第9話 ラストスパート

彼女は刹那主義にあこがれを持っているらしい。まあそれも、未来が見通せるのなら当然のことだと思う。未来が見通せるのなら、そのことも考えなくちゃいけないからな。もしかしたら彼女は彼に対して憧れを抱いているから、話しかけているのかもしれない。そう思うと、彼はなぜか心が痛む。その痛みは、彼の母親が亡くなったときに感じた痛みと少し似ていた。実際、最近の彼は彼女を心の支えにしているような節がある。最近は彼からも話してみたり、洒落を言ってみたりといろいろと挑戦をしているのである。そんなある日、彼女から良い知らせが届く。

「君の未来が変わったよ」

「ふーん……」

彼はその一言を咀嚼する。つまり、彼の未来は彼女の活躍によって少し変わったというのだ。

「本当か!?」

彼は少し声を荒げて、彼女に聞き返す。彼女は嬉しそうに首を縦に振る。感極まった彼は彼女の肩を掴み、揺らしながらこう言う。

「ありがとう……ありがとう……」

そのまま、男らしくなく涙を流す。しかし、ここで彼ははっとする。何も変わったのが良い方向だとは限らないのだ。彼は確認するようにこう聞く。

「ちなみに……良い方向に変わったんだよな?」

すると彼女はまた首を縦に振った。喜色満面。欣喜雀躍。彼の心には今までになく喜びが流れ込んだ。

「私にとっても良い未来だよ」

彼女はうっとりと頬を赤く染めながら、その未来の内容を思い出すかのように呟く。

「どんな内容なんだ?」

「それはお楽しみさ」







=====================================

後書きです。

ここの展開も早いような気がします。

なので、ここにも間に何か挟まれるかもしれません。

でも、最後(この次の話)は気に入っているので変わることはないでしょう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る