第36話 ロードナイトの風(4)


【39日目 午後3時半頃 シリトン】




 俺はパーティメンバーのいる部屋に入っていく。


「おーい。全員集合!まず三階の控室に移動する。守秘義務のためだ。移動開始!」





♢♢





「さて、今皇女姉君殿下に呼ばれて、護衛契約は現時点で終了と言われた」


「えーなんでですか?なんか悪いことしました?ずーっと雇って欲しかったのに」


「そうだよ。報酬は前払いで気前いいし、そもそも皇女姉君殿下からの直接雇用だから箔が尋常無くつくからね。自慢しまくれるのに! それに皇女姉君殿下の可愛らしいことといったら。ずっと側で仕えたかった」


「皇女姉君殿下の可憐なお姿。お側にいるだけで力が湧いてくるし幸せだった。グレタ様やキアラ様もお優しくて素敵。護衛じゃなくても下働きの丁稚ででも雇ってもらえないかな。お給金いりません」


「そうか。お前らそんなに。

とりあえず支払い済み報酬は返還の要なしだから」




「………………」




「それで皇女姉君殿下から新しいオファーがある」


「リーダー? それを先に言ってくれないと。どんなオファーですか」




「実はな。皇女姉君殿下は異世界アースの神アリス様でな。

このイース世界に降臨して受肉なされた亜神アリス様なんだ」




「は?」「ん?」「ふーん」


「おい、ニコラ!お前の今の「ふーん」ってのはグレタ様の逆鱗に触れるからな? 注意しろ!

それからこの話は嘘でも冗談でも無い本当の話だ。

俺は亜神アリス様に魔術の転写をしていただきレベル5魔法「ステータス」を授けられた。

自分のステータスはもちろん、お前たちのステータスも全部見える」


「ホントですかリーダー?」


「本当だって言ってるだろルイージ!」




「リーダー、分かりましたから話を続けてください」


「よし。ジョルジュ。お前が今のところ一番物分かりがいいようだな。助かるよ。

でだな。亜神アリス様はとある使命をお持ちでな。そのためアリス様の護衛に任ずる亜神アリス軍団が編成されている。この軍団員にならないか?というオファーだ」


「ルイージ、軍団員になります!今すぐ!」


「ジョルジュもなりたいです」


「待て待て。軍団員の取り決めがあるんだ。それを見てからでも遅くはあるまい。メモしてきたから皆んなで見てみよう」




亜神アリス軍団員の取り決め


命により第1使徒グレタ・アルタムラ



一つ 今後は亜神アリス様の守護に任ずる亜神アリス軍団員としてアリス様に帰依し勤めを果たすものとする。


一つ フィリッポは曹長

   ニコラは伍長

   ジョルジュは一等兵

   ルイージはニ等兵とする。  


一つ 軍団員としての報酬は支給しない。


一つ 生活や各種行動に必要な経費や装備及び物品は支給する。軍団の事業実行に伴う収入は全て軍団会計に入金される。


一つ 軍団員は亜神アリス様、使徒及び神獣の指示に従うものとする。


一つ 軍団員は使命を果たすための恩恵を得る。退団時は危険な物を消去するが危険で無い恩恵は消去しない。


一つ この他の事は第1使徒グレタの指示による。不在の時は第3使徒サーラ、さらに不在の場合には第2使徒キアラの指示を受けるものとする。




「どうだ?疑問あるか?」


「第3使徒のサーラって誰ですか?」


「それはな。ハッキリとは分からないが多分だぞ。南部方面軍司令部のサーラ・ビアンコ中尉じゃないかと」


「リーダー。俺たちの方が先に護衛で雇用されたのになんで雇用もされていない後からぽっと出の軍人に先を越された挙句に指示されるポジションになっちゃうんですか」



「ううっ。ニコラ、それは申し訳ない。俺の不徳の致すところかも知れない。

だけどサーラ・ビアンコ中尉はお前より歳上だからな。問題ないだろ?」


「リーダーの方がサーラ中尉より歳上じゃないっすか!しかもキアラ様14歳だし」


「え ニコラさん。いつの間にキアラ様の歳を。余り興味ないフリして実は興味深々とか。大丈夫ですか?」


「うっさいジョルジュ!お前こそ恐れ多くも皇女姉君殿下を邪な想いの対象にしているくせに!亜神アリス様となれば神罰がくだるぞ!発言を慎め!」




「で、リーダー。リーダーはどうするんですか?軍団員になるんですか?」


「そうだな。ルイージ。俺は軍団員になろうと思う。軍団員になると恩恵がもらえるからな。退団時も危険な魔術以外は残してくれるらしい。

なにが危険なのか基準が分かんないからハッキリは言えんが、ある程度は残してくれるだろう。アリス様は気前が良いし人もいいからな。

グレタ様には気をつけろよ。怒りのハードルが恐ろしく低いからな。そんな時はキアラ様が助けてくれるかも知れないから日頃から気を配っておけ。

ジョルジュとルイージは入団希望だろ。一緒に頑張ろうな。お前ら最初は一等兵とニ等兵で一兵卒だけど認められれば下士官、士官、もしかしたら使徒になれるかも知れないぞ」




「リーダー。使徒ってなんなんですか?」


「ルイージ。お前にはまだ難しいと思うが、簡単に言うと亜神アリス様の側近だな。国で言うと大臣様か。グレタ様は宰相様だな。」



「そうか。俺たちの扱いは酷くないっすか?サーラ中尉が大臣で俺たちは一兵卒とか」



「ううっ。ニコラすまん。俺のせいかもしれない。俺がグレタ様の逆鱗に触れたばかりに。

しかし考えようだよ。大臣と一兵卒なんて普通は会うことも話すこともできないんだからな?

それが軍団に入れば日々近くにいて食事もたまには同席。お声がけもされる。こんな幸運なかなかないと思わないか?」



「分かったよ。俺も軍団に入るよ。リーダーやジョルジュ、ルイージと別れたくないし。軍団で頑張ろうな。みんな」



「ヨシ!よく言った!みんな漢になったな。じゃアリス様にお願いに行くか」






♢♢♢♢






「グレタさん、キアラさん、ありがとう。良い感じにオファーできた気がする。これなら断られても受け入れられても後悔はないね」


「そうですね。どうなりますか。恩恵はどの程度与えますか?」


「あんまり弱くても役に立たないからね。

でも危険な闇弾と火弾は様子見。反応速度と遠視はレベル2位で様子見かな。

攻撃魔法はレベル4で。各人一つだけレベル5持たせるかな」


「そうですね。そんな感じで良いでしょう」




「ん。キアラさんそんなところで壁に張り付いてどうしたの?」



「はあ。良からぬ陰謀がなされていないかと聞き耳を立てていたけどロクでもない下賤な会話とどうでも良い戯言ばかりで疲れました。まったく。あたしの歳とか気持ち悪いです。

もう話し合いは終わったようなのであの連中、すぐに来ると思いますよ」



「そうなの?大変だったね」







 入り口の呼び鈴が鳴る。来たかな。グレタさんが確認しに行き傭兵リーダー以下4名を連れて来た。



「ようこそみなさん。どうぞお座りください」



 私の正面のソファーに座るよう促すがフィリッポ傭兵リーダー以下床に跪いて首を垂れる。



 ん? 何かのプレイかな? 面倒くさいの困るんだけど。



「フィリッポよ。どういうつもりなのか説明しなさい」



 グレタさんが厳かに説明を促す。



「はっ。第1使徒グレタ様。名誉ある亜神アリス軍団員へのオファー、誠にありがたく。謹んでお受けいたしたく罷り越しました。

更に今まで知らぬ事とはいえ亜神アリス様への無礼な振舞いの数々、ただただ懺悔をしておる次第にございます」


「成る程。あなたもようやく礼儀というものをわきまえてきたという訳ですね。大変によろしいでしょう」



 グレタさんがチラチラとこちらを見る。



『グレタさん、何か質問とか希望とかないから聞いてみて』


「アリス様は勿体なくも、あなたたちに質問もしくは希望があれば述べよと仰せである。あれば述べてみよ」


「ははっ。恐れ多くもアリス様の使命につきまして差し支えないところでお示しただければと。我ら軍団員がその責を全うする上でもお願い申し上げます」


『マルチナさんの帝都への帰還って伝えて』


「アリス様の使命の一つはマルチナ皇女の帝都への安全な帰還である」


「ははーっ。ありがとうございます」


『じゃ軍団員に任命しようか』


「アリス様はあなたたちを軍団員にしても良いと仰せである。そのまま首を垂れて待て」


『アリス様、お手数ですがこちらで』



 傭兵リーダーの前まで歩いて行く。どれ。ステータスは。なるほどなるほど。



名前 フィリッポ・パチーノ

種族 人(男性) 

年齢 35  体力F  魔力F

魔法 光弾4風弾3

   ステータス5

身体強化 筋力1持久力1防御1

称号 パチーノ準男爵家3男



名前 ニコラ

種族 人(男性) 

年齢 20  体力F  魔力F

魔法 水生成1

身体強化 筋力1持久力1



名前 ジョルジュ

種族 人(男性) 

年齢 18  体力F  魔力F

魔法 光生成1

身体強化 筋力1持久力1



名前 ルイージ

種族 人(男性) 

年齢 16  体力F  魔力F

魔法 無し

身体強化 持久力1



「傭兵パーティ『ロードナイトの風』リーダーのフィリッポ・パチーノ。ニコラ。ジョルジュ。そしてルイージよ。

これから亜神アリスが使命を果たす手助けをするなら幾ばくかの恩恵と私の『軍団員』を名乗ることを許しましょう」


「アリス様、フィリッポ・パチーノはアリス様の軍団員になります」


「アリス様、ニコラはアリス様の軍団員になります」


「アリス様、ジョルジュはアリス様の軍団員になります」


「アリス様、ルイージはアリス様の軍団員になります」



「その願い聞き届けました。ロードナイトの風リーダーのフィリッポ・パチーノ。ニコラ。ジョルジュ。そしてルイージ。あなた達を異世界の神である亜神アリスの軍団員に任じます。よろしくね


そしてフィリッポ・パチーノ。

貴方を亜神アリスの名において、亜神アリス軍団曹長に任命します。

同じくニコラは伍長に、ジョルジュは一等兵に、ルイージはニ等兵にそれぞれ任命します。


私、亜神アリスや第1使徒グレタ、第3使徒サーラ、第2使徒キアラの指示をよく守り責任を果たすように。

以後は必要に応じて階級呼称を行うものとします」



 必要な魔術ーーーグレタさん基準からサニタイズして、やや弱化するーーー転写!



名前 フィリッポ・パチーノ

種族 人(男性) 

年齢 35  体力F  魔力F

魔法 水弾4光弾4土弾5風弾4

   回復4ステータス5

   暗視4遠視2隠密2浄化5結界5

   探知4魔法防御4念話5飛行4

   睡眠2神託5

身体強化 筋力4持久力4衝撃耐性4

   睡眠耐性4麻痺耐性4毒耐性4

   反応速度2防御4

称号 パチーノ準男爵家3男

   亜神アリス軍団曹長



名前 ニコラ

種族 人(男性) 

年齢 20  体力F  魔力F


魔法 水弾5光弾4土弾4風弾4

   回復4ステータス5

   暗視4遠視2隠密2浄化5結界5

   探知4魔法防御4念話5飛行4

   睡眠2神託5

身体強化 筋力4持久力4衝撃耐性4

   睡眠耐性4麻痺耐性4毒耐性4

   反応速度2防御4

称号 亜神アリス軍団伍長



名前 ジョルジュ

種族 人(男性) 

年齢 18  体力F  魔力F


魔法 水弾4光弾5土弾4風弾4

   回復4ステータス5

   暗視4遠視2隠密2浄化5結界5

   探知4魔法防御4念話5飛行4

   睡眠2神託5

身体強化 筋力4持久力4衝撃耐性4

   睡眠耐性4麻痺耐性4毒耐性4

   反応速度2防御4

称号 亜神アリス軍団一等兵



名前 ルイージ

種族 人(男性) 

年齢 16  体力F  魔力F

魔法 水弾4光弾4土弾4風弾5

   回復4ステータス5

   暗視4遠視2隠密2浄化5結界5

   探知4魔法防御4念話5飛行4

   睡眠2神託5

身体強化 筋力4持久力4衝撃耐性4

   睡眠耐性4麻痺耐性4毒耐性4

   反応速度2防御4

称号 亜神アリス軍団二等兵



「ヨシ。できた。みんなステータス見て」



 四人とも空中をボーッと見ている。10分くらいかかるかな。ソファーに戻って寛いでおく。



「アリス様、紅茶如何ですか?」


「有難うグレタさん。林檎フレーバーでお願い」


「かしこまりました」




「そうだ。サーラさんが仲間を連れてきたら早速4〜5日急速錬成訓練をして司祭(邪)に張り付いて欲しいけど持たせたい神器があるんだよね。作らないと。紅茶を頂いたら作ろうかな。

それとフィリッポ兵曹長達の訓練も。アンバー高原なら、やっぱアレがいるかなあ。

あ、グレタさん紅茶ありがと。一緒に飲も」



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