第4話 ひきこもる
【2日目 朝】
目覚めると真っ暗なアナザーワールドの球状異空間の中に直径20cmの開口部から日差しが差しこんでいた。
アナザーワールドの内面境界壁は空間構造そのものだから振動もたわみも一切生じない。非常に硬いのである。
寝床としてはあまり適さないなあと思いながら体を起こす。壁面に接していた背中と腰、頭、踝(くるぶし)が痛むので両手を使ってしばらく摩る。
魔法でコップに水を注ぎゆっくりと飲んでいくと徐々に思考がクリアになってきた
「これからどうしようかな」
独り言をつぶやてしまう。
「ここには誰も聴いている人が居ないんだから独り言をつぶやいても問題はないよね」
これからの方針を考えることにする。
異世界の荒野に一人きりという危機への対応。これは昨日の時点で最低限の「生き残る」という目標は達成された。
アナザーワールドと物質創造のお陰です。本当にありがとうございます。
将来は亜神(時空)として死ぬことなく末永く、楽しく。基本的にはインドアで引きこるもる的に家でゴロゴロしながらウェブサイトを見たりテレビバラエティ番組を見ながらお茶とお菓子を摘む。そんな生活をしながら永遠に生き続けたい。
そして地球に居る妻と子供にもう一度会いたい。亜神(時空)の能力があれば家族を更に幸せにできるだろうし普通なら避け得ない危機から救出する事も回避する事も阻止する事も出来るだろう。
こんな感じかな。アッサリと決まってしまった。要するに地球に戻る必要がある。
神様からもらった知識によると亜神としての成長条件は基本的には「時間経過」となっている。具体的には神力に関わるレベルアップは第1回目は1年経過のみが条件となる。
亜神としての能力を再度確認するため神域にアクセスしてみる。
名前 NO NAME
種族 亜神(時空) 人(女性)
年齢 0歳(身体年齢15歳)
体力 G
神力 G
神技 時空間操作Aエネルギー操作G
ベクトル操作G物質創造G
生命体干渉G精神構造干渉G
神域干渉G
1年経った時の能力はこうなる。(予想)
名前 NO NAME
種族 亜神(時空) 人(女性)
年齢 1歳(身体年齢16歳)
体力 G
神力 F
神技 時空間操作Sエネルギー操作F
ベクトル操作F物質創造F
生命体干渉F精神構造干渉F
神域干渉F
称号 神力レベルアップ1回済み
時空間操作のレベル毎に使用可能となる技術はこんな感じだ。
時空間操作A アナザーワールド
時空間操作S 宇宙間ゲート 宇宙内転移
時空間操作SS
時空間操作SSS宇宙創造 時空神創造
つまり1年後には時空神としてのレベルが上がり「宇宙間ゲート」が使えようになる。
「宇宙間ゲート」を使ってこのイースと地球を接続すれば私は地球の神域に干渉できる。
地球の神域に干渉できれば地球に私の分身を作り出すことができる。
分身の創造は物質創造F生命体干渉F精神構造干渉F神域干渉Fの神技を組み合わせることにより可能となる。
私の分身は亜神(時空)である私の劣化型端末である。宇宙間ゲートの接続がある限り宇宙間ゲートを通じて知覚と思考を共有できる。また、亜神(時空)の神力を分身(劣化型端末)において限定的に行使できる。
こんなことが出来るなら、私が地球に帰ることができると言っても良いよね?
なお私の本体が死んだ場合でも私の分身が本体化して亜神(時空)に変化する。流石に亜神(時空)としてのレベルは初期化されてしまうけれど。私の分身を沢山作っておけば作るだけ私は死ににくくなる。まるで何処かの悪い魔法使いのようだなあ。
第2回目以降のレベルアップの条件は「時間経過」に加えて他の条件も追加される。
追加条件の中身は神様情報から欠落していて分からない。
レベルアップ条件の時間経過年数は次のようになっている。
第2回目のレベルアップは
100000000年つまり1億年間の経過が条件。
第3回目のレベルアップは
10000000000000000年つまり1京(けい)年間の経過が条件となる。
3回目のレベルアップ条件とか気が遠くなる。人類のタイムスケールでは測れないよ。
そして亜神から神への昇格は、神力、神技の全てのレベルがSSSとなることが条件。
8回目のレベルアップなんだよね。10の56乗年間って事だ。
あの神様凄いな。無限の過去から生きてるから条件を満たせたのか。そう言えば神様は、亜神は無限に居るって言ったけど神は無限に居るとは言わなかったな。
もし神が無限に居ないなら亜神から神に至る追加条件の中に実現可能性ゼロなものがあると推定される。
この件は興味深いけど優先度が低いのでここまでにしておく。今直面している課題は脆弱な依り代に入った状態で生き抜くことだからね。
神のレベルアップ効果に引き続いて魔術の可能性について検討を加える。
神様の知識によると魔術の魔力レベルは魔術の行使を繰り返す事により僅かに上昇する。
魔術の習得は魔術を使える者が教えたい者の体に触れながら魔術の行使を繰り返す事により非常に僅かな確率で習得する。
魔物の魔核に魔力を込めることにより魔物の固有魔術を行使出来るし僅かな確率で習得する。ただし魔核は一回使うと崩壊してしまう消耗品である。
魔物の魔核は魔術行使の媒体かねて魔術習得の道具として価値ある物として売買取引の対象となっている。
魔術の向上に努めようとして魔物を狩って魔核を集めるのも「僅かな確率で習得」とかの条件を考えると効率は悪そうだ。私には神技があるからね。
それに魔物を倒す場合に怪我程度なら生命体干渉による「治癒」とか時空間操作及び物質創造による「再生」によって治療出来るんだけど、どうしても即死してしまうリスクを排除出来ない。
という訳で「1年後までアナザーワールドに引きこもる」必要がある。
これ以外に正解は無い。ある訳がない。1年後まで絶対に死ぬ訳にはいかないのであるから。唯一の正解。将棋で言えば答えが明らかな詰将棋。
1年後には「宇宙間ゲート」は使えるし「分身創造」も使えるほか全体にレベルアップするので使える他の神技が増えるうえ神力の総量も上昇する。生存可能性が飛躍的に上昇するのだ。
以上、決定された方針は。
「地球に戻る。生存可能性を上昇させる。
そのため1年後までアナザーワールドに引きこもる」
一応の結論を得た私は朝ご飯の塩おにぎりを物質創造で作ると水を飲みつつ食べ始めた。
内径2メートルの球状閉鎖異空間であるアナザーワールド。あと1年間もの長期間お世話になる。やはり居住性を高める必要があるね。
まず平らな寝床が欲しい。球状異空間の底から80cm程の高さに平らな棚を作っていく。素材は時空間操作「障壁」要するにアナザーワールドの壁と同じ材料である。
全面を床にしないのはトイレのために異空間開口部を適時下面に移動させる必要があるからである。外部世界に放出である。
そうだ。物質創造でトイレットペーパーを早急に作らないと!大きいのがいつやって来るかわからないからね!
神力の総量があまり多くないから生活必需品を揃えるまでにはまだまだ時間がかかりそうだ。
結局この日は寝床の作成、トイレットペーパーの作成、おにぎり作成、そして球状異空間に神力を追加で注入して内径を拡張するという作業を行う。
神力や魔術やこのイース世界に関する考察に耽(ふけ)ったり。
かなりの時間を球状異空間開口部から周囲の観察と監視を行ったり。
深夜となり神力総量が5パーセントを切ったところで昨日同様に球状異空間の底で丸まって寝た。
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