第9話 強 化


【10日目 夜9時頃】


 早速グレタさんキアラさんとボブの強化しよう。



「ーーー必要な魔術を転写!ーーー」



名前 グレタ・アルタムラ 

種族 人(女性) 

年齢 35  体力G  魔力F

魔法 水弾5光弾5土弾5風弾5火弾5

   闇弾5回復5ステータス5

   暗視5遠視5隠密5浄化5結界5

   探知5魔法防御5念話5飛行5

身体強化 筋力5持久力5衝撃耐性5

   睡眠耐性5麻痺耐性5毒耐性5

   反応速度5防御5

称号 マルチナの侍女頭

   亜神(時空)アリスの第1使徒



名前 キアラ・アルタムラ

種族 人(女性) 

年齢 14  体力G  魔力F

魔法 水弾5光弾5土弾5風弾5火弾5

   闇弾5回復5ステータス5

   暗視5遠視5隠密5浄化5結界5

   探知5魔法防御5念話5飛行5

身体強化 筋力5持久力5衝撃耐性5

   睡眠耐性5麻痺耐性5毒耐性5

   反応速度5防御5

称号 マルチナの侍女

   亜神(時空)アリスの第2使徒



名前 ボブ 

種族 リンクス(女性) 

年齢 3  体力F  魔力F

魔法 水弾5光弾5土弾5風弾5火弾5

   闇弾5回復5ステータス5

   暗視5遠視5隠密5浄化5結界5

   探知5魔法防御5念話5飛行5

身体強化 筋力5持久力5衝撃耐性5

   睡眠耐性5麻痺耐性5毒耐性5

   反応速度5防御5

   思考強化5

称号 マルチナのペット

   亜神(時空)アリスのペット



 やっちゃいました。自重なしの最大強化だよ。魔術の転写キャパシティは概ね30種類前後の模様。


 容量の80から85パーセントを埋めてしまったが、困ったら削除して転写し直しも可能なので大丈夫。


 あんまり書き替えていくと転写可能スペースが細分化されてしまい転写が困難になるらしいけど残り15から20パーセントの使用を慎重にすれば問題ない。


 何せこの二人と一匹の強化は今すぐに必要なんだからエイヤーでやるしかない。問題ない。


 これで亜神(時空)アリスの使徒と言っても恥ずかしくないステータスになったはずだ。しかしステータスに「亜神(時空)の使徒」とまで表示されるのか。レベル5魔術「ステータス5」だからメチャクチャ詳しく表示されるのかな?


 ところでボブは私の使徒になってないな。

使徒を理解してないからか。本人の認識と意識も重要ということか。




 これからジェダイトに潜入して基本的には戦闘が想定される。戦闘は極力避けるつもりだけどアサルトライフルやハンドガン相当の攻撃魔法をぶちかまして来る連中が相手なんだからどれだけ強化しておいても十分という事はないはずだ。


 もはや魔術に限定すれば二人と一匹の強さは私を超えていると言えよう。それも良いだろう。






 ステータスを確かめるグレタさん達二人は虚空を凝視している。



「全部レベル5魔術で25個もある」


「見たことも聞いたこともない魔術が」


「時空を司る神様ってなんか凄いんですけど時空属性の魔術ってあるんでしょうか」


「えっ 私、飛べるの?凄い」



 とかつぶやいている。満足いくまでステータスを見てもらおうか。


 ボブは右腕を舐めて顔を洗っている。コイツの教育は面倒だからグレタさんかキアラさんに丸投げしよう。三人とも同じ魔術の検証と訓練をするから丁度いい。私は物質創造とかマイホームとか食糧の製造とかで忙しいからね。





 二人と一匹にはお代わりをあげてからマイホームの中に大人二人分の2段ベット(障壁を使用)とマットレス(低反発ウレタンフォーム 厚さ薄め、サイズ極小、神力節約のため)とシーツを創り出す。布団は洞窟から回収した毛布(浄化済)を使おう。


 ボブは好きなところで寝かせよう。トイレの穴からボブが落ちないように開口部に蓋ふたが要るかなあ。


 マイホームの内径を4mまで拡張しておいて良かった。これなら三人と一匹の生活もギリギリ可能だと思う。寝具を作り終わって残りの神力が10パーセントになった。神力が心許ないと移動も危険なので二人と一匹には強化した魔術の使用感を確かめるため2時間ほど自由に訓練してもらう。


 遠くに行かないことと攻撃魔法の試射はマイホームに対して外側に向けて全員周知のうえで行うことを念押ししておく。私は岩に腰掛けてみんなの訓練を見物しながら、防御用の神器をどう作ろうかと考えていた。





 みんなに転写した魔術は全てレベル5なのでいずれも強力なものである。ある程度の慣熟訓練をして技術の運用に慣れれば、このイース世界の人類としては最強の一角と言えるのではないかと思う。


 しかし魔術は構造的に防御力に対して攻撃力が優勢である。どんなに強い攻撃力を持っていても致命的な攻撃魔法が守りや警戒をすり抜けて身体を直撃するリスクを排除し切れない。


 これは地球における兵器の運用でも同じで例えば、核兵器搭載弾道ミサイルに対するミサイル防衛は一般に困難であり攻撃サイドが有利。


 イスラミックステートISやタリバンによる奇襲テロ攻撃からの防衛も彼我の戦闘力に大幅な格差があるにもかかわらず困難を極める。私は仲間にした二人と一匹に死んでほしくない。







 2時間くらいで訓練を終了。更に二人と一匹の魔力回復に2時間ほどの休憩をとった後に北方20キロル先にあるという人類生活領域に向けて出発した。


 キロルというのは距離の単位で地球のキロメートルとほぼ同義と思われる。これも世界の仕様なのか。この他の単位系もこのパターンが多いので言及しない。察して欲しい。





 訓練と魔力回復に時間を割いたためすでに深夜を過ぎている。巨大な月は西の地平線に隠れようとしている。あと5、6時間で夜明けなので3時間ぐらいゆっくりと歩いて早めに朝ご飯、明るくなる前にマイホームに入って体の手入れをして寝るか。これから暫くは昼夜逆転の生活になる。


 月は西の地平線に沈んでいったが、全天に密集した恒星群と銀河の中心を合わせて地球の満月の夜ほどの明るさで地表を照らしている。




 グレタさんと色々と話してみた。




「グレタさんはいつからマルチナさんの侍女をしてるんです?」


「はい、私はアレキサンドライト帝国が戦国時代に入る前の栄光と繁栄の時代の勃興、今から1100年前から常に皇帝のお側で支えて来た誇りあるアルタムラ家の次女として生まれました。


「マルチナお嬢様ご成人に備え5年前から侍女として娘のキアラも同時にマルチナお嬢様の遊び友達兼ねて侍女候補として皇宮に出仕しました。

マルチナお嬢様は高貴な御身分でいらっしゃるのに本当に気さくでお優しく私たち親娘は幸せに過ごしてこられました。


「マルチナお嬢様の御父上であられるフランチェスコ・アレキサンドライト皇帝陛下とアリーチェ・アレキサンドライト皇后陛下、マルチナ様の兄で第一皇子のロレンツォ様、第二皇子のレオナルド様も皆さん温厚で御優しく私たち親娘に対して良くしていただきました。ありがたいことです」



 うわー。めっちゃ人の名前出てきた。全然覚えられない。私の中のマルチナさんの記憶にはマルチナさんの個人的な記憶がないみたいなんだよね。


 私はマルチナさんでもあるんだからいま出てきた名前全部覚えとかないといつ何時声を掛けられて取り返しの出来ない失敗をやっちゃうかもしれない。困ったな。



「なるほど。マルチナさんのご家族や関係者について私自身よく把握しておく方が良さそうですね。

でも生憎私は異世界の神なのでこの世界の人達の名前を無闇と覚えることは出来ないのです。

もちろんグレタさんとキアラさんは特別ですよ私の使徒なのですから。

ボブは猫なので大丈夫です。


「ですのでグレタさんとキアラさんは、そういう点で私を今後ともサポートして欲しいのです。

要するに、だいたい私のそばに居て人の名前分かってないなと思ったら念話で教えてください」


「承知致しました。アリス様の第1使徒として当然の勤め。常にお側で対応致します。お任せください」


「ありがとうグレタさん。頼りにしていますよ。キアラさんもグレタさん不在の時もあるかもしれませんので補佐をお願いします。よろしくね」


「了解です。アリス様。第2使徒キアラにもお任せください」


 よしこれで名前覚えなくても大丈夫だ。






 深夜の荒野を三人と一匹で歩く。ボブは歩いたり歩くのに飽きたら三人のうち誰かにせがんで抱っこしてもらったりしている。






「それでいま向かっているジェダイトのことなんだけど」


「はい、何でございますか?」


「90年前に魔術の革新的運用法を発見って言ったじゃない?」


「はい。言いましたね」


「革新的運用法ってなんなの?」


「魔物の魔核というものは魔力を込めることにより、その魔物の固有魔術を行使出来ますしその時に僅かな確率で習得する事があります。

このことから、魔物の魔核は魔術行使の媒体、兼ねて魔術習得の道具として貴重なものでございます。

ジェダイトの連中はかねてより公爵に権限を集中して独裁態勢を築いて来ましたがそれを悪用したのでございます。

公国内の全ての迷宮を公爵が独占、大々的に兵を送り込んで魔核を大量に収集して居るのでございます」


「そうなんだ?」


「はい。それでそんな強権的なことをして魔術の強化を謀っていることに気付いた各公国は同じやり方で戦力を強化しようとしましたが上手くいかなかったようです」


「ふうん?」


「実は、ジェダイトの急速かつ大規模な魔術の強化は、迷宮の運用効率化のみでは説明がつかず何か他に秘匿された要因があると見ている魔術研究者が多いのです」


「なるほど。そうかもしれないね」


「それは何らかの方法で迷宮を支配して魔核を直接に産出しているのではないかと言うものです。

しかし人類では迷宮深部の魔物の軍勢に太刀打ちできないため迷宮の支配は不可能なはずなのです。

この事を各公国の乱破らっぱや調査員が調べ続けていますがまだ分かっていないのです」


「うん」


「それでアリス様。アリス様の神の御技である魔術の転写。

これに類する能力者がジェダイトに居るのではないかと私は思いました。

レベル5魔術を連発できれば迷宮深部の踏破は十分に可能だと思います。

ましてやアリス様が時空間操作をお使いになれば迷宮踏破など朝飯前でございましょう。

以前はこんな事考えもしませんでしたが。

ご無礼な発言をお許しください」




 それは私も考えた。可能性としてはあり得ると思う。怖いな。私と同じ生まれ変わりー転生者なのかよ。


 神さま。神や亜神が巡り会うことはほとんで無いって言ってたじゃん。ほんの10日前のことだよ? 90年前の事なら老衰で死んでくれてないかな。


 異世界転生もののテンプレ、転生者の最大の敵は転生者ってか。もしそうなら。ジェダイトに居るかもしれない正体不明の能力者が転生した神ならば。既に第1回目の神としてのランクアップを済ませているはず。その攻撃は間違いなく私に届くと考えざるを得ないな。やべえ。



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