第67話 竜の盆地へ(2)

【351日目 中央大陸 熱帯雨林外縁部 午後4時頃】



 竜の盆地への道のりは困難を極めた。最初の1000kmはサバンナのような草原だった。足元は良くないが街道もあったので順調に移動できたが残りの500kmは熱帯雨林であるうえに道がなかった。しかも川幅300mはありそうな大河が目の前に道を塞いでいる。




「これどうやったら進めるかな? 誰かアイデアある?」



「地図によると竜の盆地から流れ出る大河がこの川のようです。たぶんできると思うんですけど試してみないと分からないんですが。

我々は全員「飛行8」を持っています。「飛行8」は魔力消費なしでの自由落下速度を著しく低下させますから魔力消費なしで「飛行8」を使いながら水の上を走れるのでは?

「飛行4」での自由落下速度は秒速1メルトを超えなかったはず。であれば「飛行8」なら秒速6センチメルトを超えないので試してみる価値あると思います」



「それです! 流石グレタさん。では、カルロネ司祭長。お願いできますか?」


「承知! えい! 」



 カルロネ司祭長は何の躊躇もなく川面に飛び出して走り出した。



「へえー。走れるもんだね。しかも結構余裕っぽいよ? ただし全身水浸しだね。それはしょうがないか。贅沢は言えないね」



『おーい。カルロネ司祭長! 戻ってきて』







「コツはあまり上に跳ばずに前方に小刻みに進むことじゃな」



 司祭長は自慢げに語る。



「なるほど? じゃあカルロネ司祭長の感想を参考にして、各人練習して慣れたら前進を再開しましょう」







 水上走行の練習を終えてグレタさん、カルロネ司祭長、私、妹マルチナ、サーラさんの5人は竜の盆地から流れ出る大河の川面の上を上流に向かって走っている。左から順番での一列横隊である。


 一列縦隊だと蹴りつける水しぶきが後ろの人にぶち当たって大変だからね。


 川面を魔力消費なしの「飛行8」を使いつつ疾走するコツは特になかった。普通に地面を走るように走れば十分に速度は出るし疲れない。


 途中大きな滝が2カ所あったが「飛行1」を使って飛べば何の問題もなかった。


 大河の川面を走り始めてから5日。そろそろ竜の盆地に到着するのではないだろうか。





【356日目 中央大陸 竜の盆地外輪山の切れ目 午前10時頃】



 ようやく竜の盆地の外輪山に到達した。大河が流れ出ている場所は竜の盆地を囲む外輪山が欠けていて巨大なカルデラ湖から大河の源流となって流れ出ている。で。火竜と闇竜の奴らはどこにいるのか。たまにはイースに聞いてみよう。



……神託 イース こちらアリス


……こちらイース どうしました?


……いま中央大陸竜の盆地を囲む外輪山の切れ目 大河が流れ出ている源流地点にいる 火竜 闇竜たちはどのあたりにいるか 教えてくれ


……そこからカルデラ湖を突っ切って湖の反対側ですよ ホントに行くんですか? あいつ等ヤバいですよ


……このイース世界の人類の守護者 亜神(時空)アリスに不可能はない あの竜ども 見事宇宙間ゲートを通して別の宇宙に追放してくれる


……了解しました 吉報をおまちしていますよ


……待っていろ……神託終了



「みんな。女神イースに聞いたら火竜、闇竜はこのカルデラ湖の反対側に巣くっているらしいよ。今日のところはここでキャンプして明日の朝に進もう。地図で見ると概ね200キロメルトあるから朝出て途中の島で一泊。翌日の夕方に着くと思うよ」


「分かりました。そうしましょう。早めに休んで疲れを取りましょう」


「はい。ではマイホーム開口部展開! カルロネホームの開口部も展開!」



 司祭長に専用のホームを宛がったのです。闇弾を使うような仮想敵がいるところでは亜空間ホームは怖くて使えないからね。


 食事はグレタさんとサーラさんが簡単に作ってくれる。基本はパスタとスープである。こんな人跡未踏地の強行軍で暖かいパスタが食べられることに感謝です。





【358日目 中央大陸 竜の盆地カルデラ湖 午後3時頃】



 カルデラ湖面の走行を開始して2日目。カルロネ司祭長、グレタさん、私、妹マルチナ、サーラさんの4人は竜の盆地にある巨大なカルデラ湖の上を南に向かって走っている。この2日間で既に180kmは進んでいると思う。


 隊形は若干修正されていてグレタさんを頂点とする逆V字型隊形。渡り鳥にみられるVフォーメーションです。日本語でいえばカタカナの「へ」の字隊形?


 横一列だと先頭走者がいないため進行方向が安定しなかった。そのためか川面を走っている段階で割と早めに自然とこうなった。軍用機の編隊飛行の手法でもあるからなんらかの合理性があるんでしょう。



 この巨大なカルデラ湖。大きさは地球のアフリカ大陸にあるビクトリア湖に匹敵するのではないだろうか。水深は深そうだけど、湖のあちこちに島がある。休憩するときは草の生えていない岩石質の湖岸を選んで休む。







 おそらくあと10kmほど走行すれば対岸に到着すると思われる。


 既に火竜と一緒に先行させて闇竜を監視させている超強化カラス2個飛行隊にコンタクトをとって、2個編隊4羽に迎えにこさせた。今はその4羽の先導で前進している。


 超強化カラスの報告によると岸からおよそ5kmの地点に大きな岩山があって、その中腹に空いている巨大な洞窟のなかにゲートが収まっているらしい。


 いちおう、メンバーのステータスを確認しておく。



名前 マルチナ 

種族 人(女性) 

年齢 15  体力G  魔力F

魔法 闇弾9水弾7光弾7土弾7風弾7

   火弾9恐怖9嘔吐9悪魔通信5

   竜通信5ステータス5

   暗視5遠視5隠密5浄化5

   探知5魔法防御6念話5飛行8

   睡眠5魔獣調教1

身体強化 筋力5持久力5衝撃耐性5

   睡眠耐性7麻痺耐性7毒耐性6

   恐怖耐性9嘔吐耐性9

   反応速度5防御7老化緩和6

称号 亜神(時空)の一部となっているマルチナの分身(劣化)

   魔獣の調教師



名前 マルチナ・アレキサンドライト

種族 人(女性)

年齢 15  体力 G  魔力F

魔法 水弾7光弾7土弾7風弾7火弾9

   闇弾9回復5ステータス5

   暗視5遠視5隠密5浄化5結界5

   探知5魔法防御6念話5飛行8

   睡眠5神託5神楽5動物調教5

   魔獣調教1悪魔通信5

身体強化 筋力6持久力6衝撃耐性6

   睡眠耐性7麻痺耐性7毒耐性6

   恐怖耐性9嘔吐耐性9反応速度5

   防御7老化緩和6

称号 アレキサンドライト帝国第1皇女

   魔獣調教師

   動物の王

   亜神(時空)アリスの聖女



名前 グレタ・アルタムラ

種族 人(女性) 

年齢 35(身体年齢35)体力G魔力F

魔法 水弾7光弾7土弾7風弾7火弾9

   闇弾9回復5ステータス5

   暗視5遠視5隠密5浄化5結界5

   探知5魔法防御5念話5飛行8

   睡眠5神託5動物調教5魔獣調教1

   悪魔通信5

身体強化 筋力6持久力6衝撃耐性6

   睡眠耐性7麻痺耐性7毒耐性6

   恐怖耐性9嘔吐耐性9

   反応速度5防御7老化緩和6

称号 マルチナの侍女頭

   亜神(時空)アリスの第1使徒

   亜神アリス軍団少佐

   動物の王 魔獣調教師



名前 サーラ・ビアンコ 

種族 人(女性) 

年齢 21(身体年齢21)体力G魔力F

魔法 水弾7光弾7土弾7風弾7火弾9

   闇弾9回復5睡眠5ステータス5

   暗視5遠視5隠密5浄化5結界5

   探知5魔法防御6念話5飛行8

   神託5魔獣調教1悪魔通信5

身体強化 筋力6持久力6衝撃耐性6

   睡眠耐性7麻痺耐性7毒耐性6

   恐怖耐性9嘔吐耐性9

   反応速度5防御7老化緩和6

称号 ビアンコ男爵家長女

   ジェダイト公国軍中尉

   亜神(時空)アリスの第3使徒

   亜神アリス軍団中尉

   亜神アリス軍団士官候補生指導官

   魔獣調教師



名前 ルカ・カルロネ

種族 人(男性) 

年齢 63 体力G 魔力E

魔法 水弾7光弾7土弾7風弾7火弾9

   闇弾9回復5ステータス5

   恐怖9、嘔吐9

   暗視5遠視5隠密5浄化5結界5

   探知5魔法防御6念話5飛行8

   睡眠5神託5動物調教5魔獣調教1

   悪魔通信5竜通信5

身体強化 筋力6持久力6衝撃耐性6

   睡眠耐性7麻痺耐性7毒耐性6

   恐怖耐性9嘔吐耐性9反応速度5

   防御7老化緩和6

称号 カルロネ伯爵家当主

   魔術研究本部副本部長

   魔術の鬼

   亜神アリスの司祭長(邪 微小)

   動物の王 魔獣調教師






【358日目 中央大陸 竜の盆地カルデラ湖対岸 午前9時頃】



 昨日は念のために湖岸で一泊して休息をとった。


 ここから5kmとはいえ道なき道。背の高い草と木が密集しており徒歩では10mも進めない。やむを得ず「飛行」を使い空中を機動する。


 飛行1は最大速度秒速2m。魔力消費は最大MPの時で42分の空中機動が可能。理屈上は7km余りを機動できるがそうすると魔力がゼロになってしまう。



 飛行1で1kmほど前進するたびに休憩して魔力回復を図る。






 そうして夕方には例の竜が巣くう岩山に到着した。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る