第49話 アレキサンドライトへ


【58日目 ジェダイト公都南方95キロ マリアーニ城塞 領館 午前8時】



 朝起きてから朝食をグレタさんが作ってくれた簡単なパスタを食べているとクレリチ子爵率いる使節団一行と使節団に同行していた中央方面軍派遣隊がマリアーニ城塞の領館にやってきた。


 強化カラス飛行隊が見つけてくれたので内側から閉ざされていた門をフィリッポ曹長に開けてもらって城塞の中に誘導する。城塞の中に入ってきたクレリチ子爵の応対をグレタさんがしてくれる。




「おはようございますクレリチ子爵。マルチナお嬢様は無事取り返しましたよ。危ないところでした。マリアーニ伯爵が拷問しようとしていましたからね。許しがたい蛮行です」


「そのことなんですが中央方面軍派遣隊の隊長さんがお話があるそうですよ。隊長こっちにどうぞ」



 中央方面軍派遣隊の隊長さんがやってきた。




「ああ、お早うございます。グレタ女史。マリアーニ伯爵がマルチナ皇女拉致監禁の大罪を犯したとのこと。本当ですかな?」


「本当ですよ。そこに転がっている伯爵と捕縛している騎士どもをきっちり尋問すればハッキリするでしょう。あなた方を襲撃したものも居ると思いますよ?」


「なるほど。分かりました。ではお手数ですが調査が終わるまではここマリアーニ城塞から出ないでいただきたい。よろしいですね」


「それはいつまででしょうか? 私たちは早く出発したいのですよ」


「いつまでというのは分かりませんね。あなたたちは証人ですから居なくなっては困ります。そんなに遅くならないようにしますよ」


「まあ分かりました。早くしてくださいね。それでは」









「アリス様。中央方面軍派遣隊長とやらですが、我々をここに釘付けにしようとしているようですね。ステータス見たら亜神(火竜)の信者って表示されてますから。どうしましょうか?」



 ビックリです。私もステータスをチェックしたから間違いない。ジェダイト中央方面軍の派遣隊長は亜神(火竜)アエロステオンの信者だった。



「ジェダイト公国は火竜の信者にかなり浸透されているということだよね。この調子だと取調べを名目にして足止めされてマリアーニ伯爵の件も我々が悪いことにされて逮捕されかねないかも。

どうにかしてマリアーニ領から離脱してアレキサンドライト帝国に行くべきか。グレタさん地図あるかな」





 私、グレタさん、巫女エミリーさん、マルチナ皇女、フィリッポ曹長の5人で地図を囲む。





「この地図の感じからすると、いっそロードナイトまで南下してアンバー高原を東に進むのが一番安全かもしれないね。

そうするとシリトンにいるサーラさん、キアラさん、ラウラさんと合流もしやすい。カルロネ司祭(邪)のサポートも最後まで受けることが出来るし。

フィリッポ曹長、知ってたら教えて。アンバー高原を東に進むとオーバル公国支配領域を経由しないでオプシディアン公国支配領域に到達できる?」


「確か行けるはずだけど魔境を通らないといけなかったような気がする。どんなとこだったかなー。思い出せないな」


「相変わらず使えない男ですね。魔境程度であれば我々にとってなんの障害にもなりません。

シリトン、ロードナイトを経由してアンバー高原に入って東進。アンバー高原のオーバル公国外縁部を通って魔境を突破。オプシディアン公国支配領域に抜けましょう。

私とキアラが洞窟で待機していた時に伝令が予定していたルートです」


「よし、サーラさんに神託で今の案をぶつけて意見を聞いてみよう。みんな、ちょっとまってね」




……神託 第3使徒サーラ アリスです






♢♢♢♢






 キアラは心配していた。母親のグレタがマルチナお嬢様のお迎えにジェダイト公都に向かったものの母グレタの緊急事態の宣言によってアリス様は神楽による瞬間移動で遥か200キロル北方のマリアーニ領に転移した。



 敵は亜神(火竜)アエロステオンの信者であるマリアーニ領主。マルチナお嬢様が拉致監禁されている厳しい状況でアリス様と母グレタの活躍でマルチナお嬢様救出を果たした。


 その際にグレタの動物調教、とりわけ強化した100羽のカラス飛行隊が決定的な役割を果たしたことを聞き、誇らしくもあり不安にもなった。


 竜の信者共がシリトンの宿屋「高目」を襲撃してきたら迎撃戦力が足りないのではないだろうか。アリス様に強化カラスの増産を願い出ないと。




 マルチナお嬢様が亜神(火竜)アエロステオンの信者に襲撃されて拉致監禁されたと聞いて女神イースは真っ青になって亜空間ルームに立てこもってしまった。アリアンナとノエミも一緒に引き込まれて出てこなくなった。


 この行動は過剰な反応に見えるけど妥当とも思える。サーラさんは大袈裟と感じているようだけどアタシはそのくらい用心深くないと生き残れないという女神イースの行動はもっともだと感じた。なにしろこの人は5000年もアレキサンドライト迷宮に隠れ住んでいたんだから。




 そして今朝。強化カラス1号にシリトン市街の巡視をさせていたところ発見したのだ。




 亜神(闇竜)タタウイネアの信者


 この称号を持つ傭兵らしき二人組を!




 このことを第3使徒サーラさんと話し合っているときにアリスからの神託がサーラに繋がった。









「キアラちゃん。アリス様からね、ジェダイト支配領域には竜の信者が多数いて危険だから速やかにシリトン、ロードナイトを経由してアンバー高原に入って東進してアンバー高原のオーバル公国外縁部を通って魔境を突破。オプシディアン公国支配領域に抜けましょうって。

マリアーニ伯爵の件もアリス様が悪いことにされて逮捕されかねないから至急マリアーニ領から離脱してアレキサンドライト帝国に脱出するって。

それで昨夜からイース様が亜空間ルームに立てこもってる件とか、キアラちゃんがここを襲撃されることを恐れている件とか亜神(闇竜)タタウイネアの信者が徘徊しているのを見つけた話したらこっちに神楽で来るって。ああ、来たかも」





 ラウラさんの目の前に光の波動がパッと広がったと思ったらアリス様がいた!




「みんなごめんね、心配かけちゃった。私は亜神(火竜)アエロステオンや亜神(闇竜)タタウイネアのことを甘く見ていたみたい。

グレタさんたちはマリアーニ城塞でマイホームとフィリッポホームに立てこもってもらったから安全だよ。強化カラス隊100羽の警戒監視と護衛もあるからね。

キアラさん、シリトンのカラス飛行隊を強化しよう。窓の外で密集隊形で飛行させられる?」


「うん大丈夫。カラス飛行隊集合せよ!」



 危機感を持っていたため全機を近傍に待機して警戒監視させていたのですぐに集まってくれる。



「今回から強化カラス第2形態だよ。我々基準から闇弾サニタイズ基準で強化するよ!

ーカラス第2形態ー転写 強化!」



名前 NO NAME ×100羽くらい

種族 カラス(男性or 女性) 

年齢 1〜5歳 体力ForG魔力ForG

魔法 水弾4光弾4土弾4風弾4火弾3

   回復5ステータス5神託5

   暗視5遠視5隠密5浄化5結界5

   探知5魔法防御5念話5飛行5

身体強化 筋力5持久力5衝撃耐性5

   睡眠耐性5麻痺耐性5毒耐性5

   反応速度5防御5調教耐性3

   思考強化5老化緩和5

称号 キアラの眷属 



『よし、サブマスターアリスが命ずる! 竜の信者共を発見したら神託でアリスに通報せよ! その後はその信者を眠らせて密着しなさい。そうすればアリスの力によって竜の信者の称号を消せるかもしれないから。

後のことはキアラさん任せます。周囲を警戒監視させてね』





 竜の信者という称号。これの効果を神さま知識で検索したところ見つけた。


 信者となった竜の命令に逆らえなくなるという恐ろしい効果だ。そしてこれは神託で繋がった者と対象者を接触させて対象者の意識が無ければ強制的に称号 ○○の信者 を付与できる。だから同じことが私にもできるから竜の信者には私の信者として上書きできる。    





 試しにマリアーニ城塞にいる亜神(火竜)アエロステオンの信者だった中央方面軍派遣隊長。コイツを亜神(時空)アリスの信者に上書きしてやったら出来てしまった。この人私の言いなりだよ。ごめんね。ちゃんと事件捜査してね。


 地道だけど竜の信者を見つけてこれを繰り返していくしかない。


 強制的な信者ではなく自発的な信者には上書きできない。そのような信者は面倒だが私が出向いて魔術を白紙化するしかないだろう。竜の信者であることを理由として殺したくはないから。


 以上のことを説明した後、女神イースとその巫女アリアンナとノエミさんに亜空間ルームから出てきてもらった。





「イースさん怖がらせてごめんね。亜神(火竜)アエロステオンや亜神(闇竜)タタウイネアのことを甘く見ていたみたい。

コイツらの信者がこの大陸はおろか中央大陸やその他の大陸にもかなり居て、竜の指示に逆らえなくて私たちを攻撃してくることが分かった。

まずイースさん達を強化するよ。えーっと

ー転写 強化 イース! そして巫女!」



名前 イース

種族 人(女性) 

年齢 6011(身体年齢12)体力G魔力D

魔法 水弾7光弾7土弾7風弾7火弾6

   闇弾5回復5睡眠5ステータス5

   暗視5遠視5隠密5浄化5結界5

   探知5魔法防御6念話5飛行5

   神託5睡眠5魔獣調教1

身体強化 筋力7持久力5衝撃耐性5

   睡眠耐性7麻痺耐性7毒耐性5

   反応速度5防御7老化緩和6

神技 時空間操作Pエネルギー操作M

   ベクトル操作Q物質創造R

   生命体干渉K精神構造干渉K

   神域干渉K

称号 亜神  魔物の調教師



名前 アリアンナ・クレメンティ

種族 人(女性) 

年齢 15  体力G  魔力F

魔法 神楽5回復5睡眠5ステータス5

   暗視5遠視5隠密5浄化5結界5

   探知5魔法防御5念話5飛行5

   神託5

身体強化 筋力5持久力5衝撃耐性5

   睡眠耐性5麻痺耐性5毒耐性5

   反応速度5防御5

称号 クレメンティ伯爵家次女

   教皇庁大聖堂の巫女

   女神イースの巫女



名前 ノエミ

種族 人(女性) 

年齢 15  体力G  魔力F

魔法 神楽5回復5睡眠5ステータス5

   暗視5遠視5隠密5浄化5結界5

   探知5魔法防御5念話5飛行5

   神託5

身体強化 筋力5持久力5衝撃耐性5

   睡眠耐性5麻痺耐性5毒耐性5

   反応速度5防御5

称号 教皇庁大聖堂の巫女

   女神イースの巫女



「それからこのスイートのリビングにサーラホームを設置しておくから。普段はイースさんもサーラホームに入っていて。狭くて悪いけど。中のベッドをセミダブルにしておくからなんとかして寝て? 亜空間ルームは闇弾の攻撃の直撃を受けてしまうから避けた方がいいと思う。

こんな所かな。何か不安なこととか無いかな?」



「アリス様ありがとうございます。アタシ本当に昨晩は怖くて。5000年も前のことなのに思い出しちゃった。情けないな〜」


「巫女アリアンナからもお礼を。ありがとうございます。この恩恵、アリス様、イース様のために使います」


「ノエミです。アタシもです」


「うん。よろしくお願い。でね。危険だからロードナイトを経由してアンバー高原に入って東進。アンバー高原のオーバル公国外縁部を掠めて魔境を突破。オプシディアン公国支配領域に抜けて帝都に行こうと思うんだ。

グレタさん達がマリアーニ城塞に居るから特急で走ってここまで来るから待ってて? 一緒に行こう」


「分かりました。待ってますのでお願いしますねアリス様」


「よし、サーラホームを改造するよ」









 1時間ほどかけてセミダブルベットに変更した。その間にシリトンカラス隊から神託で竜の信者を見つけた報告が11件。


 いずれも傭兵風の男たちで傭兵団「竜の息吹」のメンバーだ。如何にもな名前を付けてる。


 そうだ。カルロネ司祭(邪)には任務を与えようと思っていたんだ。忘れないうちに神託しておこう。




……神託 カルロネ司祭よ アリスだ


……ははー カルロネでございます


……ご苦労 息災か


……はい いただきましたカラスとフクロウ 存分に使いこなすべく 研究しております 年甲斐もなく熱中いたしました


……それは上々 ところで 統合情報本部の連中どうした


……ジェラルディ首席情報官以下はすでに公都に帰還 ワシだけが皇女姉君のご機嫌を伺うという名目で残っておりました


……なるほど では司祭には次なる使命を与える ジェダイト公都に戻り魔術研究本部や統合情報本部のメンバーなどを亜神アリスに帰依させるのだ たった今からはお前はアリスの司祭長を名乗るが良い ジェダイト公都における信者はお前に任せる 頼むぞ いずれ神殿ができればお前は神官長を名乗ることを許そう いづれであるがな 


……ははー 司祭長 確かに拝命致しましてございます 


……それではお前に恩恵を与える 

  ー転写! 司祭長バージョン!




名前 ルカ・カルロネ

種族 人(男性) 

年齢 63 体力G 魔力E

魔法 水弾5光弾5土弾5風弾5火弾5

   闇弾5回復5ステータス5

   暗視5遠視5隠密5浄化5結界5

   探知5魔法防御5念話5飛行5

   睡眠5神託5動物調教5

身体強化 筋力5持久力5衝撃耐性5

   睡眠耐性5麻痺耐性5毒耐性5

   反応速度5防御5老化緩和5

称号 カルロネ伯爵家当主

   魔術研究本部副本部長

   魔術の鬼

   亜神アリスの司祭長(邪 微小)

   動物の王



 お。亜神アリスの司祭長(邪 微小)ってなってる。司祭長は良いとして、(邪)だったのが(邪 微小)に変わっているよ?


 やはり褒めて使うという基本を守ったからだろうか。結構ぞんざいに扱った気もするがこれからはもうちょっと優しくしようかな。




……司祭長よ 恩恵の力を奮って司祭長として励め 老化緩和を付けたので起動させておけ お前の寿命は3000年近く伸びるはずだ それから動物調教を付けたので カラスとフクロウを片っ端から調教しておけ 神託で 強化すれば強大な力になるであろう


……ありがとうございますアリス様 司祭長としての使命 果たしてみせまする


……うむ 時に司祭長 中央大陸にいる 亜神(火竜)アエロステオンや亜神(闇竜)タタウイネア と申すもの共のこと知っておるか


……彼の地に 火竜 闇竜 が居ること知っておりましたが詳しくは 名前も初めて聞きましてございます 


……うむ コヤツら 我の敵となった コヤツら竜の信者がこの大陸に相当数浸透している ステータスで分かるから発見次第通報せよ 強化カラスを活用せよ


……ははー お任せください


……よしそれでは公都へ向かうが良い 頼むぞ……神託終了





 はあ。疲れた。今度から普通にしゃべろうかなあ。



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