第4話 出会い

彼は教室についた。今日は入学式なので新しい教室なのだが、同じクラスのメンバーなので際立って目立つような違いはなかった。あるとすれば外の校庭がより高くから見られるようになったことだろう。彼は窓側の席だ。今はつまらなそうに外を見渡しているが、先ほど、自分の隣に違和感を覚えた。隣にこんな机などあっただろうか。まあ多分、これは自分がクラスをあんまり見ていなかったから気づかなかっただけだろう。そう思った彼は一瞬でそれを記憶の奥底へと置き去り、頬杖をついて外を見渡した。この席が北条美咲の席であることは言うまでもない。つまり彼女は転校生であった。彼、斎藤真は彼女が隣の席ということもあって関わらずにいることが難しかったことも言うまでもない。


「今回、このクラスに転校生が来ることになりました!」

担任は先ほどの真剣な顔からふっと相好を崩し、さもめでたいことのように話している。実際その通りなのだろうし、祝ってあげなきゃ転校生がかわいそうというのもあるだろう。しかし彼にとっては些事であった。クラスは一瞬盛り上がり、そして緊張の面持ちで前の扉を見つめているのにもかかわらず、彼は誰もいない校庭を見下ろしているのみだった。そんな時、ガラガラと扉が音を立てて開かれる。そこにいたのは艶やかな黒髪を腰まで伸ばした、目元はぱっちりとしており、柔和な微笑みを湛えた美少女だった。そう、北条美咲である。クラスの男子は眼福だ眼福だなどと騒いでおり、女子は美貌の圧倒的な差に慄いているのに対し、彼は非常に冷淡であった。一瞥するとすぐに外に目を向けたのである。

「あー、席は……斎藤真、この学校のことについて教えてやれ」

するとクラスは水を打ったように静まってしまった。それもそのはずである。彼、斎藤真はこのクラスではとっつきにくい人として有名だったからである。

「お願いしますね」

彼女、北条美咲は彼女の席まで進むと、なおも微笑みながら彼に言った。

「ああ、よろしく」

斎藤真はその好意的な微笑みに不愛想に短く返した。そして、あの隣にあった席はこのためかと少し思い出すのだった。

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