第48話 火竜アエロステオン

【57日目 ジェダイト公都南方95キロ マリアーニ城塞領館 午後   】




 マリアーニ城塞ではまだやることがある。


 まず、亜神(火竜)アエロステオンの信者たちから魔術を取り上げておかないといけない。



『強化カラスたち! 領館の中、城砦の中の建物、領都の中にいる亜神(火竜)アエロステオンの信者をすべてこの領館の前に集めてきて!』



 強化カラスたちは四方八方に飛んでいった。2羽~3羽で協力すれば筋力を強化して人一人くらいは運べるだろう。



 「両手両脚を弾き飛ばして達磨にしたマリアーニ伯爵の記憶をサルベージしてみよう」



ー記憶サルベージ!







「ふう。亜神(火竜)アエロステオンの信者って、このイースリア大陸をはじめとして中央のセントリア大陸、西のウエストリア大陸、南西のサウリア大陸にもいるんだって。ここイースリア大陸では各国に数グループずつはいる。グループの名前や所在地などの情報はお互いに知らされていないので分からない。参ったね。そんなことになっているとは。なんでそんなにたくさんの信者を作ったのかはこの伯爵も知らないみたい」


「このジェダイトにも複数のグループが居るということですか」


「そうみたい。あと、闇竜はタタウイネアって名前らしい。こいつの信者も世界中に散らばっているってさ。どうしたものか」


「アリス様、さっきは中央大陸に行って亜神(火竜)アエロステオンを討伐するとおっしゃっていましたがどうされますか?」


「うん。世界中に火竜と闇竜の信者がいるならいつ奇襲攻撃されるか分からないからこんな危険な奴は討伐してしまいたいのは山々なんだけど。火竜と闇竜の不意を突いて奇襲できれば安全に討伐できると思うけどこっちの行動が竜達に漏れていて奇襲的先制攻撃ができないなら逆に危険かもしれない。中央大陸は敵のホームグラウンドだから。その辺を考慮しないと。危ない橋は渡りたくないから」


「そうですね。まずはマルチナお嬢様をアレキサンドライト帝都に帰還していただいて、安全を確保するのが良いかと」


「そうだよね。この伯爵なんだけど今日の襲撃の結果を報告する予定だったらしい。それで、この伯爵の神託を使って私が伯爵に成りすまして亜神(火竜)アエロステオンと会話することが出来そうなんだよね。

伯爵から報告がないと怪しまれるはずだしこの伯爵を放置しておけば異常があったとバレてしまうならいっそのこと火竜と直接話をしてみようかな」


「そんなことが出来るんですか。危険じゃないんでしょうか」


「危険性は無いと思うけど、直接話す内容をどうしようかな?」






 火竜と直接話す場合のことを色々考えているうちに30分くらい経ったので火竜の信者がどの程度集まったのか確かめてみることにする。



「30分ぐらいたったから領館の前に出て状況を確認してみようか。伯爵の記憶サルベージによると、伯爵配下の火竜の信者は24名。襲撃現場の3人は既に魔術を白紙化しておいたので残りは21名。この城塞に入って1名、領館に入って1名を白紙化したのであと19名残っているはず」


「いち、に、さん、  ー ー  15、16名ですね。あと3名です」


「うん。一応ステータス確認しよう。ステータスの変な奴はいないね。全員火竜の信者だ。まとめて。  ー魔術 白紙化!」



『強化カラスたち! 引き続き領都、更に領都外延部に検索を広げて! それから城塞内の人には改めて睡眠をかけてちょうだい』









 夜の9時まで待ったが火竜の信者があと2名足りない。



「グレタさん、巫女エミリーさんが心配だから連れてきてくれないかな。フィリッポチームも一緒に。悪いけど。私はここで待機していて火竜の信者の魔術を白紙化しなきゃならないから」


「分かりました。一時間もかからず行って帰ってこれるでしょう。行ってきます」









 夜の10時になっても残りのの2名は見つからない。この2人がいつ火竜アエロステオンに神託を使って異常を報告するか分からない。そうなったら伯爵に成りすます手が使えなくなる。だったら使えなくなるその前にこっちで使ってしまうか。



「亜神(火竜)アエロステオンと話をしてみよう」




……神託……


……亜神(火竜)アエロステオン様 マリアーニ伯爵です




……アエロステオンである どうした


……皇女マルチナを捕らえて尋問した結果です


……述べよ


……マルチナ皇女は皇女姉のことを知らないとのことです


……拷問したのか?


……はい 両手足をすべて切り捨てましたが知らないと


……そうか ではもうよい 皇女は処分せよ




……アエロステオン様 皇女姉を調べていかがなされるのですか


……お前には関係ない 詮索するな


……関係はある 私は皇女姉について知っている


……何を知っているか 


……どこから来たのか これから何をしようとしているのか その他にも色々と知っている


……では 話せ




……皇女姉を調べていかがなされるのですか 交換です


……信者は我の望みをかなえる者たちだ 信者から除名して追討部隊を差し向けるぞ


……そんなものは怖くない 信者から除名するなら 逆に皇女姉に味方してやる アエロステオン様の棲み処を皇女姉に教えてやろう




……なにが知りたい


……皇女姉をどうするつもりだ


……闇竜タタウイネア様の指示だから我は知らない


……火竜アエロステオン様と闇竜タタウイネア様はいつ何処から来たのか?


……7000年前に こことは別の世界から来た


……なぜ来たのか




……皇女姉のことを話せ


……こことは違う世界アースから来た


……それはアンバー高原の石碑に書いてある 違う情報を


……アースに帰るのが目的だ 火竜アエロステオン様と闇竜タタウイネア様はこの世界になぜ来たのか




……竜神セイタード様に命ぜられて 第1使徒闇竜タタウイネア様と 第2使徒の我が露払いでやってきたのだ 皇女姉は何の神なのか


……皇女姉は時空神であるとのことだ 竜神セイタードは生きているのか 


……時空神か 我では勝てないかもしれぬな 竜神セイタード様は生きてはいないだろう ゲートは生きているのにこっちにこられないからな 皇女姉は我々と敵対するか


……敵対はするつもりはないがマルチナ皇女を拉致したことは許せない そちらこそ敵対的で攻撃的ではないか お互いに不干渉で約束できるならしても良い


……我としてはそれでいいが 闇竜タタウイネア様は同意なされないだろう マルチナ皇女を拉致させたことは謝罪する 




……お前たち なぜもとの世界に戻らない


……ゲートの向こうを多分岩石で塞がれた 我々では戻れない 竜神セイタード様からのゲートを死守せよとの命令が有効である ゲートの守りを離れることはできない




……お前たちは皇女姉とあくまでも敵対するのか


……闇竜タタウイネア様は、竜神セイタード様から、この世界の神は発見次第1年以内に殺害するよう申し付けられている


……お前は申し付けられていないのか


……我は申し付けられていない ゆえに関係ない だが闇竜タタウイネア様を止めることもできない 闇竜タタウイネア様から頼まれれば聞くことにしている


……なぜ1年以内に殺害するのか


……1年たったら強くなるからだと言われている 強くなる前に殺害するのだ 




……皇女姉は強いぞ この話を聞いたら お前らを殺しに行くかもしれないな


……時空神なら強いだろう ただし弱いということも知っているぞ 我ら真竜とは違って依り代が人類なら特に


……お前たちには分からないだろう 時空神の強さを


……知っているとも 竜神セイタード様は時空神であったのだからな 強靭な真竜の依り代を持っていても恐らく現地土着神の奇襲で滅びた 脆弱な人類の依り代ならさぞかし容易に滅びることだろう




……不干渉を約束できないのか


……我は約束しても良いが闇竜タタウイネア様は約束しないだろう おまえは皇女姉だな 我らを殺したいなら中央大陸に来るがよかろう 


……神託終了





 はあ。疲れてしまった。情報が多すぎる。とりあえず、マルチナさんの手を握ってみる。あー落ち着くわあ。マルチナさんったら神託している間ずーっと私の左袖の端を右手でチョンと摘まんでてくれてめちゃくちゃ可愛いんですけど!









 火竜アエロステオンと神託通話をしている間にグレタさんが巫女エミリーさんとフィリッポ曹長のチームを連れてきてくれた。グレタさんは使節団の代表にマルチナ皇女はマリアーニ領館で監禁されているところを発見救出したことを伝達してくれていた。ありがとうグレタさん。



 8人分の夕食としてピザを5枚出して食べる。



 寝床は、まずフィリッポホームを出してやってフィリッポ曹長チームに使ってもらう。あとは好きに寛いでもらいましょう。


 サーラホームには悪いけどエミリーさん一人で。中で繋がってるから寂しくはないよね。


 マイホームの2階層に私、グレタさん、マルチナさんの3人で寝る。いやこんな日が来るとは。マイホームの内径は6.9mまで拡張できてたんだよね。ベッドも4つ設置できます。


 今日はもう遅いのでお休み。



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