黒い太陽の下

丸我利伊太

黒い太陽の下

空にはジリジリと地面を焦がす黒い太陽が浮かんでいる。

俺は気を失いそうな意識の中で考えていた。

何故、太陽が黒いのだろう、黒い太陽から何故光が届くのだろう。

赤外線かその熱が地上に届くのだろうか。


それがどうした、それがどうした。第一、おかしなことに、あの太陽は沈まないじゃないか! バカらしい、考えるのをやめてみろよ。


黄色い砂の上に青い道が続いている。

俺はその道の上をフラフラと歩いている。

青い道だとよ、何で青いんだよ、普通灰色か、茶色だろ、おかしい、何か、変じゃないか。

俺はもう、一週間? 二週間? 歩き続けている。それなのにまるで眠くない、でも、今にも脳が飛びそうだ。


疲れた……疲れた……

俺は歩いた、歩いた、

道のそばに灰色の服を着た老婆が座っていた。物乞いでもしているのか? 黒いサングラスの中に目が光っている。


老婆と目が合った。この老婆、何を考えてやがる。不気味な奴だな。

老婆が叫びやがった。

「行ってはダメじゃ! この先に行ってはダメじゃ」

「婆さん、どういうことだ。どうしてこの先に行っちゃだめなんだ、あんた、何か知ってるな?」

哀れな老婆は小刻みに震えている。

何かに怯えているのだろうか?


「恐ろしいことが起きる、恐ろしいことが」

「婆さん、その恐ろしいことはなんなんだ、教えてくれ」

「言えないんじゃ、言えないんじゃ」

「何で言えないんだ、この世界はどうなっているんだ!」

俺は言葉を吐き捨てた。

老婆は手を合わせて念仏を唱えだした。

「ナンマンダブ ナンマンダブ」


空にはカラスが数匹、舞っていた。

黒い太陽、黒いカラス。その景色がなぜか俺には物悲しかった。

おかしい、腹がへらない。何も食べていないのに。身体から汗が吹き出していた。だが喉が乾かない。足が棒のようになっていた。それでも何故か俺は歩くのをやめなかった。


この道の向こうに何かがある。


それはいったい何だろう。嫌な、嫌な予感がする。ここで、引き返したらどうだ。でも何処へ戻るというんだ、バカらしい進むのも戻るのも同じことじゃないか。

進むしかないな、この道を。


道の石ころにけつまずき、俺は倒れた。

空が赤かった。

地面にはカゲロウが揺れていた。

俺はゆらゆらと立ち上がった。

遠くに、遠くに、一本の大きな木が見えてきた。風に青い葉が揺れている。ゆさゆさ、ゆさゆさと。

木の下が暗くなっている、日の光が届いていない。その陰の中に誰かがいる。男だ、男だ、黒い服を着ている。


その男は気のせいか俺を笑っているように見える。

誰だいったい、

俺はその男に近づいていった。分かったぞその男が、その男は遠い昔に分かれた友達だった。

俺はその友達に話しかけた。

「俺は、あんたを友達だと思っていた」

友達は俺をにらんでこういった。

「嘘だ! お前は俺を利用しようとしただけだ」

俺は恐ろしかった、身に覚えがある、後ろめたさがある。

「お前は俺から金を巻き上げたかったんだろ友達のふりをして近よってきやがって!」

俺はうつむいていた。俺は一人だ、一人ぼっちだ。


「俺を利用しやがって、お前は全部嘘だ、全部、全部!」

俺は震えながら立っていた。

何故ならこの男が言っていることが本当のことだったからだ。


本当の……本当の……

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黒い太陽の下 丸我利伊太 @wxy123

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