第32話 邪な司祭
【39日目 正午頃 シリトン郊外演習場】
『あれ? アリス様。馬車の方から見た事ない爺さんがやって来るよ?』
『え どれどれ。ほほう。黒いローブに杖。絵に描いたような魔法使いの爺さんだね。
グレタさんアイツ知ってる?』
『アヤツは確かジェダイトの魔術研究本部とやらの幹部だったはず。名前は確かコロネとか。どんな人物かは分からないですね』
魔法使いの爺さんは辺りをキョロキョロ見回しながら繰り返し叫んでいる。
「皇女姉君殿下、いらっしゃいましたら御姿を! お見せください!
ワシは魔術研究本部のルカ・カルロネ伯爵という者。怪しいものではないのじゃ!」
とか叫びながら視察台の上までやってきた。
視察台の上で周囲を見回したかと思ったら膝をつき頭を垂れて喋り出した。
「マルチナ皇女姉君殿下。とは仮の御名前。
アースの亜神アリス様。
今までのジェダイトのしでかしたご無礼、伏して謝罪を申し上げますのじゃ」
うん? 今までと違うタイプが来たぞ。
「アンバー高原の光り輝く石板を拝見致しましたのじゃ。
アリス様におかれましては遥か彼方のアース世界からご降臨されました異界の神。
このイースにご訪問され顕現された目的があろうかと思いますのじゃ。
某、是非ともアースの亜神アリス様の手となり足となりその目的の為に働かせて頂きたいのですじゃ。
「そして伏してお願い申し上げます。ジェダイトへの神罰、何卒寛恕して頂きたく。
アリス様へのご無礼、ごくごく一部の不心得者の仕業にございますれば何卒。この件で某が出来ることは全て行います故」
成る程。この爺さん聖地のモノリスを見たのか。どれ。ステータスっと。
名前 ルカ・カルロネ
種族 人(男性)
年齢 63 体力G 魔力E
魔法 光弾4風弾4回復2ステータス1
麻痺4睡眠4
暗視2探知2魔法防御2
身体強化 筋力2持久力2衝撃耐性2
毒耐性1麻痺耐性2睡眠耐性2
毒耐性2防御2
称号 カルロネ伯爵家当主
魔術研究本部副本部長
魔術の鬼
おお強いな。この強さで戦術に長けているようだと私やグレタ親娘でも勝てないかも。やばいな。それに魔術の鬼ってなんなんだよ。
しかしさっきから私の心の奥底がムズムズする。私の神の部分が喜んでいるのかイラついているのかどうなのか。微妙。
「ルカ・カルロネとやら。面を上げよ」
「ははーっ、有り難き幸せ」
「その方、アンバー高原のモノリスを見たのだな。そして我が異界の亜神アリスである事を知った」
「その通りに御座います」
「その事を其方は信じるのか?」
「勿論で御座います」
「何故?」
「あのモノリス。神の御技でのみ創造出来るものと推察して御座いますれば」
「その理由を述べてみよ」
「ははっ。あのモノリスの発する光。あの光は神界の光にて御座います。アレキサンドライト教皇庁大聖堂に鎮座する女神イース様のお造りになった神石。その発する光に同じだと」
『ほう。そんな物があるのか。グレタさん知ってる? 神石って』
『私はよく知りませんが』
『あたしは知ってるよ。大聖堂の巫女様達がイース様の神託を聴くために待機してるって。巫女様に友達がいるから聞いたんだ』
そうか。嘘じゃないんだな。ではどうしようかな。この爺さん使徒とはいかなくても信者位には出来るかな。なんかこの爺さんに与えてもいい様な都合のいい肩書きないかな。自分の神の力を確かめる良い機会なんだけど。
「その方、我に帰依し亜神アリスを信じ手足となって働くと言うのだな」
「その通りで御座います」
「ならばその方を亜神アリスの司祭に任ずる。我が意を汲み使命に殉ずる事を許そう」
「ははー。有り難き幸せ」
「ではシッカリと司祭の任に努めよ。そなたに恩恵を与える」
神域干渉 及び 精神構造干渉 念話 神域から複写!そして司祭カルロネに転写!
更に。
神域干渉 及び 精神構造干渉 神託 神域から複写!そして司祭カルロネに転写!
名前 ルカ・カルロネ
種族 人(男性)
年齢 63 体力G 魔力E
魔法 光弾4風弾4回復2ステータス1
麻痺4睡眠4念話5神託5
暗視2探知2魔法防御2
身体強化 筋力2持久力2衝撃耐性2
毒耐性1麻痺耐性2睡眠耐性2
毒耐性2防御2
称号 カルロネ伯爵家当主
魔術研究本部副本部長
魔術の鬼
亜神アリスの司祭(邪)
よし。無事に転写出来たけど。称号の
亜神アリスの司祭(邪)の(邪)って何なの?
解説:(邪)この司祭は自己愛が強くその為に神を裏切る事がある。この表記は神にしか見えない。
あ、これ解説付きだ。珍しい。しかし。この爺さん裏切るのか。気をつけよう。裏切られる事前提で扱わなくては。失敗したかな初めての司祭が(邪)だって。
一応神のステータスを確認しておく。
名前 アリス・コーディ(有朱宏治)
種族 亜神(時空) 人(女性)
年齢 0歳(身体年齢15歳)
体力 G
神力 G
神技 時空間操作Aエネルギー操作G
ベクトル操作G物質創造G
生命体干渉G精神構造干渉G
神域干渉G
称号 神の自覚 使徒を得る
聖地を得る 司祭を得る
称号に「司祭を得る」ってなってる。邪であろうとも司祭は司祭ってことか。
私の称号に邪って表記が無くて良かった。そんなのあったら私が邪悪な神って感じするからね。邪悪なのはあくまでもこの魔法使いの爺さんですから。
中空を見つめてフリーズしていた魔法使いの爺さんが再起動した。
「レベル5魔法の神託と念話! この恩恵アリス様の為に使う事を誓いますのじゃ!」
「良きに計らえ。時にカルロネ司祭よ。
ジェダイトが我にしでかしたという無礼を包み隠さず一切合切説明せよ」
「ははー。まずはマルチナ皇女のことに御座います。ーーー(省略)
次にロードナイトでの襲撃にーー(省略)
更には今日の襲撃にーー(省略)
♢♢
たっぷりと30分ほどかけて説明してもらった上に質疑応答をして大体の事情を把握した。
『コヤツ意外と、というか物凄く役に立ちますね。敵ながら司祭に任じて活用するとはさすがアリス様です。我々が疑問だった事とか全部答えが分かっちゃいました。大ホームランですよ。
マルチナお嬢様ほか使節団全員が無事に公都の迎賓館に居るのが分かって安心しました』
『この魔法使い爺さん、ジェダイト政府中枢というか王太子や首席情報官に近いところに居て秘密会議にも参加するとかとんでもない重要人物だったよ。
まだまだ聞きたい事あるから今後の事を上手いこと決めていきたいね。
あとグレタさん、キアラさん。この爺さん裏切る癖が有るから情報共有には注意して。二重スパイになる可能性あるから』
「ではカルロネ司祭。
我の希望はマルチナ皇女と使節団全員の帝都への安全な帰還である。
その方はこの事について何が出来るか」
「は。恐らく、王太子とジラルディ主席情報官は此度の皇女姉君殿下暗殺失敗を受けて大層弱気に成るものと愚考致しまする。
そこでワシがアリス様と良好な関係を構築できたと理解させた上で穏便にアリス様のお怒りを鎮めつつジェダイトへの報復を回避するにはマルチナ皇女殿下一行を安全に帝都へ帰還させるのがベストである事、必ずや説得して見せまする。お任せくだされ」
「よし。説得は任せたカルロネ司祭よ」
『あとはこの司祭(邪)が裏切らない様に鈴を付けたいんだが。適任者居ないかな。司祭に張り付いてツーマンセルで監視できる人材』
『アリス様、ビアンコさんに頼んでみたら?なんか信用できそうだし仕事もできそうだし。適任じゃない?』
『適任とは思うけどビアンコさんがその気になってくれるかがなあ。使徒になってくれればイケるかもだけど』
『カルロネ司祭、1時間ほど向こうで休憩しなさい。アンバー高原からの強行軍疲れたでしょう。再度念話で呼ぶのでゆっくりとしなさい』
『ははー』
『さてと。ビアンコさん以外に候補がいるかというとフィリッポ傭兵リーダーかな。でもこの人は傭兵少年達の保護者でもあるから引き離せない。
となるとやっぱビアンコさんか。ちょい話してみるかな』
『はい、私もサポートします。話してみましょう。ビアンコ中尉が味方になれば私も心強いですから』
今一度ステータス確認。
名前 サーラ・ビアンコ
種族 人(女性)
年齢 21 体力G魔力F
魔法 光弾4土弾1
身体強化 筋力1防御1
称号 ビアンコ男爵家長女
ジェダイト公国軍中尉
では起こそう。生命体干渉「治癒」!
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