第25話 小魔境(2)
【34日目 午前11時頃 小魔境】
『火弾5!』
弾体が破裂音とともに超音速で。恐らく100分の1秒内で着弾。対戦車ロケットの成型炸薬(HEAT)弾頭が炸裂した様な光り輝く火焔が発生した。
ヤバイ威力だ。風弾、光弾の属性効果も恐ろしいが、火弾は洒落にならない。こんなのもらったら即死する。敵対組織がこんなの持ってたらどうしようか。
『反応消滅、撃破しました。確認します』
キアラさんが用心しつつも小走りに駆けていく。私とグレタさんもそれに追随する。
そこには焼け焦げて胴体が吹き飛び両断されたサンドラットがいた。しばらくするとすうっと消滅崩壊して白い砂となっていく。魔物が崩壊して生じる砂はその魔境の土地の砂みたいだね。
魔物は討伐後約1分で崩壊して魔法器官を遺す。魔核と牙だ。今回は魔核だけを回収する。
サンドラットは土弾1が使えるのでこの魔核に魔力を込めれば土弾1が使えるはずだ。
サンドラットのステータスは既に死亡していたため見る事はできない。
魔術「ステータス」は自分のステータスしか閲覧出来ないが、レベル5以上になるとレベルと同じ距離。レベル5ステータスなら5mの距離迄に対象が居れば閲覧できる。
『この魔核を使えば土弾1が使えるんだよね。ねえ。試してもいいかな』
『うん。試してみたら?』
『良いですよ』
『ヨシ。右手で握り込んでと。土弾!』
バッティングセンターのピッチングマシーンの球位のスピードでピンポン玉位の土の塊が飛んで行く。砂山に音もなくめり込んだ。
土弾の属性効果は慣性作用で着弾と同時に目標を吹き飛ばす作用だ。
『こんなもんか。試すのはもういいかな』
『じゃ次の獲物を探そうか』
『みんな聞いて。今の索敵、攻撃と確認で最大MPの55%使っちゃった。最初は安全確保のためしょうがないけど効率的に行かないと不味いね。慎重に時間をかけるとあっという間にMP無くなる』
『攻撃なら闇弾の費用対効果良さそうですね』
♢
『グレタが探知!1時の方向30メルト魔法防御2、防御4、反応速度2発動。
これ多分砂に潜ってますね。見通せるのでここから闇弾5試してみます』
『闇弾5』
破裂音と同時に弾体が砂に着弾した。属性効果が分からない。
『命中、ごく弱い反応あり。どうしますか?』
『盾持って接近してみますか。魔法防御と防御を展開、反応速度1を念のため発動しときましょう』
マイホーム開口部を展開してカイトシールドを取り出す。グレタさんに渡して、獲物に接近する。
『鎧トカゲだ。腰がえぐれる様に消滅しているね。グレタさん闇弾の属性効果ってどんな効果か分かる?』
『闇弾を出生時に得る人類はいないと聞いています。闇弾を使える魔物は知られていません。5000年前に女神イース様が魔獣や悪魔を討伐された時、少数の上位悪魔が使ったと言い伝えられております。
「要するによく分かりませんが以前アンバー高原でキアラと訓練した時の感じで言うと、闇弾5の場合は概ね直径32センチメルトの球状範囲にある物体を消滅させる、ですね』
驚きです。上位悪魔、超コワイです。敵対したくないです。こんなので遠方から狙撃されたら終わりです。上位悪魔が絶滅しています様に。
『火弾って人類は普通に持ってたりします? 火弾も相当にヤバイですよね?』
『火弾1はそれなりに。火弾2はごく稀にいるようですが、火弾3以上はほとんどいないようですね。詳しくは分かりませんけど。』
そうか。火弾3以上がほとんど居なくて良かった。
『魔獣なら居るらしいですよ。竜などは火弾5とか火弾6とか撃ってくるらしいです。コワイです』
竜も絶滅してて欲しい。
とか話している内に鎧トカゲは消滅していた。ふと空を見上げるとカラスが飛んで居る。
『キアラさん、あのカラス調教して獲物を探せないかな?』
『そっか。良いかも。調教!そこのカラス!魔物探してこい! 見つけたら空中待機して意思を表示せよ!』
『早速居ましたよ。300メルト前方。トカゲ2体!』
その後。昼食を挟んで魔物を40体ほど討伐した。動物調教のMP消費はほとんど無い(自然回復分以下なのでわからない)ということだ。
♢
「では魔術『飛行』を試してみます!」
「やったー。待ってました。イエイイエイ!飛行楽しみだったんだ。でも怖いから自分では検証できなかったんだよ」
「さすがキアラです。魔術は危険ですからね。私も飛行には手を付けておりませんでした」
「まず自分に飛行5を入れてと。まだ持ってなかったんだよね」
名前 マルチナ
種族 人(女性)
年齢 15 体力G 魔力F
魔法 水弾5光弾5ステータス5
暗視5遠視5隠密5浄化5
探知5魔法防御5念話5飛行5
身体強化 筋力5持久力5衝撃耐性5
睡眠耐性5麻痺耐性5毒耐性5
反応速度5防御5
称号 亜神(時空)の一部となっているマルチナの分身(劣化)
「実はこの魔術『飛行』にはフェールセイフ(安全機能)があってそんなに危険ではありません。
「燃費が反応速度とほぼ同じくらい悪いですから直ぐに魔力切れになります。飛行5を使うと私だと10秒で終わりです。グレタさん達もたぶん10秒位です。
「そこでこの安全機能です。魔力切れで落下する時は『飛行』のレベルに応じて落下速度が緩和されます。
「飛行1の場合は、落下速度は秒速8メルトを超える事はありません。この速度だとかなり早いですが死ぬ事はないでしょう。多分2階から飛び降りるくらいの速度です。ただし風とかでは流されますので注意です。重い物を持っている時も重量に応じて落下速度は上昇します。飛行5だと落下速度は秒速0.5メルトを超えませんので安心です。
「それと飛行5だと最大速度秒速32メルトまで出ちゃいますから注意です。時速115キロメルトぐらいです。何かにぶつかったら死にますから。飛行は空中衝突に注意ですね」
「では早速私から。エイっ飛行5!」
飛行5を最大出力で1秒間。垂直上昇してみる。
「おお20メルトくらいジャンプ出来たな。かなり怖い。このくらいの高さが人に恐怖心を感じさせるらしい。魔力は切ってあるので秒速0.5メルトで落下すると」
「問題ないね。思ったとおりだ。みんなも試してみて」
♢♢
魔力消費の少ない飛行1、飛行2辺りの使用感の確認と練習を1時間ほど行った。なかなか面白くて癖になる魔法だ。クルクル回転したり上空に上昇して遠くを眺めたり。
なんかドローンを飛ばすような手軽さがある。調子に乗って空中衝突とかしないよう気をつけないといけないかもしれない。
「だいたい感覚は掴めたよね。以上で飛行の検証を終わるけど」
「了解でーす。終わりでいいです」
この日の検証はこれで切り上げてマイホームに入って夕食をたべて寝た。
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