? 何かが外れた? ヤバい!!
反応速度5! アリスが火竜のいる方を振り向くと火弾9を今まさに発射しようとしている!
レベル9攻撃魔法の発動までの時間は僅か32分の1秒。クールタイムも32分の1秒しかない! しかもコイツには反応速度5を与えてしまっている! なぜ調教が外れた!
護衛艦搭載主砲である72mm榴弾砲の破壊力を持つレベル9攻撃魔法火弾9。その初速は秒速900mに達する!
アリスの右20mの位置にいた火竜の火弾9がアリスに放たれた!
しかし火弾9はアリスに到達する前に闇弾6により迎撃された!ハエ男爵だ!
アリスの背後から闇弾6を速射して火竜アエロステオンの火弾9を迎撃するハエ男爵。
ハエ男爵は隠密を発動して存在を秘匿しながら常にアリスの周囲をブンブンと飛び回っているのだ。この様な事態に備えてのことである。
左隣りにいるグレタ少佐、右隣にいるサーラ中尉の闇弾9が火竜の巨大な頭部に命中する! しかし火竜の魔法防御6の効果で闇弾9は闇弾3にまで減衰される!
闇弾3の効果によって火竜の体表直径8cmの球状空間を亜空間に弾き飛ばして消滅させるも火竜の巨体には今一つ効果が弱く致命傷にはならない!
超強化カラス飛行隊からも闇弾9と闇弾8が雨あられと火竜に降り注ぐが致命傷になっていない。
レベル9攻撃魔法は僅か一発でアリス、グレタ、サーラの総魔力の64パーセントを消費する!
64パーセントを消費した彼女たちの魔力残ではレベル8攻撃魔法を1発撃ったら32パーセントを消費してほぼ魔力は枯渇する!
超強化カラスは魔力がグレタ達よりも一段低い者が多数を占めている。既に魔力枯渇させている超強化カラスがほとんどだ!
「魔術阻害空間を緊急展開!」
魔術阻害空間が急速に展開されてあっという間にアリスを守る。その阻害空間を火竜にぶつけて火弾の発射と身体強化を無効にしてやる!!
その時アリスたちの右側から闇竜タタウイネアの巨大な尾が恐ろしい速度で叩きつけられた!
アリス、グレタ少佐、サーラ中尉、カルロネ司祭長の4人は闇竜タタウイネアの尾を叩き込まれ宇宙間ゲートの境界面に吹っ飛ばされてゲートの向こう側へと消えていった。
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